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【特集】夏季休暇シーズンの原油相場は強含み、米製油所稼働率の低下が続くと供給不足へ<コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●石油は夏場を迎え需要期に

 7月相場入りし、ブレント原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)が強含んでいる。一年間で最も石油需要が盛り上がる北半球の夏場を迎えたことが背景。昨年末から海外原油はレンジ相場を継続しており、7月に入ってもレンジ相場であるが、雰囲気はやや強気に傾いている印象だ。

 米エネルギー情報局(EIA)が発表した週報でガソリン需要の4週間移動平均は日量936万8000バレルまで増加し、昨年の最高水準をすでに上回っている。週報の石油需要は確報値である月次の統計と比較して弱めに出る傾向にあり、実際はもっと強い可能性がある。電気自動車が普及し、石油需要が抑制されているとはいえ、月次の需要が減退する兆候はほとんど見られない。

 ロシアがウクライナへ侵攻した後、ロシアの石油産業との関係性を断ち切る国が多いなかで、米国の石油輸出は上向きである。米国は世界最大の石油消費国であると同時に、世界最大規模の輸出国でもある。EIA週報で石油製品輸出の4週間移動平均は620万4000バレル、原油は日量426万3000バレルと拡大傾向にある。米国は世界最大の国内需要だけでなく、世界の石油市場も支えなければならない。

●石油製品の在庫にひっ迫感、だが供給は絞られている

 需要が旺盛となる時期に入っている一方で、米国の製油所稼働率は先月末にかけて4週間連続で低下し、91.1%となった。EIAによると、ガソリン在庫やディーゼル燃料を含んだ中間留分の製品在庫は過去5年のレンジ下限付近で推移しており、在庫が十分に確保されているわけではない。むしろ不足を警戒するのが妥当だろうが、米石油企業は増産を見送っている。

 昨年と比較して石油企業の粗利である精製マージンがやや低水準であることが生産を手控えさせている背景かもしれない。ただ、321クラック・スプレッドは1バレルあたり35ドル付近と、精製マージンは昨年よりは抑制されているとはいえ、増産を促すには十分な水準で推移している。需要が上向く時期に入っており、EIA週報では実際に需要が拡大しているにも関わらず、製品の増産が見送られている理由は不明である。

 需要期の本格化に向けて供給が絞られている背景ははっきりしないものの、夏場の石油消費は盛り上がっていく可能性が高い。製品の生産量が拡大しないことには供給ひっ迫感が強まるだろう。石油取引の中心である原油ではなく、脇役であるガソリンなど石油製品の値動きに目を向ける場面かもしれない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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