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【特集】ウクライナ紛争は依然として原油相場のリスク要因に<コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 ロシアがウクライナに侵攻してから2年が経過し、3年目に入っている。戦闘が長期化し、それほど手掛かりとならなくなっているとはいえ、ロシアは米国やサウジアラビアと並ぶ世界最大級の産油国であり、原油相場の値動きを眺めるうえで、ウクライナにおける代理戦争の行方に引き続き目を向けておかなければならない。

 ウクライナ紛争では、ウクライナ東部からロシアが支配地域をじりじりと広げている一方、西側諸国の支援が細るなかでウクライナ軍は劣勢である。米主力戦車のM1エイブラムスが投入されたとはいえ、戦況に変化はなさそうだ。兵力が不足するウクライナでは、女性が動員されているほか、未成年も駆り出されようとしており戦況が末期的なのは明らかだが、欧州連合(EU)が500億ユーロのウクライナ追加支援を承認するなど、まだウクライナに戦えと促している。米国ではウクライナを含めた追加支援法案の成立が見通せないものの、バイデン米大統領は一般教書演説でウクライナ支援の継続を求めた。ロシアと対峙し続ける構えである。

 先週、ローマ教皇は長引くウクライナ紛争について、白旗を揚げる勇気や交渉する勇気を持つよう呼びかけた。ウクライナに敗北を認めるよう促したことからローマ教皇に対する批判が出ているようだが、ロシアとウクライナ双方で死者数は100万人を超えている可能性が高く、停戦を促さないほうがどうかしている。EUが500億ユーロの追加支援を決めなければウクライナ軍は戦闘を続けることができず終戦が見えたかもしれないが、EUはその道を選択しなかった。

 最近、フランスのマクロン大統領はロシアとの直接的な軍事対決を声高に叫んでおり、ウクライナへの仏特殊部隊の派遣に言及した。米ポリティコによればこの提案は北大西洋条約機構(NATO)によって否定されたほか、各国首脳も戦線拡大に否定的だが、英FTなどが指摘するように、NATO加盟国はウクライナ紛争にすでに深く関与しており、ロシアとNATOは直接的に戦っている。ドイツ軍首脳はクリミア大橋の爆破計画について話し合っていたほか、英国はロシア軍の捕捉など軍事的にウクライナを手助けしていると報道された。ドイツや英国の行動は、ロシアに対する宣戦布告と等しく、こそこそとしていないだけマクロン大統領の態度のほうが潔いかもしれない。ただ、仏国民が要求しているように、マクロン大統領がまずは前線に立つ必要があるだろう。

●西側諸国は戦争継続が唯一の選択肢

 ウクライナ紛争が始まってから、西側はウクライナにどれだけつぎこんだのだろうか。日本も資金提供を行っているが、このままいけば軍事的、人道的、金融的な支援の合計額は3000億ドルを軽く上回る。ロシアに対して西側が負けを認めた場合、この莫大な資金は回収不能であるほか、西側各国が接収したロシアの在外資産の賠償を要求されることは確実で、ロシアに眠る外国企業の資産も差し押さえられ、ウクライナの復興資金は間違いなく西側負担となることを考慮すれば、敗北を認めることは現実的に難しくなっている。西側の損失は無限大である。なぜか調査は打ち切りとなったが、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」爆破についても追及されるだろう。ウクライナ政府に爆破の責任をなすりつけても、ロシアは納得しないのではないか。

 欧米諸国がロシアに負けを認めず、戦後賠償を回避しようとするならば、選択肢は一つであり、ウクライナは戦い続けるしかない。NATO加盟国は正規兵をウクライナに派遣するしかないだろう。後戻りはできない。バイデン大統領の旗色は悪いが、このまま11月の米大統領選を迎えるのだろうか。ウクライナ紛争は原油相場をいずれまた刺激する可能性が高い。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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