【特集】平和不動産リート投資法人 Research Memo(2):東京都区部中心のオフィス・レジデンス複合型REIT
平和不リート <日足> 「株探」多機能チャートより
■特長・優位性
1. 概要
平和不動産リート投資法人<8966>は、東京都区部を中心とする、オフィス・レジデンス複合型REITである。2002年1月に前身であるクレッシェンド投資法人として設立された後、2005年3月には東証不動産投資信託証券(J-REIT)市場に新規上場、2010年10月にはジャパン・シングルレジデンス投資法人と合併し、名称を平和不動産リート投資法人に変更して今日に至っている。また、投資主より募集した資金を主として不動産などに対する投資として運用することを目的とするが、実際の資産運用はすべて平和不動産アセットマネジメント(株)に委託しており、平和不動産グループから様々なサポートを得られるのが大きな強みである。
2. 戦略的なポートフォリオの構築
同REITは、高い需要に支えられた「東京都区部を中心とする投資エリアに存するオフィス及びレジデンス」に集中的に投資している点に大きな特長がある。多数の物件に投資することで戦略的にポートフォリオの分散を図っていることが、安定した稼働率と収益の源泉になっている。2024年5月31日時点における同REITのポートフォリオの用途別内訳を見ると、オフィス(主に中小規模の事業所がテナント)50.2%、レジデンス49.8%となっている。厳格な投資基準に基づき多数の物件へ投資することにより、用途・棟数・テナントの分散を行い、ポートフォリオの収益変動リスクの極小化を図っている。オフィス賃料は景気感応度が高く、収益の変動性が高いのに対し、レジデンス賃料は景気変動を受けにくく、収益の安定性が高いことから、両方にバランスよく投資することで、収益性と安定性の双方を追求できるポートフォリオを構築している。
また、投資エリア別では都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)33.9%、その他の東京23区28.3%、首都圏(23区以外)11.6%、その他26.2%となっている。地域的には第1投資エリア(東京23区)を主たる投資地域と位置付けているが、各エリアのマーケット状況(取得物件のストック量、取引価格の状況及び賃貸マーケット状況など)を勘案しながら、第2投資エリア(23区以外の東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)及び地方投資エリア(政令指定都市をはじめとする全国の主要都市、すなわち平和不動産のサポートが得られる地方大都市)にも投資する。
3. 平和不動産の強力なスポンサーシップ
同REITは平和不動産の経験とノウハウを最大限に活用できることが特長であり、大きな強みと言える。平和不動産は東京、大阪、名古屋、福岡の証券取引所ビルを証券取引所に賃貸し、全国各地にオフィスビルを所有するほか、日本橋兜町・茅場町の再活性化及び札幌再開発事業化を推進する再開発事業などのデベロッパー事業も幅広く展開している。そのため、同REITに対する外部成長サポートとして、平和不動産の保有・開発物件、仲介物件、先行取得物件などの情報ソースを活用できる。実際、スポンサー変更後の物件取得合計は2024年7月17日現在で73件/1,503億円に上るが、うち資産運用会社ネットワークが32件/604億円、平和不動産からの直接取得/資産入替が20件/394億円、ウェアハウジング(スポンサーが第三者から物件取得して一定期間保有し、タイミングを見て同REITが取得する手法)が21件/504億円を占めている。このように、スポンサーのサポートが同REIT成長の原動力となっていることが実績として示されている。また、内部成長サポートとして、情報の共有化によって稼働率の改善を図ることができる。さらに、財務サポートとして、財務方針、資金調達などにかかる支援や指導を仰ぐことができる。
4. 潤沢な分配原資と成長資金
同REITでは、資産入替に伴う譲渡益の一部を分配金に、残りを内部留保の蓄積に充てることで、長期にわたる安定した分配原資及び成長資金を確保している。2024年5月期末には、内部留保残高57.5億円、含み益額は585.6億円を擁している。内部留保は、将来の安定的な分配金支払いを可能にする。すなわち、物件売却に伴い減損損失を計上した際にも、内部留保の取り崩しによって実力ベースの分配金支払いが可能であるからだ。また、同REITでは設立時の合併に伴い、受入資産に税会不一致が発生しており、物件譲渡により発生した譲渡益については税会不一致を活用した内部留保拡大が可能であることも強みである。一般的に、REITは利益のほとんどすべてを分配金として支払うため内部留保を積むことができないが、同REITは、過去の合併の経緯からこれを積み上げるツールを有する。さらに、資産入替によって含み益の一部を顕在化することで、分配金を継続的に増加している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《HN》
提供:フィスコ