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【特集】国内金は最高値更新が続く、日米金利差の拡大観測を受け円安の追い風吹く <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
  国内金は6月、日銀が金融緩和の維持を決定し、円安に振れたことを受けて一段高となり、現物(店頭小売価格、税込)が9876円、先物(JPX金先限)が8915円と、ともに最高値を更新した。日銀はインフレ目標2%を定めているが、植田総裁は会合後の記者会見で、「基調的なインフレ率がどうなるかが重要だ」と述べた。一方、13~14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準を5.00~5.25%に据え置くことが決定されたが、金利見通し(ドット・プロット)で年内あと2回の利上げが示唆された。

 日米の金利差拡大見通しを受け、円安が進んだ。円相場は昨年11月以来となる1ドル=142円台前半まで円安に振れ、国内金価格を押し上げる要因になった。7月27~28日の日銀会合で展望リポートが議論される予定であり、物価見通しが上方修正されるかどうかが焦点である。また、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)修正の判断については、次の会合までに得られたデータをもとに政策を決めるとしており、サプライズになる可能性もある。

 円安が続くかどうかが当面の焦点であるが、鈴木財務相のけん制発言も出ており、円安が進行すると介入の可能性も出てくる。

●現物相場は米デフォルト回避などで2000ドル割れ

 金の現物相場は5月、米国の債務上限問題に対する楽観的な見方を受けて2000ドルの節目を割り込んだ。米政府と議会指導部の協議は期限ぎりぎりまで続いたが、バイデン米大統領が6月3日に債務上限法案に署名して成立し、債務不履行(デフォルト)は回避された。米FOMCで年内の利上げ見通しが示されたことを受けて3月17日以来の安値1927ドル台をつけたが、欧州中央銀行(ECB)の利上げをきっかけにドル安に振れると、下げ一服となった。

 米FOMCでは年内あと2回の利上げが示唆されたが、CMEのフェドウォッチでは、7月に利上げを決定したのち、金利を維持するとの見通しとなっている。一方、15日のECB理事会で、政策金利を0.25%ポイント引き上げ、中銀預金金利を3.50%とすることを決定した。ユーロ圏の域内総生産(GDP)が2四半期連続で減少し、景気後退(リセッション)入りしたが、ラガルドECB総裁はインフレ抑制のため、7月も利上げを継続する可能性が極めて高いとの見方を示した。ECBの利上げ見通しを受けてユーロが最も強く、対円では1ユーロ=155円台前半と15年ぶりの高値をちけた。

 金の現物相場はテクニカル面で悪化したが、ニューヨーク市場で投資家は強気見通しを維持している。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ局面の終わりが近いとの見方が支援要因である。ただ、トルコやロシアの金準備が売却され、中国の実需筋の買い意欲が後退していることが上値を抑える要因である。トルコでは経常赤字解消、ロシアでは財政赤字補てんのため、金準備が売却された。中国では輸出減少や小売売上高の伸び鈍化で景気回復の遅れが懸念され、実需筋の買い意欲が後退した。一方、米国の商業用不動産のリスクが表面化すれば、地銀に対する信用不安が再燃し金は2000ドル台を回復する可能性があるが、現物が出てくるようなら上値は抑えられるとみられる。

●金ETFの押し目買いと手じまい売り

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、6月16日に934.03トン(4月末926.28トン)に増加した。2000ドル割れで押し目買いが入り、943.89トンまで増加したが、米国のデフォルトが回避されると、手じまい売りが出た。欧米の経済指標で金融政策の見通しを確認したい。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは昨年5月3日以来の高水準となる5月9日の19万5814枚をピークとして縮小し、6月13日は16万0209枚となった。テクニカル面で悪化し、手じまい売りが進んだ。ただ強気の見方も残り、安値では買い戻す動きも出た。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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