【特集】ガザ征圧にハマスは「人の盾」で対抗、中東戦争勃発なら原油相場は暴騰へ <コモディティ特集>
minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
イスラエルがガザ地区を封鎖したことで、電気、水道、燃料、食料などインフラ供給が止まっており、世界がパレスチナに対する人道支援の必要性を訴えている一方、イスラエルに対する軍事的な支援を優先したのは米国である。最新鋭の米原子力空母「ジェラルド・R・フォード」を中心とする打撃群が地中海東部に到着しており、イスラエルの行動を受け入れるよう中東全域に軍事的な圧力をかけている。空母「ドワイト・アイゼンハワー」を中心とした打撃群もイスラエルを支援するため米バージニア州から出発した。英国防省も最新鋭のHMSクイーン・エリザベスを含む英空母打撃群を警戒態勢におくことを発表している。
●市民を盾にするハマス、イラン介入の可能性も
イスラエルはガザ地区の北部から南部へ退避するよう、パレスチナ人に勧告している。イスラエル軍はガザ地区北部の「ハマス」に対して陸海空からの総力戦を準備しており、ガザ侵攻が始まると、民間人の死傷者数はさらに膨れ上がるだろう。避難しようにも燃料も食料もないなかで、市民は移動することすら難しい。イスラエル軍はガザ地区北部を瓦礫に変えた後、地中貫通型爆弾(バンカーバスター)で地下に潜伏している戦闘員を一掃するとの報道がある。「ハマス」の司令部や中枢は地下都市にあり、地上を制圧しただけでは終わらない。ガザ地区を瓦礫の山にすることは、イスラエルとってはじめの一歩である。「ハマス」にとってパレスチナ人やその住居は本丸を守る盾である。
中東各国はパレスチナ人の支援を続けてきたが、イスラエルによる一方的な領土拡張が続き、パレスチナ人に残された土地はわずかである。米国の空母打撃群がにらみをきかせるなかでイスラエルの軍事行動が続けば、ガザ北部がイスラエルの管理下に置かれることは目に見えている。ただ、イランのホセイン・アブドラヒアン外相は、この状況で傍観者であり続けることはできないとし、イスラエルによるガザ攻撃をけん制している。イランが直接的、あるいは間接的にでも軍事行動を開始するなら、反シオニズム戦争が勃発するリスクがある。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、レバノンの武装勢力ヒズボラを利用して、イランが介入する可能性を指摘している。ヒズボラはイランが支援している。
●中東戦争がまた始まれば、1バレル=100ドルは通過点
イランのけん制やユダヤ民族主義者に対する批判を背景に、イスラエルはガザ侵攻を踏みとどまるのだろうか。イランが開発した超音速ミサイルはイスラエルの防衛システム「アイアンドーム」による迎撃が困難であるとみられており、イスラエルはイランの制止を無視するわけにはいかないかもしれない。世界的に停戦を求める声も強まっている。
ただ、だからといってイスラエルが態度を改めて振り上げた拳を下ろすとは思えない。イスラエルがガザ地区の病院を攻撃したことで、周辺国の怒りは燃え上がった。18日にバイデン米大統領がイスラエルを訪問するが、イスラエルは軍事行動を止める気配はなく、むしろ戦火の拡大を望んでいるように見える。中東の緊迫感は一段と高まるだろう。中東戦争がまた始まった場合、ニューヨーク市場のウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物で1バレル=100ドルは通過点であり、200~300ドルは覚悟しておくべきである。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
株探ニュース