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【特集】金は内外で最高値を更新、米利下げ予想で投資資金が流入<コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 金(ゴールド)は、米ISM製造業景気指数の低下などを受けて米連邦準備理事会(FRB)の6月利下げ開始を織り込むと、テクニカル要因の買いも入って急伸し、史上最高値を更新した。その後、米国のインフレの伸びが加速すると、利下げ予想の後退が警戒されて上げ一服となった。ただ、米連邦公開市場委員会(FOMC)で年3回の利下げ予想が維持されると、押し目を買われて一段高となり、2220ドル台まで上昇した。スイス中銀の予想外の利下げなどによるドル安一服に上値を抑えられたが、FRBの6月利下げ開始見通しは変わらず、押し目を買われた。

欧米の中銀が利下げサイクルに転じるとの見通しを受けて、金ファンドに投資資金が流入している。米主要株価指数も最高値を更新しリスク選好の動きとなっており、引き続き買われると上値を伸ばすとみられる。これまでの商品(コモディティ)市場では、今回のような急伸場面ではまとまった現物が出てきて利食い売り主導で反落したが、ニューヨーク金の指定倉庫在庫は減少傾向にあり、実需筋も踏み上げとなっている。銀市場では現物が出て上値を抑えられており、金はまとまった現物が出るまで上昇が続く可能性がある。

 2月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.2%上昇した。前月の3.1%上昇から、ガソリンや住居費の上昇を受けて伸びが加速した。事前予想の3.1%上昇も上回った。また、米生産者物価指数(PPI)も前月比0.6%上昇し、前月の0.3%上昇から伸びが加速し、事前予想の0.3%上昇も上回った。インフレの伸び加速に対する警戒感が出たが、FOMCで年3回の利下げ予想が維持された。FOMCではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5会合連続で5.25~5.50%に据え置いた。パウエルFRB議長は会合後の記者会見で、インフレの高止まりが示されたが、「全体的なストーリーは変わっていない」と強調した。

市場ではインフレが鈍化すれば、6月に利下げを開始するとみられている。CMEのフェドウォッチで、6月のFOMCの利下げ確率は63.5%(前月52.3%)に上昇し、年末までの利下げ幅は75ベーシスポイント(bp)の確率が34.8%(同31.9%)となった。また、2025年は9月までにさらに75bp利下げが見込まれている。

 スイス中銀は、主要金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げ1.50%とした。声明で「過去2年半のインフレとの闘いが効果的であったため、今回の金融緩和が可能になった」としている。主要中銀として初めて利下げに踏み切り、ドル安が一服した。また、イングランド銀行は金利据え置きを決定したが、前回会合まで利上げを主張した2人の委員が据え置きに転じた。ベイリー総裁は利下げを開始する「正しい方向に動いている」と指摘した。欧州中央銀行(ECB)も6月に利下げを開始するとみられており、欧米の中銀は利下げサイクルに転じる見通しである。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)の週間調査によると、3月20日までの1週間の金ファンドへの資金流入は11億ドルと2023年5月以来で最大となった。BofAは、中銀の利下げに向けた動きが下支えとなり、株価や金が最高値を更新していると指摘した。

●国内金は円安も支援要因

 国内金は日銀金融政策決定会合後の円安も支援要因となり、現物(店頭小売価格、税込)が1万1752円、先物(JPX金先限)が1万0734円とともに最高値を更新した。日銀会合ではマイナス金利解除とイールドカーブ・コントロール(YCC)廃止が決定した。ただ、「当面、緩和的な金融環境が継続する」と明記されたことで、円相場は1ドル=151円台後半まで円安に振れた。神田財務官の発言を受けて介入警戒感も出ているが、FRBが当面、高金利を維持することで円を買い戻す動きは限られている。

●米利下げ予想で金ETFに投資資金が戻る

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、3月25日に835.33トン(2月末822.91トン)となった。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測後退を受けて815.13トンまで減少したが、利下げ予想が示されたことで投資資金が戻った。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは3月12・19日に20万1602枚に拡大し、1月2日以来の高水準となった。FRBの利下げ観測後退を受けて2月13日に13万1168枚まで縮小したが、2000ドル割れで下げ一服となったことから、安値拾いの買いが入った。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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