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【特集】時代の要請で急浮上、ダブルバガーを狙う「サイバー防衛」特選7銘柄 <株探トップ特集>

企業へのランサムウェア攻撃が多発している。また、国際的にもサイバー攻撃に対する警戒感は高まる一方で、もはやサイバー防衛は安全保障の根幹を担っていると言ってもよい。

―諸刃の剣の生成AI、ランサムウェア大量生産で脚光浴びるセキュリティー銘柄に刮目―

  AI IoT技術の進化は必ずしも良いことばかりではない。個人情報を含む膨大なデータがインターネット空間に接続されている状況下、それらの漏洩(ろうえい)や改ざんを防ぐサイバーセキュリティーが大きなテーマとなっている。また、国際的にもサイバー攻撃は、その程度にもよるが、武力攻撃の一環として認識すべき時代となっている。こうしたなか、株式市場でもサイバーセキュリティー関連に位置付けられる銘柄群に再び投資資金の流入が活発化している。

●「トランプ・トレード」で大移動する投資資金

 東京株式市場は足もと波乱含みの展開を強いられている。日経平均株価は6月下旬を境に一気に上放れ、7月に入ってもその勢いは衰えず、今月11日には日経平均が4万2224円の史上最高値を形成。これも長期上昇トレンド途上のメルクマールに過ぎないはずだったが、そこから風景はガラリと変わり、その後は連続で陰線を示現し下値模索の地合いに変わった。気が付けば最高値をつけた11日のローソク足は典型的な「アイランドリバーサル(離れ小島)」となり、波動転換を意識した投資マネーの利食い急ぎの動きが下げを助長する形となってしまった。

 もっとも、ここは冷静にならなければいけない。投資マネーが東京市場から堰を切って流出しているというわけではないからだ。日経平均は足もと4万円大台をめぐる攻防となっているが、これまでの過程で従来の物色の流れに変化が生じており、いわゆる資金シフトの動きが顕在化している。ここまで相場の牽引役を担ってきた輸出ハイテクセクター、特に半導体関連の主力株は試練の時を迎えている。中長期的視野で半導体相場が終わったというわけではないが、今はこの半導体株を押し上げてきた強烈な資金が「トランプ・トレード」の名のもとに新たな入り江を求めて大移動を始めている。

●生成AIの悪用でランサム攻撃急増

 三菱重工業 <7011> [東証P]を旗艦銘柄とする防衛関連株物色はトランプ・トレードの主流をなしているが、次期大統領がトランプ氏であろうとなかろうと、防衛力の強化(防衛予算の拡大)は国家安全保障という観点から、近未来の世界で避けることのできないコストといえる。それと同時に、時代はもはやリアル空間のみならず、サイバー空間での安全を確保する重要性が急速に高まっている。ロシアとウクライナの紛争でもサイバー攻撃を含めたハイブリッド戦争の様相を強めていることはいうまでもない。かつてプーチン露大統領は「AIを制する者が世界を牛耳る」と述べたが、まさにこのAIをサイバー空間に置き換えれば、今の戦争の実態を如実に表す言葉ともなり得る。

 また、我々の日常における目線でもサイバー犯罪のリスクは以前よりもはるかに強大化している。状況を大きく変えているのが 生成AIの存在だ。生成AIの普及は必ずしもバラ色ではなく、ランサムウェア(身代金要求ウイルス)の大量作成を容易にするというネガティブな要素をはらんでいる。これが、サイバーセキュリティーのテーマ性を一気に高める背景ともなっている。

●企業に次々と襲い掛かるサイバー犯罪の高波

 今年6月にKADOKAWA <9468> [東証P]がサイバー攻撃を受け、同社傘下のドワンゴの動画共有サービス「ニコニコ動画」が停止される事態となり、マーケットでも大きな話題となった。これもランサムウェア攻撃であったとみられている。更に、今月に入ってからはNTTデータグループ <9613> [東証P]が、同社の欧州子会社に対し6月に不正アクセスがあったことを発表した。ランサムウェアであったかどうかは明らかではないが、NTTデータは不正アクセスを受けたサーバーをネットワークから完全分離したことを併せて発表している。

 この後もサイバー攻撃の事例は後を絶たない。今週17日、東京ガス <9531> [東証P]は子会社のネットワークに不正アクセスがあり、業務委託元から提供を受けている一般消費者の個人情報約416万人分が流出した恐れがあると発表している。

 東京商工リサーチによると2023年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏洩・紛失事故は前年比6%増の175件で漏洩した個人情報は前年比で約7倍の4090万8718人分と急増している。なお、12年以降23年までで事故件数は累計1265件、漏洩した可能性のある個人情報は1億6662万人分と、延べ人数とはいえ現在の日本の人口をはるかに上回っている状況となっている。

●「能動的サイバー防御」が本格始動へ

 警察庁は22年4月、サイバー特捜隊を新設(その後特捜部に格上げ)し、態勢強化に乗り出した経緯がある。また、直近では政府が重大なサイバー攻撃を未然に防止する「能動的サイバー防御」で、自衛隊の新たな任務を創設する方向で調整に入ったことが伝わっている。能動的サイバー防御とは、政府が通信を監視してサイバー攻撃の兆候を検知し、脅威が確認された場合は攻撃を無力化するというものだが、武力攻撃事態に至らない平時に、発電所などの重要インフラや政府機関を守るため、攻撃元サーバーへの侵入・無害化措置を行う権限を付与することを検討しているという。

 サイバー犯罪は年々増加傾向をたどり、その内容も巧妙化している。生成AIの進化がアダ花を咲かせることのないように、それを防衛し駆逐する側もこれまで以上に知恵と労力が求められる時代となっていく。現状は日本企業のIT関連予算に占めるサイバーセキュリティー予算は1割にも満たないと推計されているが、それだけに伸びしろは大きいともいえる。今後、サイバーセキュリティーは官民を挙げて取り組みが加速していく分野であり、株式市場でも関連銘柄に注がれる視線はこれまで以上に熱を帯びることになろう。今回のトップ特集では、まさしく時代の要請であるサイバー防衛をテーマに、ここから株価倍増も夢ではない有力7銘柄を厳選エントリーした。

●時代の要請で株高シナリオ全開の7銘柄

◎ラック <3857> [東証S]

 ラックは法人向けセキュリティーソリューションとシステム開発を両輪とするが、リアルタイムでのサイバー攻撃監視などで優位性を発揮する。システム開発では銀行をはじめ金融向けを中心に高水準の受注を獲得している。筆頭株主がKDDI <9433> [東証P]で第2位株主として野村総合研究所 <4307> [東証P]が名を連ねていることは、同社の営業展開力を増幅させる礎ともなっている。

 25年3月期の業績予想は売上高が前期比7%増の527億5000万円と連続で過去最高を更新、営業利益は同0.3%増の21億8000万円と横ばいを見込むが、直近5月中旬に発表した新中期経営計画では27年3月期の売上高600億円、営業利益40億円を掲げており、営業利益は今期予想比倍増近い水準を計画していることはポイントとなる。

 株価はここ急速に上値を追い、今月8日には903円の戻り高値を形成。その後は上昇一服となっているが、3月7日に上ヒゲでつけた年初来高値990円を払拭し約3年ぶりとなる4ケタ大台での活躍に期待がかかる。

◎S&J <5599> [東証G]

 S&Jはネットワーク監視やサイバー攻撃対応などに主眼を置くサイバーセキュリティー専業企業で、大企業・中堅企業を主要顧客対象として幅広いニーズを捉え、セキュリティー監視・運用を軸に新規案件獲得が続いている。売上高の2割強をコンサルティング部門が占め、安全性向上に向けた改善提案なども行っている。

 ランサムウェア対策需要が高まるなか、既存客の確保及び新規開拓が進み、21年3月期以降はトップラインの伸びが顕著だ。25年3月期は前期比25%増収で初の20億円台乗せを果たす見込み。営業利益は同16%増の4億300万円とこちらも過去最高更新が続く見通しだ。27年3月期を最終年度とする中期経営計画では売上高31億6800万円、営業利益7億5100万円を掲げ、今後の成長に向けたキャパシティは評価できる。

 同社は昨年12月に新規上場したニューフェースだが、株価は3月6日に1462円の最高値をつけた後は大幅な調整を余儀なくされた。だが、ここにきて見直し買いが活発で青空圏突入を視野に入れている。

◎FFRIセキュリティ <3692> [東証G]

 FFRIはサイバーセキュリティー専業の研究開発型企業で、自社開発の標的型攻撃に特化した純国産エンドポイントセキュリティーソフト「ヤライ」で実績を重ねている。人材育成でも業界の先駆者として存在感を放ち、世界トップ級のセキュリティーエンジニアを擁し、マルウェアや組み込み機器分野のセキュリティー技術でリーディングカンパニーとして活躍。政府からの防衛関連案件の需要獲得が進むほか、販売パートナーとの連携強化で個人向けや中小企業向けOEM製品も好調だ。

 業績変化率も際立つ。24年3月期は営業利益が前の期比で2.5倍化し過去最高を更新した。25年3月期は伸び率こそ鈍化するものの、前期比4%増の5億1500万円予想と増益を確保する見込みでピーク利益更新基調が続く。

 株価は7月4日に戻り高値2488円を形成し、4月11日の年初来高値に肉薄した後いったん調整したが、目先買い直され新値街道に突入した。時価は20年11月以来の高値圏にあるが、最高値は15年7月につけた1万8500円と極めて天井は高い。

◎サイバートラスト <4498> [東証G]

 サイバトラスは認証・セキュリティーサービスを主要業務とし、強みを持つLinuxでサーバーなどに使われるOS(基本ソフト)を手掛けるほかIoT事業にも注力する。不正アクセスを防止するデバイス証明書管理サービスで需要開拓が進む。また、電子認証サービスでも実力を発揮し、データや個人情報の保護などセキュリティー能力への信頼度を示すデジタルトラスト領域でNEC <6701> [東証P]との協業を強化している点も注目材料となる。

 業績も絶好調といってよく、連結決算に移行した18年3月期以降、売上高・営業利益ともに増加の一途で25年3月期営業利益は前期比17%増の13億円予想とピーク利益更新基調に陰りは見られない。時価予想PERは19倍前後にとどまり、利益成長力を考慮すると一段の上値追いが濃厚とみられる。

 株価は6月下旬に動意づき、7月に入り大勢二段上げの様相をみせた。7月4日に戻り高値2112円を形成した後は売り物をこなしもみ合いに転じているが、早晩三段上げに移行する公算が大きい。

◎JBCCホールディングス <9889> [東証P]

 JBCCHDはITサービスの大手で、超高速システム開発やクラウドサービスで優位性を発揮するほか、サイバーセキュリティー分野での実績が豊富。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)需要を獲得し、高い利益成長を続けている。超高速開発とは基幹システムを顧客ニーズに対応し短期間で構築するもので、クオリティーの高さを強みに引き合いが旺盛だ。また、セキュリティーでは高度なセキュリティー資格を有する技術者を複数抱え、巧妙化するサイバー攻撃にも最新の情報にキャッチアップして迅速に対応する。

 収益は好調を極め、25年3月期営業利益は前期比15%増の51億円を予想。達成すれば連続最高利益更新となり、22年3月期から4期連続で2ケタ成長を果たす。この高い成長力を持ちながらも、PER15倍近辺と同業他社と比較しても割安感が強い。

 株価は今月10日に3835円の戻り高値形成後ひと押し入れているが、早晩切り返し4000円大台活躍が有望。1月25日の年初来高値4230円は単なる通過点となる公算が大きい。

◎ブロードバンドセキュリティ <4398> [東証S]

 BBSecはセキュリティー監査や脆弱性診断、情報漏洩対策などのセキュリティーサービスを展開、企業へのサイバー防衛に多角的に貢献する。とりわけ金融系で強みを発揮しており、クレジットカードデータを取り扱う企業へのセキュリティー監査及びコンサルティングで高い実績がある。最近は生成AIの進化などに伴いサイバー攻撃も高度化の一途をたどっているが、同社はこの状況を鑑(かんが)みて、今月12日には新たにAI時代に対応した各種サイバーセキュリティー対策支援を開始することを発表している。

 ファンダメンタルズも申し分なく、トップラインは上場前の14年6月期から過去最高更新基調を続けている。営業利益も23年6月期時点で2期連続のピーク利益更新、24年6月期も前の期比22%増の6億5000万円予想と成長トレンドに陰りはない。

 株価は6月下旬を境に一貫した下値切り上げ波動を形成、数年来のボックス上限である1800円台をクリアし21年5月以来となる2000円台復帰を目指す。

◎TDCソフト <4687> [東証P]

 TDCソフトは独立系システムインテグレーターで金融機関や流通業界向けで高い競争力を持ち、自社開発のクラウドサービスやデータ分析に注力し旺盛なニーズを取り込んでいる。金融ITソリューション、公共法人向けITソリューションのほかITコンサルなどビジネス領域は広いが、サイバーセキュリティー分野にも強く、安全性の高い基盤構築支援から開発・監視、更にインシデントが発生した際の対応も含め、トータルでのソリューション提供で顧客ニーズに応えている。

 業績は成長路線をまい進しており、営業利益は連結決算に移行した16年3月期から前期(24年3月期)まで最高利益を更新し続け、年平均成長率が14%を超える。25年3月期も前期比13%増の43億円を見込むなど飛ぶ鳥を落とす勢い。26年3月期は初の50億円台乗せも有望。

 株価は今週17日に1375円の上場来高値をつけたばかりだが、収益成長に陰りなく上値余地は大きいと判断される。抜群の好業績を原動力に中期的に戻り売り圧力のない最高値街道を走る展開が見込まれる。

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