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【特集】プラチナは軟調、景気減速や各国中銀の利上げを警戒 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は6月、中国の輸出減少に加え、オーストラリア準備銀行やカナダ中銀の予想外の利上げを受けて戻り売り圧力が強まった。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが決定されたが、金利見通し(ドット・プロット)で年内あと2回の利上げが示唆された。5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比4.0%上昇と前月の4.9%上昇から伸びが大幅に鈍化し、2021年3月以来の低水準となった。ただ、コア指数は同5.3%上昇(前月5.5%上昇)と高水準を維持した。その後は欧州中央銀行(ECB)の追加利上げ、イングランド銀行が予想外の大幅利上げを決定するなど、複数の中銀の利上げが続いた。インフレ高止まりで各国中銀の利上げの見方が強く、景気減速懸念から白金は軟調に推移し、昨年10月以来の安値886ドル台をつけた。

 ECBの利上げを受けて6月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は43.4と節目となる50を大幅に下回った。7月に入ると、米国債市場で2年債と10年債の利回りの逆イールドが1981年以来の水準に拡大し、景気後退(リセッション)に対する懸念が高まった。6月の米ISM製造業景気指数は46.0と節目となる50を8ヵ月連続で下回り、2020年5月以来の低水準となった。25~26日の米FOMCでは0.25%ポイントの利上げが見込まれており、景気減速懸念が高まると、プラチナは軟調に推移するとみられる。

●中国の景気刺激策に対する期待感は下支え要因

 5月の中国の貿易統計では輸出が前年比7.5%減と前月の8.5%増から急減し、事前予想の0.4%減も下回った。中国の景気回復の遅れに対する懸念が強いなか、世界経済の減速が意識された。第1四半期のユーロ圏の域内総生産(GDP)確報値は前期比0.1%減少と2四半期連続のマイナス成長となり、リセッション入りした。

 また、5月の中国の小売売上高や鉱工業生産の伸びが鈍化し、景気回復の遅れに対する懸念が強い。小売売上高は前年比12.7%増と前月の18.4%増、鉱工業生産は同3.5%増と前月の4.5%増から伸びが鈍化した。中国人民銀行は短期資金供給などの金利や市中銀行への資金供給手段である常設貸出ファシリティー(SLF)の金利、貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)を引き下げ、景気回復を支援する姿勢を示した。

 一方、6月の中国の財新製造業購買担当者景況指数(PMI)が50.5と前月の50.9から低下すると、景気刺激策に対する期待感が高まった。李強首相は、これまで内需拡大に向けてより効果的な政策を打ち出すと述べていた。今月の共産党政治局の会議で刺激策がまとまるとの見方が出ており、内容を確認したい。

●プラチナETF残高は小幅減少

 プラチナETF(上場投信)残高は7月3日の米国で30.99トン(5月末30.71トン)、29日の英国で13.14トン(同13.45トン)、30日の南アフリカで13.31トン(同13.50トン)となった。米国で安値拾いの買いが入る一方、英国と南アで手じまい売りが出た。合計で0.22トン減少した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月27日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万2160枚(前週1万9472枚)に縮小した。4月25日に1月10日以来の高水準となる2万9617枚まで拡大したのち、手じまい売り、新規売りが出た。6月に入ってからの新規売りが目立ち、弱材料が一巡すると、買い戻し主導で上昇する可能性が出てくる。ただ利上げによる景気減速の見方に変わりがなければ戻りは売られやすい。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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