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【特集】有沢正一氏【日経平均4万円台定着なるか、新年度相場の展望を読む】<相場観特集>

有沢正一氏(岩井コスモ証券 投資調査部長)

―日米中銀イベント後に騰勢強め最高値圏に突入、過熱感強まるなか期初の需給環境が注目点に―

 週明け25日の東京株式市場で、日経平均株価は前週末比で474円安と5日ぶりに大幅反落し、安値引けとなった。直近の急ピッチな株高を受け短期的な過熱感が意識されるなか、主力株を中心に利益確定目的の売りが膨らんだ。今週は27日が3月末の権利付き最終売買日となり、28日に実質新年度相場入りとなる。国内の機関投資家による期初の益出し売りに対する警戒感がくすぶるなか、日経平均は4万円の水準を維持できるのか。岩井コスモ証券・投資調査部長の有沢正一氏に、今後の見通しを聞いた。

●「4万2000円まで上昇も、高配当バリュー株と半導体株の循環物色に期待」

有沢正一氏(岩井コスモ証券 投資調査部長)

 日本株はPER(株価収益率)でみた割安感は薄れつつあるが、割高な水準というわけでもない。日経平均のPER17倍台という水準自体は、アベノミクス相場の初期となる2013年の平均とほぼ同じレベルである。当時も今と同様に、デフレ環境からの脱却期待が強まっていた。また、昨年末の段階では、為替相場が円高に振れて来期の国内企業の業績が圧迫されるシナリオを想定する投資家は多かったが、足もとでドル円相場は1ドル=151円台で推移している。今期の平均レートが144円40銭程度となっていることを踏まえると、来期の輸出企業の業績面で、為替はマイナスどころかプラス要因となる可能性が出てきた。輸出関連にとどまらず、資源・エネルギーや電力・ガスを除くほとんどのセクターで来期は増益が予想されている。

 この先は適度に過熱感を冷ましながら業績期待を織り込み、株価水準を切り上げる展開となるだろう。今後1ヵ月間の日経平均は4万~4万2000円で推移すると想定している。日本株のポジションがまだ十分でない海外投資家が一定数、存在するとみられるほか、新NISAに絡んだ資金の流入も引き続き期待できる。国内の機関投資家が新年度入りで益出しの売りに動いたとしても、影響は短期間で終息するに違いない。

 高配当・バリュー株と 半導体関連株の両方を買い持ちする「バーベル戦略」が引き続き有効な投資戦略となると考えている。前者のうち、メガバンクやオリックス <8591> [東証P]は、日銀のマイナス金利政策の解除が事業環境に追い風となる。インフレ環境への転換は、総合商社の業績を押し上げる要因となると期待でき、知名度の高い企業とあれば、新NISA経由の新規資金の流入も十分見込める。後者の半導体関連株においては、後工程の装置を手掛ける企業を中心に成長期待は強く、アドバンテスト <6857> [東証P]やTOWA <6315> [東証P]は投資対象から外せない銘柄だと考えている。

 地政学リスクや原油相場の動向などリスク要因については当然、留意が必要だが、日本企業の今回の賃上げの動きは、深刻な人手不足という実態を踏まえたものであるのも確かだ。持続的な賃金上昇による脱デフレと、経済活動の好循環のシナリオが十分に想定できる環境自体は、引き続き株式市場にプラス要因となるはずだ。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(ありさわ・しょういち)
1981年大阪府立大学経済学部卒業。89年岩井証券入社、株式部、調査部などの勤務を経て、2003年イワイ・リサーチセンターセンター長。12年5月より岩井コスモ証券、17年1月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員。

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