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【特集】国内金は高値更新後に急落、米長期金利・緊迫する中東情勢の動向が焦点に <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 国内金は9月、米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置き見通しを受けて買い戻されたことや日銀の金融緩和継続見通しによる円安を受けて堅調となり、先物(JPX金先限)が9233円、現物(店頭小売価格、税込)が1万0154円と最高値を更新した。ただ、米連邦準備理事会(FRB)が長期間、高金利を維持するとの見方から米国債の利回りが急上昇すると、テクニカル要因の売りを巻き込んで急落した。円相場が10月に入り1ドル=150円台をつけたことをきっかけに、日銀の介入観測から買い戻されて円高に振れたことも金の圧迫要因になり、先物は7月安値8661円に顔合せした。

 米10年債利回りは9月の米雇用統計で労働市場の堅調が示されたことを受け、4.89%と2007年以来の高水準をつけた。ただ、過熱感から米国債が買い戻されると利回り上昇は一服。一方、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが7日、イスラエルを奇襲攻撃したことを受けて金や債券が安全資産として買われた。攻撃の背景にはイスラエルとサウジアラビアの関係正常化の動きがあるとみられている。戦闘が続けば、金は再び上値を試す可能性が出てくる。

●中東情勢と米FRBの高金利維持が焦点

 ハマスがイスラエルを奇襲攻撃したことを受け、イスラエルは30万人強の予備役を招集した。また、米独英仏伊の首脳はハマスのイスラエル攻撃を非難する共同声明を発表し、イスラエルへの支持を表明した。米政府は現地に軍を派遣する計画はないとしたが、地域の抑止力強化のため空母「ジェラルド・R・フォード」を中心とした打撃群を地中海東部に派遣しており、今後の戦闘の行方を確認したい。また、イスラエルとサウジアラビアの関係正常化に向けた外交努力は促進されるとしており、協議の行方も確認したい。

 一方、イランは今回の攻撃への関与を否定しているが、イエメンの親イラン武装組織フーシ派とイラクの民兵組織の幹部は米国が介入した場合には米国も標的にすると表明しており、他の組織の動向も焦点である。

 9月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数が33万6000人増となり、8月分は18万7000人増から22万7000人増に上方修正された。事前予想の17万人増を上回り、労働市場の堅調が示された。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率が上昇する場面も見られたが、米金融当局者は米国債の利回り上昇が景気を抑制すると指摘し、慎重姿勢を示しており、年内の金利据え置きの見方が強い。今週は9月の米消費者物価指数(CPI)の発表があり、インフレに対する見方を確認したい。

 また、米下院議長の後任の行方も当面の焦点である。米下院が共和党保守強硬派の議員が提出したマッカーシー議長の解任動議を可決したことを受け、格付け会社フィッチは予算を巡る与野党の攻防で年内に政府機関が一部閉鎖される可能性があるとした。つなぎ予算は11月17日までの暫定予算であり、ウクライナ支援は盛り込まれなかった。中東情勢の緊迫化もあり、イスラエル支援の行方も確認したい。

●金ETFからの投資資金流出が続く

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、10月10日に861.51トン(8月末890.10トン)に減少し、2019年8月以来の低水準となった。米国債の利回り上昇を受けて投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは10月3日に9万1226枚まで縮小し、昨年11月以来の低水準となった。ピークとなった9月19日の13万5163枚から手じまい売り、新規売りが出て買い越しを縮小した。ただ、当面は中東情勢の緊迫化を受けて買い戻しが進むとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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