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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (30)株式の海図「エリオット波動」、波の数で位置を知ろう

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆「エリオット波動」の基本形を覚えて投資判断の精度を上げる

 まずはエリオット波動の基本の形を見ておきましょう(図1)。図1をご覧いただくとわかりますが、株価は上昇を始めると、赤字の「1波」~「5波」の5つの大きな波を描きながらゆっくりと上昇して天井を打ちます。このジグザグを描きながらも株価を押し上げていく「1波」~「5波」が全体で「上昇波」(=強気相場)になります。

 そして、天井を売った後は青字の「A波」~「C波」の3つの波によって下落していきます。この株価が下降していく際の「A波」~「C波」が全体で「下降波」(=弱気相場)になります。

 エリオット波動は上記のように、8波で一つのサイクルを形成します。このエリオット波動の形を覚えておくと、株価がまだまだ上昇するのか、それとも下落するのかを考える際に目安にすることができるのです。ですから、自分が買いを検討している株や、保有している株があるのであれば、まずはエリオット波動の基本の形と照らし合わせて、どの辺りの段階にあるのかをみることで、いま買えばよいのか、それとも売ればよいのかを判断できるようになります。

図1 エリオット波動の基本形
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 では、ここでエリオット波動の基本の形を順番に見ていきましょう。株価の一つのサイクルは前述したように上昇波と、下降波によって構成されています。まずは上昇波から見ていきましょう。「上昇波」は基本的に、「1波」で上昇して「2波」で下落、「3波」で上昇して「4波」で下落、「5波」で天井に向けて上昇します。強気相場の上昇は、基本的にはこの5波で完成します。

 また、この5つの波の中身を細かく見ていくと、上昇していく「1波」「3波」「5波」は5波動、途中で挟む下げの「2波」「4波」は3波動でそれぞれ形成されていることがわかります。このように小さな構造の中に、大きな構造と同じパターンが表れる現象をフラクタルと呼びますが、エリオット波動論の根幹にはまさにフラクタルの構造があるのです。

 さて、株価が上昇する様子を見て、「あー、こんなに上昇してしまった。あのとき買えばよかった……。でも、まだ上がるのなら、いま買うしかない!」と思い切って買ったら、天井を打って下落してしまった、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

 エリオット波動の形を見ると、このように株価が上昇していく時でも、「2波」と「4波」の2回の押し目があります(その下落の大きさは地合いや業績などファンダメンタルズによって異なります)。最後の「5波」に入る前であれば、今すぐ買いたい気持ちをぐっと抑えて待つことで、「2波」と「4波」の押し目で買える可能性が出てくるのです。

 図を見ると、天井に向かう過程で押し目を入れる波(「2波」「4波」)と、サイクルの終わりに向けて下げていく過程で表れる下げ方向の波(「A波」「C波」)があります。株価の押し目を狙う場合、この2つの波の捉え方を間違うと大きな損失につながる可能性があります。

 では、どのように見分ければよいのでしょうか。株価が上昇していく時は上昇波動になりますので、図では「1波」と「3波」、そして「5波」が上昇を推進する波動になります。これらの波は前述したように、基本的により小さな5つの波動で構成されています。つまり、上昇を構成する波の構造をより細かく見た時にそれが5つの波動でつくられているのならば、上昇波の「1波」「3波」「5波」のいずれかになります。

 前述したように、上昇していく時は上げ一辺倒ではなく、株価は「2波」と「4波」で下落しています。株価のトレンドと同じ方向を向いている波は勢いづきやすいこともあって5波動となりますが、「2波」と「4波」は上昇の勢いを落ち着かせるための波動ですから上昇トレンドとは反対方向の波になりますので、より短い3波動で構成されます。つまり、下げの波を構成する波動をカウントしてそれが3波動であれば、上昇時の調整の動きである「2波」「4波」であると考えることができます。

 このように、上昇している時の下落なのか、底へ向かう下げの流れを推し進める下落であるのかは、サイクルの頂点を挟んで図の左側の「上昇波」と、右側の「下降波」とでは波動の数が異なるので見分けることができます。「下降波」の中でも株価の下落を推し進める「A波」と「C波」は、先ほど説明したように株価のトレンドと同じ方向を向いている波のため勢いづきやすく5波動で構成されます。

 一方、前述したように上昇波の中でトレンドに逆らう調整の動きであった「2波」と「4波」は3波動で構成されていますので、同じ下げ方向の波でも、どちらの下落であるのかを波動をカウントすることで見分けることができるのです。

 また、下落する流れに逆らって上昇する「B波」は、下降トレンドに逆らう波ですので3波動となります。株価が上昇していく「上昇波」の「1波」「3波」「5波」の5波動とは構成が異なりますので、こちらもどちらの上昇であるのかを見分けることができます。

 ところで、株を売買していると、上昇はのんびりしているけど、下落する時はドスンとあっという間だな、と体験的に感じている人も多いのではないでしょうか。

 株価が下落している時は、「どこまで下がるのだろう。あのとき売ればよかった……」と下がれば下がるほど不安に駆られますので、投資家は我先にと株を売り始めます。そして、それが下げを加速し、さらに不安に駆られる人が増えて、一段と速度を早めながら下落していくことになります。

 図1をご覧いただくとわかるように、株価が天井を打って底に向かっていくとき、トレンドの方向に逆らって上昇する波は、「B波」の1回だけです。下降が続く中での上昇ですので、これをリバウンド上昇と言いますが、多少なりとも損失を縮められる売りのチャンスはこの1回しかありません。そのため、リバウンド上昇であるのに「やっぱり上がってきた!まだまだ上がる」などと欲張って売らずにいると、結局、株価はまた下がり始めて、底打ちへと向かっていくのです。

 ここではファーストリテイリング <9983> [東証P]のチャートを見ていきましょう(図2)。なお、株探には波動がカウントされたチャートは用意されていませんので、エリオット波動は自分で波動を数えていくことになります。ただ、フラクタル構造を持つエリオット波動は細分化して見ていくこともできますが、大きな方向性が判断できればよいので、このように日足でざっくりと見るだけでも十分でしょう。

図2 ファーストリテイリング <9983> [東証P] 日足
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 一番左側から、株価は「1波」で7万2990円まで上昇した後、「2波」で押し目を形成して6万6780円で安値をつけます。その後は、再び「3波」で8万0670円まで上昇します。「4波」で7万8200円まで下落、そして「5波」で8万8230円まで上昇して天井を打ちます。その後、「A波」で7万9950円まで下落して、「B波」で8万6030円までリバウンド上昇し、「C波」で7万4250円まで下落しました。一つのサイクルの動きが完成したのかを、今後はこのように波動の数をカウントしながら確認していくことになります。

 株価がエリオット波動の中でどこに位置するのかを確認できれば、今が買いなのか、売りなのかを判断することがざっくりと分析できるようになります。つい欲に駆られて高値で飛びついてしまうことも少なくなるでしょうし、まだまだ上がりそうと判断を誤って売り時を逃すことも少なくなるかもしれません。売り時がわからないという人は意外と多いですが、それは欲に駆られている証でしかありません。株式投資では含み益はあくまで含み益、しっかりと利益を確定させて、着実に資産を右肩上がりで増やしていきましょう。

 


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