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【特集】イスラエルとヒズボラは一触即発、原油相場がリスクを織り込むのはこれから? <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●延々と続くイスラエルの攻撃、次はヒズボラとの全面戦争か

 原油相場の値動きに緊迫感はほとんど現れていないが、27日にイスラエルが占領するゴラン高原のサッカー場にロケット攻撃があり、子供を含む12人が死亡したことをきっかけに不穏な空気が広がっている。この攻撃についてイスラエルや米国はレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの犯行であるとして、イスラエル軍はレバノンの首都ベイルートに報復攻撃を実施した。これまでにヒズボラは民間施設を標的としておらず、この攻撃についても関与を否定しているが、イスラエルは延々と反撃を続ける可能性がある。

 昨年10月、イスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲した後、イスラエルはパレスチナ自治区に対して9ヵ月間近く報復を続けている。イスラエル軍によるガザ攻撃が続くなかで死傷者数は数十万人規模との推計もある。この大半が子供であり、現地を訪れたボランティア医師の話からすれば、ガザでの軍事行動は常軌を逸している。平和の祭典どころではなく、早期のガザ停戦が必要だ。だが、米議会で演説したイスラエルのネタニヤフ首相は米国に対して軍事支援の強化を要求した。次の大統領が誰であろうと米国がイスラエル支援を止めるはずはなく、ガザへの報復攻撃が続く見通しである。報復と称してイスラエルはヒズボラに対する全面戦争を始めるのだろうか。

●どちらかが一線を越えれば戦線はまたたく間に広がる

 親イランの武装組織ヒズボラの戦力は不明だが、予備役が中心のイスラエル兵にとってはおそらく荷が重い。地上戦を含む全面戦争なら、なおさらである。ネタニヤフ首相が派兵を要請すれば、米国は応じるだろう。イスラエルはガザ停戦に関心が乏しく、ガザ地区でパレスチナ人の排除を続けるだろうが、そうであるならばレバノンからの攻撃も続く。ヒズボラやイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はイスラエルの対空防衛システムを突破しつつあり、イスラエルは放っておけない。イスラエル(米国)とヒズボラの本格的な衝突は時間の問題か。

 イスラエルとヒズボラによるレバノン戦争が始まるなら、フーシ派やイラクのイスラム抵抗運動など各地の親イランの武装勢力もイスラエル攻撃に加わる見通しだ。イスラエル、あるいはヒズボラのどちらかが一線を越えれば、戦線はまたたく間に広がると思われる。ヒズボラは、ベイルート攻撃は越えてはならない一線であると宣言していたが、イスラエルはためらわなかった。経済が悪化するイスラエルがパレスチナ自治区ガザを手中に収めたうえで日常を取り戻すには、米国の支援を全面に受けつつ、突き進むしかないのか。レバノン戦争は第3次世界大戦のきっかけとなる可能性があり、原油相場の値動きからすると非現実的であるとみなされているのかもしれないが、テールリスクではないと思われる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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