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【特集】金は最高値更新後に急落、米利下げ期待は行き過ぎの可能性も <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 は7月、米消費者物価指数(CPI)の伸び鈍化を受け、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待が高まるなか、内外で史上最高値を更新した。現物相場は2483.46ドル、JPX金先限は1万2679円をつけた。ただ、その後は利食い売り主導で急落した。ニューヨーク市場で大口投機家の買い越しが拡大し、買われ過ぎ感が出ていることに加え、最高値更新後の欧州中央銀行(ECB)理事会で9月の利下げに慎重な見方が示されたことが背景にある。米金融当局者のインフレ鈍化を歓迎する発言で利下げが示唆されたが、時期は示さず、市場の期待と開きがあるとみられる。

 CMEのフェドウォッチで、米FRBの9月利下げを織り込んだが、米連邦公開市場委員会(FOMC)の金利見通し(ドット・プロット)では年1回の利下げを予想している。7月30~31日の米FOMCでは金利据え置きが見込まれており、ドット・プロットが焦点である。年1回の利下げ予想に変わりがなければ利下げ期待が後退し、金に手じまい売りが出るとみられる。

 ECBは6月の理事会で4年9ヵ月ぶりの利下げを決定した。ただ、ラガルドECB総裁は、賃金の伸び加速でインフレ圧力が強いとし、7月に追加緩和を行うかどうかは示唆しなかった。唯一利下げに反対したホルツマン・オーストリア中銀総裁は、「タカ派的な利下げ」と解釈していると述べ、今後はより慎重に行動するだろうとしていた。

 7月のECB理事会では金利据え置きが決定され、ラガルド総裁は9月の理事会について「ワイドオープン(何も決まっていない)」と発言。ユーロ圏の消費者物価指数(HICP)確報値は5月に前年比2.6%上昇と3~4月の2.4%上昇から再加速したのち、6月は2.5%上昇となった。

 3月にスイス、5月にスウェーデン、6月にカナダとECBが利下げを決定しており、世界各国の中央銀行が利下げに転換したとの見方から米FRBの利下げも近いとみられているが、インフレ鈍化が続かなければ利下げは難しくなる。6月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%低下し、約4年ぶりのマイナスとなった。ただ、前年比では3.0%上昇と5月の3.3%上昇から伸びが鈍化したが、目標とする2%を大きく上回っている。

●米大統領選やガザ停戦の行方も当面の焦点

 11月の米大統領選に向けてテレビ討論会が実施されたが、バイデン米大統領の高齢が懸念され、トランプ前大統領が優勢とみられた。バイデン氏の欧州訪問でも高齢による衰えが目立つなか、トランプ氏の銃撃事件が発生。これにより国民のトランプ支持の声が高まり、民主党議員にバイデン氏撤退を求める声が相次いだ。

 バイデン米大統領は21日に大統領選からの撤退を表明。民主党の大統領候補にはハリス副大統領が支持を集めている。米民主党全国委員会委員長は、大統領候補を8月7日までに選定すると表明した。市場では第2次トランプ政権に向けたポジションが取られたが、バイデン撤退で民主党の勝利の可能性が上昇したことから一部が解消されたという。

 トランプ氏は公約として関税引き上げと減税を掲げており、勝利した場合、景気刺激的な政策がインフレを起こすとの警告も出ている。最近の世論調査ではハリス氏の支持率がトランプ氏を2ポイントリードしていると報道され、今後の米大統領選に向けた動きを確認したい。

 イスラエルとイスラム組織ハマスのパレスチナ自治区ガザでの停戦交渉の行方も当面の焦点である。イスラエルがハマスせん滅を目指し、ガザでの攻撃を続けていることで先行き懸念が残るが、ブリンケン米国務長官は19日、停戦が視野に入ってきたと発言した。イスラエルのネタニヤフ首相は、24日に米議会の上下両院合同会議で演説する予定であり、停戦が実現するのかどうかを確認したい。ただ、バイデン米大統領が大統領選から撤退したことで交渉が難しくなるとの見方も出ている。一方、トランプ前米大統領はネタニヤフ首相と26日に会談する予定である。

●NY市場の大口投機家の買い越しは20年3月以来の高水準

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、7月23日に841.74トン(6月末829.05トン)となった。米FRBの利下げ期待を受けて投資資金が流入した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは7月16日に28万5024枚(前週25万4775枚)に拡大し、2020年3月以来の高水準となった。買い玉が7月に入って34万9827枚(6月末28万4885枚)と2022年3月以来の高水準に増加したことが背景にある。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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