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【特集】小売り新時代を切り拓く、「リテールメディア」で飛翔する妙味株7選 <株探トップ特集>

小売企業が自社で保有するデータなどを有効活用し、効果的な広告配信を狙う「リテールメディア」事業が急成長している。コンビニ各社などが新たな市場の開拓に躍起だ。

―コンビニなど中心に新広告戦略を展開、高精度のマーケティングを推進―

 さまざまな業界で急激な変革の波が訪れている。我々の日常生活になじみ深いコンビニ業界もその例に漏れないが、 コンビニ各社を筆頭に、小売企業全体が今まさに熱視線を送っているのが、「リテールメディア(小売り広告)」だ。小売企業が自社で保有するデータなどを有効活用し、効果的な広告配信を狙うことで、新たなビジネスモデル構築を図る。その新潮流を探った。

●激動するコンビニ業界に次なる変革の波

 2024年2月、三菱商事 <8058> [東証P]、KDDI <9433> [東証P]、ローソン <2651> [東証P]の3社が「リアル×デジタル×グリーン」を融合させた新たな生活者価値創出に向けた資本・業務提携契約を締結した。これと同時に、三菱商とKDDIはローソンの議決権を50%ずつ保有する共同経営パートナーとなることを示した。コンビニ業界の歴史は古く、統廃合をはじめとして数々の話題をこれまでも株式市場にもたらしてきた。例えば、18年11月30日をもって、国内全てのサークルK・サンクス店舗の営業が終了し、ファミリーマートへのブランド統合が完了した。今回の三菱商の発表は、それ以来の大きな話題といえる。同社がコンビニ経営に手を伸ばしたのは2000年、そして17年にはローソンを子会社化したが、ここまで予想以上に攻めあぐねていた感もあった。そんなコンビニ業界にKDDIも巻き込んで、次なる変革が狙われている。

●リアルとデジタルを融合し広告効果を高める

 激動の予感がにわかに高まってきたコンビニ業界だが、足もとでコンビニ3強の一角である伊藤忠商事 <8001> [東証P]傘下のファミリーマートが、自社のスマートフォン(スマホ)アプリである「ファミペイ」を活用した広告配信サービスを新たに始めると報じられた。24年度中に約10社と組み、そのうち数社とは購買データの連携まで進めるという。今回ファミリーマートが取り組もうとしているのは、これまで同社が注力してきた「リテールメディア」戦略を更に深化させる意味が背景にある。リテールメディアとは、ざっくりと説明すれば小売企業(店)が保有・提供する広告媒体のことを指し、その媒体を活用し効果的な広告配信を狙うものである。具体的には、アプリを使いメーカーなどによる独自の広告などを流したり、 デジタルサイネージと連動した広告配信なども行ったりする。実はファミリーマートは今年3月時点で、全国47都道府県、合計1万店で店内へのデジタルサイネージの設置が完了しており、既に国内最大規模のリテールメディアを構築している。当然ながら、同業他社のセブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]傘下のセブン‐イレブンも22年9月に電通グループ <4324> [東証P]と協力してリテールメディア推進部を立ち上げ、負けじと事業を推進している。

 リアルとデジタルが融合した高精度のマーケティング施策が可能になるとして注目されているのはもちろんだが、リテール企業にとって新たな収益源になるという面も見逃せず、リテールメディア市場は急拡大していくと予想されている。実際、国内に限ってもCARTA HOLDINGS <3688> [東証P]の調査によると、その市場規模は27年に9300億円超と23年の3625億円から2.6倍になる見通しだ。以下では「リテールメディア」関連の銘柄に焦点を当てた。リアル行動データなどを活用し、精度の高いプロモーションやターゲティング支援を提供する企業に注目したい。

●TOPPAN、東芝テック、トライアルなど注目

 TOPPANホールディングス <7911> [東証P]~リテールメディアにおけるターゲティングから効果測定までのPDCA(計画・実行・評価・改善)を一貫して支援。21年9月からグループ会社のONE COMPATH(ワン・コンパス)、リアル行動データのunerry <5034> [東証G]と協業している。同社が持つ豊富なデジタルマーケティング支援ノウハウと、ワン・コンパスの電子チラシサービスのユニークユーザー、unerryの人流・購買データを活用した広告配信・効果測定などを駆使したソリューションを提供する。

 東芝テック <6588> [東証P]~POSレジの最大手であり、購買データをはじめとしたさまざまなデータを収集・組み合わせたデータ利活用サービスを提供。電子レシートサービス「スマートレシート」、クーポン発券クラウドサービス「テッククーポンデリ」などを手掛ける。また、今年3月から東急 <9005> [東証P]傘下の東急ストアが運営する店舗において、スマホ型レジアプリの利用促進に向けたリテールメディアの実証実験を開始。データの分析・活用を行い、リテールメディアの価値向上につながる新しいアプリを提供する計画である。なお、21年12月に資本・業務提携したデジタルガレージ <4819> [東証P]と連携して取り組んでいる。

 unerry <5034> [東証G]~リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営する。蓄積された月間300億件以上の人流ビッグデータをAI解析し、多様なアウトプットで可視化・分析する。解析結果は集客や行動レコメンドなどのマーケティング施策と連動可能。来店計測に基づいた実商圏、競合店舗とのシェア比較などを見える化できる「ショッパーみえーる」などを提供する。

 CARTA HOLDINGS <3688> [東証P]~電通グループ傘下で、デジタルマーケティング支援を提供する。SNS広告&SNSアカウント運用ワンストップサービスでは、自社開発の独自分析ツールを活用した、SNS専門チームによる広告領域/オーガニック領域を横断した統合的なコンサルティングを行う。

 トライアルホールディングス <141A> [東証G]~「あなたの生活必需店」をコンセプトとしたディスカウントストアを運営。スマートカートシステム「Skip Cart」など、独自に開発した IoT技術やAI技術を導入し、効率的な運営を可能にする店舗形態であるスマートストアの展開を進めている。「Skip Cart」はセルフレジ機能付きタブレットを搭載したショッピングカートで、AIを活用した商品リコメンドやスキャンした商品に応じてお得なクーポンを自動的に提案するなどの機能を持つ。

 ヤプリ <4168> [東証G]~ノーコードでアプリの開発・運用ができるクラウドサービス「Yappli」を提供。23年5月より、リテールメディア事業「Yappli for Retail App Ads(ヤプリ フォー リテール アップ アズ)」の提供を開始している。アプリ内や店頭のデジタルサイネージ、SNSなど多彩な接点を持つだけではなく、ユーザーの購買意欲を向上させるような仕組みの提供が可能となる。

 データセクション <3905> [東証G]~リテールマーケティング領域で店舗支援サービスをグローバルに展開。IoTやクローリング技術で集めた膨大なデータをAI技術を用いて分析・可視化する店舗分析ツール「FollowUP(フォローアップ)」は、世界20カ国以上、導入店舗約9000店舗、カメラ設置台数1万4000台以上の実績を誇る。売上高の中期的な成果指標(KPI)となる導入店舗数・カメラ設置台数は、前年対比約30%成長で推移している。

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