【特集】OPECプラス控えて主張対立、苛立つサウジと冷静なロシア<コモディティ特集>

今週末は石油輸出国機構(OPEC)プラスの会合が行われる。昨年から始まった日量200万バレルの減産に加えて、今年5月からは一部の産油国が日量166万バレル規模の自主減産を開始しており、年末まで同366万バレル規模の生産量の削減が続く予定だが、相場が低迷していることから一部の産油国が不満をあらわにしている。
この一部の産油国とは、サウジアラビアである。先週、同国のアブドルアジズ・エネルギー相は売り方に警告を発し、自主減産が発表された4月に「彼ら(売り方)は痛い目にあった」、「私は気をつけろとだけ言っておきたい」と述べた。おそらくロンドン市場のブレント原油や、ニューヨーク市場のウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)の水準に満足できていないようだ。
●割安なロシア産原油が相場低迷の一因に
自主減産が発表された後、WTI先物は4月に一時83ドル半ばまで上昇したが、5月に入って63ドル半ばまで急落し2021年12月以来の安値を更新した。サウジが理想とする水準で相場が安定しないことに苛立ちを隠せず、今回の発言につながったのではないか。自主減産による需給バランスの変化を十分に確認することなく、サウジが売り方に警告したことからすると、かなり神経質になっている印象である。
一方、ロシアのノバク副首相は主要産油国が合意を大幅に修正する可能性は低いとし、需給バランスの維持を目指すと述べた。ノバク副首相とアブドルアジズ・エネルギー相の相場水準に対する温度差は明らかで、サウジにとってロシアは冷静すぎるのではないか。ウクライナ紛争を継続しているロシアにとって石油収入は生命線であり、自身の言葉が相場に与える影響を考慮すべきだったと思われる。そもそも石油価格が低迷しているのは、割安な水準でロシア産の原油や製品が供給されていることが一因である。相場を押し上げようとするサウジにとってロシアは重荷だ。
●最終的に我を通すサウジ、甘くみるべきではない警告
ただ、OPECプラスが始動してから、ロシアとサウジの仲違いは珍しくない。相場が低迷、変動している場面では対立することが多いように思われる。新型コロナが流行し始めた2020年、減産をめぐり両国は牙を向きあった。極端な言い方をすると、両国の意見衝突はいつものことであり、2020年のような石油市場を巡るロシアとサウジの経済戦争が始まらなければ、対立としては些細なものである。それぞれにとっての国益をアブドルアジズ・エネルギー相とノバク副首相が代弁しているだけであり、意見が異なるのは当たり前である。
これまで意見がぶつかりあった際に、OPECプラスは紆余曲折を経て来たが、最終的に我を通すのはサウジアラビアである。譲歩するのはロシアである。つまり、サウジの発言以外は雑音であり、ロシアなどその他の産油国の主張は重視する必要が乏しい。苛立ちを隠そうともしないサウジの警告を甘く見ないほうがよさそうだ。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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