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【特集】プラチナはドル高で軟調、中国の輸入増加による現物逼迫が下支えに <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 プラチナ(白金)の現物相場は8月、約2カ月ぶりとなる高値974ドルを付けたのち、ドル高や景気減速懸念を受けて戻りを売られた。9月に入ると、欧州景気の後退などが懸念されて軟調に推移し、2020年7月以来の安値820ドルを付けた。

7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げペース減速の見方が示されたが、高インフレを受けて米金融当局者のタカ派姿勢が鮮明となり、為替相場はドル高に転じた。7月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%上昇と前月の9.1%からは鈍化したが、米金融当局者はインフレに対応するため、政策金利を4%まで引き上げる必要があるとし、タカ派姿勢を続けている。また、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がジャクソンホールの講演で、インフレが抑制されるまで金融引き締めが必要との見方を示しており、9月の米FOMCでも75ベーシスポイント(bp)利上げの確率が高まった。

一方、欧州中央銀行(ECB)当局者も大幅利上げの見方を示した。景気後退(リセッション)に陥ってもインフレを抑えるとしており、8日のECB理事会で75bp利上げが見込まれている。ロシア国営ガスプロムが2日、主要ガスタービンの油漏れを理由に、問題が解消されるまで「ノルドストリーム1」による欧州へのガス供給は再開されないと発表。これを受けて欧州ガス価格高騰への警戒感も再燃。こうしたなか、8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値は前年比9.1%上昇と前月の8.9%から加速し、過去最高を更新しており、欧州の高インフレは当面続くとみられている。

また、中国の複数の都市が新型コロナウイルス対策でロックダウン(都市封鎖)を再び導入し、景気の先行き懸念が強いこともプラチナの圧迫要因である。各国の景気減速懸念が続くと、プラチナは引き続き下値を試す可能性がある。ただ、上海プラチナの出来高が増加し、中国の輸入増加による現物市場の逼迫が指摘されていることは下支え要因となる。ニューヨーク市場で大口投機家が売り越しており、現物市場の逼迫が続くようだと、買い戻し主導でプラチナは上昇する可能性もある。

●供給過剰も、中国の輸入増加で現物市場が逼迫

 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)のプラチナ・クォータリーQ2によると、第2四半期のプラチナは11トンの供給過剰となり、今年の供給過剰予想は30トンに拡大した。総供給は前年比8%減の234トン、総需要は同7%減の203トンとしている。ただ、プラチナのリースレートは5月に10%まで上昇し、現物市場が逼迫している。この背景には、中国の輸入好調がある。ポール・ウィルソンCEOは「中国のこうした追加需要は私たちが公表する需要データには含まれていない。投機または他需要セグメントの内訳はまだ明らかになっていないが、今後12カ月間でもっと明確になると予想する」と述べている。

●NYプラチナで大口投機家の売り越しが続く

 プラチナETF(上場投信)残高は2日の米国で34.44トン(7月末35.05トン)、英国で14.18トン(同14.73トン)、南アフリカで10.44トン(同10.49トン)となった。景気後退懸念や各国中銀の利上げ見通し、中国のロックダウン(都市封鎖)などを受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月30日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の売り越しは5378枚(前週576枚)に拡大した。8月16日に2940枚買い越しに転じる場面も見られたが、景気後退懸念などを背景に戻りを売られた格好だ。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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