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【特集】需要本格化を控え米製油所の稼働率が急上昇、外需支援が押し上げる <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●ドライブシーズン最盛期前にPADD3の稼働率がひっ迫

 先週、米エネルギー情報局(EIA)が発表した週報で、製油所稼働率は95.8%まで上昇し、今年最高水準を更新した。米国がドライブシーズン入りした直後に夏場の需要最盛期に近い水準に達している。米国の石油生産の中心地である米メキシコ湾岸(PADD3)の稼働率は98.8%まで上昇し、この地域の増産余力は早々と乏しくなっている。米国の精油能力は全体で日量1803万1000バレルであり、テキサス州が含まれるPADD3はこの約半分の967万7000バレルを占めている。

 一方、PADD3を除くPADD1~5の製油所稼働率は91.3~93.1%で推移しており、生産能力にはまだ余裕がある。大雑把にいえば、西海岸や東海岸など、人口が集中する地域の製油所稼働率は上向きつつあるものの、需要はそれほど高まっていないといえる。米石油製品需要の4週間移動平均が足元で日量1973万バレルまで減少していることが示すように、ドライブシーズンの石油需要の高まりはまだ確認できない。

●PADD3は海外需要で手一杯になりかけている

 EIAが発表する週報、月報が示すように米国の製油所稼働率を押し上げているのは内需ではなく、外需である。3月の米石油製品輸出は日量646万3000バレルまで増加し、月次で過去最高水準を更新した。週報で製品輸出の推移を見る限り、3月以降も高水準での推移が続いており、海外需要を支えるために米国内の製品在庫が圧迫され、輸出基地がある米メキシコ湾岸(PADD3)の製油所稼働率が上向いている。

 PADD3の稼働率は100%付近までさらに上昇し、高止まりする可能性が高い。米国はロシア依存から脱した欧州など西側の需要を支える必要があり、需要が本格化する夏場に向けて輸出がさらに強含んでいくのではないか。今年のEIA週報の内容は例年とは異なるだろう。

 季節的に米国内の需要が上振れすると、米製油所稼働率は一段と高まっていくが、昨年までとは違うのは、上述したようにPADD3が外需を支援するためすでに手一杯になりかけているということである。米国の西海岸、東海岸、中西部などで需給がタイト化した場合、米石油生産の心臓部であるメキシコ湾岸からの供給はあまり頼りにできないかもしれない。

 米雇用統計を見る限り、雇用は引き続き堅調である。金利高によって家計が圧迫されているとはいえ、昨年と比較してガソリン小売価格は安く、今年のドライブシーズンはそれなりに需要が上振れするのではないか。そもそも、昨年はウクライナ紛争が始まったことで米ガソリン小売価格が高騰したとはいえ、需要の減退はみられなかった。季節的な需要拡大が低迷する原油相場を押し上げるのか、世界最大の石油消費国である米国の需給を注視していく必要がある。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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