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【特集】プラチナはもみ合い、米利下げ期待も投資資金が流出<コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 プラチナ(白金)の現物相場は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測後退から5月2日以来の安値943ドル台を付けたのち、買い戻されて下げ一服となった。その後は、予想を下回る米経済指標を受けて景気減速の見方が強まると、1000ドル台を回復した。踏み上げの動きが一巡すると戻りを売られたが、パウエル米FRB議長のディスインフレ発言や米雇用統計で労働市場の緩和が示されると1034ドル台まで戻した。

 5月の米雇用統計が堅調な内容となりFRBの利下げ観測は後退したが、6月の同統計では労働市場の緩和が示された。非農業部門雇用者数は前月比20万6000人増と事前予想の19万人増を上回ったが、4~5月分が11万1000人下方改定された。また、失業率は前月の4.0%から4.1%に上昇し、2021年11月以来の高水準となった。時間当たり平均賃金も前月比0.3%上昇と前月の0.4%上昇から減速した。5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.3%上昇と事前予想の3.4%上昇を下回った(前月も3.4%上昇)。

 パウエルFRB議長は欧州中央銀行(ECB)のフォーラムで、米国はディスインフレの道に戻ったと述べた。ただ、FRBが利下げに着手する前にインフレが鈍化しているとの一段のデータを確認する必要があるとの見方も示している。9日の議会証言でも同様の見方を示した。11日には6月の米CPIの発表があり、インフレの伸び鈍化が続くかどうかを確認したい。

●EUが中国EVに追加関税、米大統領選でトランプ優位

 主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、中国の過剰生産能力による輸出拡大が主要議題として議論された。米国は関税引き上げを発表しており、欧州連合(EU)も中国製電気自動車(EV)に対して17.4~37.6%の追加関税を課すことを決定した。関税は暫定的なもので、EUの反補助金調査は今後4カ月続く見通しである。中国との協議も続けられるが、中国EVメーカーは値上げに動くとみられている。

 中国乗用車協会(CPCA)によると、6月の中国の乗用車販売台数は前年比6.9%減の178万台となった。4月の5.8%減、5月の2.2%減に続き、3カ月連続で減少した。消費者需要の低迷を受けて、在庫増加に対する懸念が高まっている。一方、6月の自動車輸出は前年比28%増となったが、EUの決定を受けて今後の輸出が伸び悩むとみられている。

 米大統領選に向けたテレビ討論会ではバイデン現大統領が言葉に詰まる場面も見られ、高齢に対する懸念が再浮上し、トランプ前大統領再選の見方が強まった。トランプ氏は中国の知的財産権の侵害を受けて中国からの輸入品に大型関税を課しており、再選された場合も中国に対する厳しい姿勢に変わりはないとみられる。民主党の議員からはバイデン氏に対し撤退要求も出ており、米大統領選に向けた動きを確認したい。

●米国のプラチナETFからの投資資金が流出

 プラチナETF(上場投信)残高は9日の米国で31.50トン(5月末32.39トン)、8日の英国で24.23トン(同23.71トン)、南アフリカで11.51トン(同11.19トン)となった。英国と南アで増加したが、米国で投資資金が流出し、合計で0.05トン減少した。米金融当局者の利下げに慎重な姿勢などを受けて戻り場面で投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月2日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万3956枚(前週2万0603枚)に拡大した。6月11日の1万5698枚が目先の底となり、買い戻し主導で買い越しを拡大した。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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