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【市況】国内株式市場見通し:年明け以降の楽観ムードは修正か

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

 

■各国中銀の利上げ停止期待高まるも円高が重し

今週の日経平均は週間で126.9円高(+0.46%)と4週続伸。週足のローソク足は3週連続で陽線を形成し、13週、52週に続き、26週移動平均線の上方に復帰した。

日経平均は週を通してもみ合いが続いた。週後半に集中する重要イベントを前に、週初から日経平均は心理的な節目の27500円水準で膠着感の強い展開が続いた。週後半、米連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り0.25ポイントへの利上げ幅の縮小が決まり、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が会見でディスインフレに言及するなど、タカ派色が後退したことを好感し、米長期金利が大幅に低下する中、米ハイテク株が急伸。しかし、為替の円高が重しとなり、日経平均はFOMC後も上値の重い展開が継続。週末、欧州中央銀行(ECB)や英イングランド銀行が0.5ポイントの利上げを決定しつつも、利上げの停止が近づいていることを示唆したことが好感され、日経平均はハイテク中心に買いが先行、一時27600円台まで上昇したが、伸び悩み、結局27500円水準で週を終えた。

■米雇用統計で利上げ停止期待は剥落

来週の東京株式市場はもみ合いか。米1月雇用統計では平均時給の伸びは予想通り鈍化したものの、雇用者数の伸びが一過性要因もあるだろうが、大幅な上振れとなり、失業率の予想外の低下と相まって労働市場の逼迫が再確認された。今週高まった利上げ停止期待は一旦剥落するだろう。一方、為替の円安進行が下支えする形で、日本株は相対的に底堅く推移する可能性もある。

来週は国内企業の決算発表が集中する。個別物色が中心となる中、指数の方向感は出づらいだろう。一方、週末10日には日本銀行の正副総裁の後任人事について、政府が国会に提示する方向だ。ドル円は130円を挟んだ攻防が続いているが、新体制を巡る思惑によって再び円高が進展した場合には、製造業を中心に株価の重しになりそうだ。

他方、米国では、7日にバイデン米大統領が連邦議会下院で一般教書演説を行う予定だ。再選を目指して出馬意欲を表明している2024年の大統領選に向け、幅広い分野から立法目標などを説明する機会となり、軍事防衛や電気自動車(EV)、再生可能エネルギーなどのテーマ銘柄にスポットライトが当たる可能性があろう。

全体相場については、年明け以降、多くの市場関係者の予想に反して株高が続いてきたが、この勢いがいったん小休止する可能性に留意したい。昨年末にかけてのタックスロス・セリング、節税対策売りが一巡したことで、年明け以降は昨年に売られすぎた銘柄を中心にリバウンドの動きが活発化した。こうした需給要因だけでなく、中国での経済再開や欧州でのエネルギー危機沈静化、米国でのインフレピークアウトとソフトランディング(経済の軟着陸)期待など、外部環境に対する認識が改善したことも追い風になった。

しかし、今週末の米雇用統計で楽観ムードは修正を迫られるだろう。また、2月に月替わりしたことで売られすぎた銘柄の買い戻しといったリバランスも一巡してきた可能性がある。さらに、日本取引所グループ(JPX)による投資部門別売買動向によると、長期目線で売買する傾向のある年金基金の動向を反映する信託銀行は、昨年11月14日の週から今年1月23日の週までの間、現物株を連続で売り越し、金額は約1兆1800億円にも上った。他方、海外投資家は、日銀がサプライズ政策修正を決めた12月半ば以降は先物を中心に大幅な売り越しを続けてきたが、1月16日の週からの大量買い越しにより、それまでの売り越しをほぼ買い戻した。つまり、年明け以降の株高は国内勢の売りを吸収して余りある海外勢の買い越しが要因だったといえる。

ただ、上述したように、海外勢の1月16日以降の先物の買い越し幅は、すでに12月半ば以降の売り越し幅にほぼ達しており、買い戻し余地は解消済みとも考えられる。これまでに発表済みの日米の主要企業決算の結果を見ても、強弱まちまちか、やや悪い内容のものの方が多い印象で、ここから一段と買い持ちを増やしていこうとする程の裏付けには乏しい。

年明け以降の世界的な株式市場の上昇は、一株当たり利益(EPS)の低下を上回る株価収益率(PER)の上昇が要因だった。しかし、米国の10年債利回りから期待インフレ率の指標とされるブレークイーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた米10年実質金利は今週一時1.1-1.2%程度にまで低下。すでに前回の金融引き締め局面である2018年10月に付けた直近ピークの1.1%程度まで一時低下したことで、ここからの一段の実質金利の低下と株価バリュエーションの上昇は期待しにくい。

米10年実質金利は2013-2017年までの間は0.5%前後で推移しており、仮にこの水準まで実質金利が低下する余地があるとしても、BEIの上昇が期待できない中では、米10年債利回りが3%を大幅に下回る水準まで低下しなければ説明できない。しかし、予想を大幅に上回る1月の米雇用統計と米ISM非製造業景気指数を受け、そうした展開は想定し難い。そもそも、そこまでの米長期金利の低下は、深刻な景気後退を意味し、その場合には、実質金利の低下によるPER上昇よりも景気後退を通じたEPS低下による株価下落が先にやってくるだろう。いずれにせよ、目先は利上げ停止期待の剥落により、株価の修正を迫られそうだ。

■景気ウォッチャー調査、日銀新体制人事など

なお、来週は7日に12月家計調査、12月景気動向指数、米12月貿易収支、バイデン米大統領の一般教書演説、8日に1月景気ウォッチャー調査、10日に2月限オプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)、1月企業物価指数、日銀正副総裁後任人事の国会提示、などが予定されている。

《FA》

 提供:フィスコ

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