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【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─バブル時のPERは60倍、PBRは5.6倍

経済評論家 杉村富生

「バブル時のPERは60倍、PBRは5.6倍」

●外国人はあと20兆~30兆円買う!

 講演会などでは買い気の凄さに、「バブルじゃないですか」という質問をいただく。若い人が多い。筆者の答えはこうだ。「あなたは1980年代後半のことを知っていますか」。ほとんどの人が知らない。「生まれてなかった」とか、「小学生だった」という人がいる。そんな人達が「バブルだ、バブルだ」と騒いでいる。

 これはちょっとおかしくないか。再三指摘しているように、いま演じられているのは「怒りの猛反騰劇」だ。「失われた30年」の克服を目指す日本再興戦略を評価する相場である。買いの主役は外国人(国際マネー)だ。もちろん、経営者の意識は変わった。個人はリスク資産にシフトしている。この大きな流れを見失ってはいけない、と思う。

 日経平均株価は1989年12月29日の史上最高値3万8915円(終値ベース)奪回を目前にしている。これこそが「バブルじゃないか」。いや、それは違う。史上最高値時点のPERは60.9倍、PBRは5.6倍だった。現況のPERは16.1倍、PBRは1.45倍にすぎない。1株利益は当時の638円が現在は2376円である。

 企業の稼ぐ力は格段に大きくなっている。外国人の買い越し額は昨年以降、約7兆円にとどまる。彼らの買い越し額は小泉構造改革時が38兆円、アベノミクス期待時が25兆円だった。今回は恐らく20兆~30兆円買うだろう。外国人の猛攻は始まったばかりである。景況感が改善し、製造業の国内回帰、半導体中心に新工場の建設ラッシュではないか。

 新工場の建設は雇用と購買力を高める。熊本県菊陽町の台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の敷地は21万平方メートル(東京ドーム4.5個分)だ。建設現場では協力会社のソニーグループ <6758> [東証P]、デンソー <6902> [東証P]の社員を含め、6000人が働いている。2期工事にはトヨタ自動車 <7203> [東証P]が参加する。

●コード番号末尾が「1」の銘柄に妙味!

 菊陽町には別に東京エレクトロン <8035> [東証P]、ソニーグループ、日本ピラー工業 <6490> [東証P]、ローツェ <6323> [東証P] などが、芦北町ではテラプローブ <6627> [東証S]が生産拠点の整備を急いでいる。さらに、台湾企業をはじめ、日本の半導体部材、素材メーカーが相次いで進出する計画を明らかにしている。

 こうした半導体生産の集積地が宮城県大衡村、北海道千歳市に誕生しつつある。まさに、フレンド・ショアリング(主要産業のサプライチェーンを西側陣営だけで完結させる壮大な構想)が始動している。経済は活性化する。ジャパンマテリアル <6055> [東証P]、レゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]が潤うだろう。

 日本企業は「失われた30年」の間に、時価総額的にはすっかり小さくなった。アメリカ市場の時価総額は7938兆円と、この30年間に20倍になったが、東京市場は5割増にとどまっている。「マグニフィセント・セブン(アメリカ市場の時価総額上位7社)」の時価総額」は1968兆円だ。東証プライム市場の2倍のスケールである。マイクロソフト<MSFT>、アップル<AAPL>の2社だけで883兆円だ。話題のマイクロソフト、エヌビディア<NVDA>、メタ・プラットフォームズ<META>の3社(MnMトリオ)の時価総額は911兆円だ。ちなみに、東証プライム市場(1655社)の時価総額は約920兆円にすぎない。悲しい話じゃないか。

 筆者が唱える「怒りの猛反騰劇」とは基本的には“再生日本”を評価するとともに、出遅れ修正の動きである。コード番号末尾が1の「ゼロイチ銘柄」は歴史が古く含みが大きい。外国人の認知度は高い。AGC <5201> [東証P]、古河電気工業 <5801> [東証P]、三菱倉庫 <9301> [東証P]などがそうだ。PBRは1倍を割り込んでいる。

2024年2月16日 記

株探ニュース

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