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【特集】プラチナは軟調、世界的な株安が圧迫も投げ一巡か <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、中国経済の先行き懸念やドル高を受けて戻りを売られた。また、金が史上最高値を更新したのち、利食い売り主導で急落したことも圧迫要因となった。その後は、米連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が9月利下げの可能性を示唆したことが支援要因になったが、経済指標の悪化で景気減速懸念が高まると、リスク回避の動きが圧迫要因となって906ドル台まで急落し、4月末以来の安値をつけた。

 日銀金融政策決定会合で、政策金利となる無担保コール翌日物金利の誘導目標を0~0.1%程度から、0.25%程度に引き上げることを決定した。植田日銀総裁は記者会見で、政策金利について0.5%が壁になるとは認識していないと述べた。タカ派姿勢が強まったことについて、政治家の発言もあり、政治的圧力が背景にあるとみられている。ただ、実質賃金が27ヵ月ぶりに増加に転じており、利上げを正当化する材料が後から出てきた。

 一方、米FOMCで米FRBはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25~5.50%に据え置いた。しかし、パウエル米FRB議長は9月にも利下げに動く可能性があるとの見方を示した。その後発表された米雇用統計が市場予想を下回る結果となり、景気減速懸念が高まって株価が急落、リスク回避の動きとなった。日経平均株価は過去最大の急落と急反発、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数であるVIX指数が過去最大の上昇を記録しており、当面の投げ売りは一巡した可能性がある。

 今回の世界的な株安は円キャリートレードの巻き戻しの影響が大きいとみられている。予想以下の米雇用統計では日経平均の急落は説明できない。UBSのアナリストは、円キャリートレードの巻き戻しについて、6日時点で50%程度完了したと推定し、まだ続くとの見通しを示した。

 6月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%低下し、約4年ぶりのマイナスとなった。前年比では3.0%上昇し、前月の3.3%上昇から伸びが鈍化し、2023年6月以来最小となった。第2四半期の米国内総生産(GDP)速報値は前期比2.8%増となり、事前予想の2.0%増を上回った。個人消費と設備投資の堅調な伸びを受けて第1四半期の1.4%増から伸びが加速した。ただ、コア個人消費支出(PCE)価格指数は2.9%上昇と第1四半期の3.7%上昇から伸びが鈍化した。

 一方、7月の米ISM製造業景気指数は46.8と前月の48.5から低下し、昨年11月以来の低水準となった。節目となる50も4ヵ月連続で下回った。また、7月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比11万4000人増となり、事前予想の17万5000人増を下回った。失業率は4.3%と前月の4.1%から上昇し、2021年9月以来の高水準となった。

 米FRBの高金利維持を受けて予想以上に景気減速が進んでいるとの懸念が高まり、一部で緊急利下げの見方が出た。ただ、7月の米ISM非製造業総合指数は51.4と前月の48.8から上昇し、活動拡大を示しており、今後発表される経済指標と金融政策の見通しを確認したい。

●中国の財新製造業PMIの50割れで先行き懸念が残る

 第2四半期の中国のGDPは前年比4.7%増と事前予想の5.1%増を下回った。第1四半期の5.3%増から伸びが鈍化し、2023年第1四半期以来の低成長となった。不動産不況と雇用不安が内需を圧迫した。中国人民銀行が7月下旬に主要な政策金利を相次いで引き下げたことも中国経済の先行き懸念を高める要因になった。

 また、7月の中国の財新製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.8と前月の51.8から低下した。節目となる50を9ヵ月ぶりに割り込んだ。事前予想の51.5から予想以上に低下し、先行き懸念が強い。ただ、財新サービス業PMIは52.1と前月の51.2や事前予想の51.4を上回った。総合PMIは51.2と前月の52.8から低下した。プラチナの急落場面で上海プラチナの出来高が急増し、中国勢の安値拾いの買いが入っている。

●NY市場の大口投機家の買い越しは縮小傾向

 プラチナETF(上場投信)残高は6日の米国で31.64トン(5月末32.39トン)、5日の英国で24.82トン(同23.71トン)、5日の南アフリカで11.36トン(同11.19トン)となった。英国と南アで増加したが、米国で投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月30日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万4314枚(前週1万2208枚)に拡大した。7月2日の2万3956枚が目先のピークとなり、手じまい売り、新規売りが出て買い越しを縮小したが、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて安値拾いの買いが入った。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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