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【特集】プラチナは上げ一服、米利下げ期待は行き過ぎとの見方 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は昨年12月、欧米の利下げ見通しを受けて堅調となり、昨年6月以来の高値1012ドル台をつけた。ただ、年明けは米経済指標で労働市場の堅調が示されると、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待は行き過ぎとの見方から利食い売りなどが出て上げ一服となった。

 中国経済の先行き懸念が残っていることも上値を抑える要因である。ただ、欧米の自動車販売が好調であることや供給不足見通しが下支え要因であり、当面はどの水準で安値拾いの買い意欲が強まるかを確認したい。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)で当局者が利下げ予想を示したことを受け、米FRBの利下げ期待が高まった。CMEのフェドウォッチでは3月から利下げを開始し、年末までに6回、150ベーシスポイント(bp)利下げを織り込んでいる。ただ、米当局者の年3回の利下げ予想から行き過ぎており、今後発表される経済指標で修正されるとみられる。

 12月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比21万6000人増と、事前予想の17万人増を上回った。11月は17万3000人増に下方修正された。時間当たり平均賃金は前年比4.1%上昇し、前月の4.0%から加速した。失業率は3.7%で先月から横ばいとなった。12月の米ISM非製造業総合指数が5月以来の低水準となったが、11日に発表される12月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.3%上昇(前月3.1%上昇)と加速するとみられており、米FRBの利下げ期待が後退する可能性がある。

 また、当面は米議会の歳出規模を巡る議論の行方も焦点である。現行のつなぎ予算は一部が1月19日、残りが2月2日に期限切れとなる。米議会上下両院の指導部は7日、2024会計年度の歳出規模を1兆5900億ドルとすることで合意したことが伝えられたが、民主党と共和党の間では合意内容について見解のずれがあるという。

●中国指導部はシャドーバンキング破綻を承認

 12月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.0と前月の49.4から低下、事前予想の49.5も下回り、分岐点となる50を3ヵ月連続で下回った。支援策を強化しなければ成長が鈍化するとみられている。サービス業と建設業を含む非製造業PMIは50.4で前月の50.2から上昇した。サービス業活動を示す指数は49.3と、前月と同水準にとどまった。

 中国指導部は経営難に陥ったシャドーバンキング(影の銀行)大手の中植企業集団について、昨年12月に破産させることを承認し、処理手続きを進めた。金融リスクの波及を防ぐためだが、投資家のセンチメントを悪化させるリスクがあるという。中国人民銀行は与信の伸びを支援するため、預金準備率など金融政策ツールを活用するとしており、中国経済の行方も焦点である。

●NY市場で大口投機家の買い越しは昨年4月以来の高水準

 プラチナETF(上場投信)残高は1月8日の米国で30.87トン(11月末30.91トン)、4日の英国で12.17トン(同11.78トン)、5日の南アフリカで11.89トン(同11.98トン)となった。昨年6月以来の高値をつけるなか、米国と南アで利食い売りが出た。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月2日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万9039枚(前週2万3662枚)となり、昨年4月以来の高水準となった。欧米の利下げ期待の高まりを受けて新規買い、買い戻しが入った。ただ、利下げ期待は行き過ぎとの見方から年明けは利食い売りが出ている。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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