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【特集】誤報による原油瞬間高が警戒感あらわに、サウジの先制的アプローチを意識 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●誤報をきっかけに意識された警戒感

 先週、石油輸出国機構(OPEC)プラスの舵取り役であるサウジアラビアが自主減産を来年末まで延長するとの報道をきっかけとして原油相場が瞬間的に急伸する場面があった。17日のニューヨーク時間外取引での出来事である。ロイター通信が以前に配信したヘッドラインを間違えて再送したことや、市場参加者の早とちりが背景だ。7月からサウジが開始した日量100万バレルの追加の自主減産が来年末まで続くと連想された。

 5月からOPECプラスの一部の産油国が協調して自主減産を開始しており、このなかでサウジは日量50万バレルの減産を実施している。この日量50万バレルと、日量100万バレルが混同されたことが値動きを増幅させたが、誤報を手がかりとした一時的な動意の高まりからすると、市場参加者はサウジの次の一手に意識を向けている可能性が高い。というよりも、7月から始まった日量100万バレルの自主減産がいつまで続くのか、誤報をきっかけに強く意識せざるを得なくなった。

●OPECプラスの“次の一手”は輸出削減か

 サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は事あるごとに積極的かつ先制的(proactive and pre-emptive)なアプローチに言及しており、最近の主要産油国の動きはこの言葉の通りである。以前であれば、OPECプラスは生産量を調整した後、需給バランスの変化をじっと見定めることが多かったが、最近はひと息つくまもなく、次の相場支援策を繰り出している。これまでの減産が相場を強く押し上げていないにしても、次を意識しなければならない。

 今月、ロシアが「8月に日量50万バレルの輸出を削減する」と発表したことによる瞬間的な値動きは限られた。ただ、輸出調整は減産からさらに踏み込んだ一手であり、OPECプラスの次の方向性を示唆していると考えるのが妥当である。現行の生産量の調整で目的を達成できなければ、全体的な輸出削減協議が始まるだろう。積極的かつ先制的なアプローチからすれば、当然の成り行きではないか。

 今年前半のブレント原油やニューヨーク市場のウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物の展開を決めたのは、米追加利上げ観測と金利負担の拡大による景気悪化懸念である。主要産油国は今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果にも注目しているに違いない。タカ派的な米金融政策の継続により原油相場が再び圧迫されるようならば、次の動きを想定するのが妥当である。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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