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【特集】日経平均2万8000円攻防、海外投資家買い戻しと物色トレンドを探る <株探トップ特集>

7月以降の相場反騰の牽引役として、海外投資家の買い戻しの動きが注目されている。また、アクティビストを中心に日本の割安な個別株を物色する動きが目立っている。

―米長期金利と米ナスダックを注視、個別割安株などに買い資金流入も―

 9日の日経平均株価は前日比249円安の2万7999円となった。ハイテク株の下落に加え、前日まで4日続伸していただけに利益確定売りの動きも強まった。日経平均は5日に2万8000円台を回復したが、依然として米国でのインフレ懸念や業績不透明感は強く、再び同ラインの攻防となっている。とはいえ、夏相場に入るとともに相場は堅調に推移。ここまでの日経平均の上昇の背景として海外投資家の買い戻しが指摘されている。また、アクティビスト(物言う株主)を含むファンドは個別の割安株に買い姿勢をみせている。今後の海外投資家動向と物色トレンドを探った。

●SBGと東エレクの急落で波乱、8日には約4ヵ月半ぶり高値も

 この日の日経平均は3日ぶりに2万8000円を割り込んだ。8日に発表したソフトバンクグループ <9984> [東証P]の4~6月期の連結決算は、最終損益が3兆1627億円の赤字(前年同期は7615億円の黒字)となった。また、東京エレクトロン <8035> [東証P]の4~6月期の連結純利益が前年同期比12%減の881億円と減益となったことが響いた。SBGと東エレクという2銘柄だけで、この日の日経平均を約230円押し下げた。また、10日に米7月消費者物価指数(CPI)の発表が予定されていることも警戒感を呼んだ。「足もとでは利益確定売りが出やすい状況。直近の上昇ピッチは速かっただけに、しばらくは神経質な値動きが続きそうだ」(市場関係者)との声が出ている。

 この日は調整色を濃くしたものの日経平均は7月に5%超の上昇を記録し、今月8日には終値ベースで3月下旬以来、約4ヵ月半ぶりの高値をつけている。この上昇を演出したのは「主に海外投資家の買い戻しの動き」(同)とみる声が多い。

●7月は海外勢が先物ベースで1兆円超買い越し、見直し買い継続に期待

 東京証券取引所が発表する主体別売買動向では、国内勢での買い主体となっているのは事業法人で年初から2兆円超の買い越しを記録している。事業法人による積極的な自社株買いが東京市場を支えていることが分かる。また、東京市場の売買代金の約7割を占め、全体相場の方向性を決定づけているのが海外投資家だ。その海外投資家は、現物では年初から日本株を2兆円超売り越しているものの、先物ベースでは6月は約1500億円、7月は1兆5000億円強と買い姿勢を強めている。この売り方の買い戻しが、東京市場の反発を演出したとみられている。

 特に、7月以降は米長期金利低下を背景にナスダック指数が反発し、これと連動する格好で東京市場に買い戻しが入った様子だ。このため、日経平均への寄与度の大きい東エレクやSBGのほか、アドバンテスト <6857> [東証P]やソニーグループ <6758> [東証P]といったハイテク株の動向が全体相場を左右している。また、海外投資家の動向に対して「そろそろ買い戻しも一巡する時期」とみる声がある一方で、「米国の長期金利が秋以降に低下基調を強めれば、米国市場は更なる反発基調となり、日本株に海外勢からの一段の見直し買いが入ることも見込める」(アナリスト)との見方もある。

●アクティビストの攻勢目立つ、トレンドの大株主に米有力ファンド浮上

 依然として相場の先行きには強弱観が対立しているが、ファンドを中心に個別銘柄に対しては積極攻勢をかける動きが目立つ。買い姿勢を強める個別銘柄は全体相場とは別に、強含みの動きもできるだけに注目度は高い。例えば、アクティビストとして知られる英のシルチェスター・インターナショナル・インベスターズは飯田グループホールディングス <3291> [東証P]やメディパルホールディングス <7459> [東証P]、アルフレッサ ホールディングス <2784> [東証P]、サワイグループホールディングス <4887> [東証P]、DOWAホールディングス <5714> [東証P]、フジ・メディア・ホールディングス <4676> [東証P]などを買っている。また、セブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]の大株主となったことでも話題となった米アクティビストのバリューアクト・キャピタルは、トレンドマイクロ <4704> [東証P]の8.73%の株式を保有する大株主となったことが9日に判明し、株価は急騰した。

●ウェルスナビや昭電線HD、シマノ、Enjinなど外国人買いも

 旧村上ファンド出身者が設立し、シンガポールを本拠とする「物言う株主」であるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントは、近畿車輛 <7122> [東証S]やオリエンタル白石 <1786> [東証P]、不動テトラ <1813> [東証P]、川崎汽船 <9107> [東証P]、ライフネット生命保険 <7157> [東証G]、サンケン電気 <6707> [東証P]、UACJ <5741> [東証P]などの大株主となっている。

 公募型のファンドでは、JPモルガン・アセット・マネジメントは伊藤忠商事 <8001> [東証P]やミルボン <4919> [東証P]、ウェルスナビ <7342> [東証G]、昭和電線ホールディングス <5805> [東証P]など。ブラックロック・ジャパンはリクルートホールディングス <6098> [東証P]や島津製作所 <7701> [東証P]、シマノ <7309> [東証P]、ENEOSホールディングス <5020> [東証P]など。フィデリティ投信は、Enjin <7370> [東証G]やマネジメントソリューションズ <7033> [東証P]などを買っている。市場には「日本株は連結PERなどの面から依然割安感は強い」(同)との声も強まるなか、海外投資家は今後、割安な個別銘柄買いから一段と物色の裾野を広げてくるかが関心を集めている。

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