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【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─超タカ派発言はコミュニケーション手段?

経済評論家 杉村富生

「超タカ派発言はコミュニケーション手段?」

●逆に、長期金利、VIX指数は低下気味!

 FRB(米連邦準備制度理事会)要人の超タカ派的なコメントが相次いでいる。シカゴ連銀のエバンス総裁、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁などがそうだ。彼らは異口同音に、「インフレ制圧は道半ば。利上げの手を緩めることはない」と。

 特に、エバンス総裁は政策金利の目標を「3.75~4.00%」に引き上げた。これまでの4回(3月、5月、6月、7月)の利上げは計2.25%(225ベーシスポイント)だ。上限4.00%とすると、あと1.75%の利上げが必要になる。9月、11月、12月の利上げ幅に影響を与え、来年早々の利下げ期待を一蹴した格好である。

 しかし、逆に10年物国債利回りは2.696%(つい数カ月前には3.49%まで上昇)に低下、VIX(恐怖)指数は21ポイントと低位安定だ。これはどうしたことか。原油(WTI)価格は1バレル=87~88ドルに値下がりしている。これは景気後退の兆し? いや、それはないだろう。

 パウエルFRB議長はFRB高官に同じことを語らせ、マーケットを牽制したり、見方を変えさせるコミュニケーション手段が得意だ。今回の行動はそれだと思う。したがって、株式市場は冷静だ。実際、金利上昇に弱いとされるナスダック市場は堅調(ナスダック指数は戻り高値を更新中)じゃないか。

 OPECプラスはとりあえず、アメリカ(バイデン大統領)に配慮、9月に1日10万バレルの増産を決めた。ペロシ下院議長の訪台は82歳と高齢、かつ中間選挙(11月)後には退任の予定の人物だ。政治的な意味合いはあまりないと思う。中国の軍事演習もまた、儀式的なものだろう。この局面において、地政学上のリスクうんぬんは過剰反応と判断する。

●株式投資は利回りに始まり、利回りに終わる!

 一方、日本の株式市場はいまひとつはっきりしない。夏枯れ商状である。まして、投資家の多くがサマーバカンス入りだ。それに、お盆休みが控えている。高校野球が始まった(6日~)。新型コロナウイルスの感染拡大は収束しそうにない。ただ、個別物色機運は極めて旺盛である。

 物色面はどうか。やはり、好業績、高配当の日本郵船 <9101> [東証P]、商船三井 <9104> [東証P]、川崎汽船 <9107> [東証P]が強い。明治海運 <9115> [東証S]、玉井商船 <9127> [東証S]なども堅調だ。日本郵船、商船三井の配当利回りは13%もある。古来、株式投資は利回りに始まり、利回りに終わる、という。

 中・小型株ではANYCOLOR <5032> [東証G]、M&A総合研究所 <9552> [東証G]、タカトリ <6338> [東証S]の動きが良い。値動きの荒さが難点だが、うまく立ち回ると、ディーリングが可能だ。大商いを演じている日本ビジネスシステムズ <5036> [東証S]は絶好の押し目を形成している。

 なお、今期業績が史上最高決算の見通しで、配当利回りが4~5%と高い銘柄(値上がりと配当の二兔が追える)には日本特殊陶業 <5334> [東証P]、東京精 <7729> [東証P]、三井松島ホールディングス <1518> [東証P]、東テク <9960> [東証P]、神鋼商事 <8075> [東証P]などがある。

 サークレイス <5029> [東証G]は4月15日に2600円の高値がある。時価は1200円絡みだ。米セールスフォース<CRM>のコンサル事業を柱とする。自社開発の運用支援が強み。筆頭株主はパソナグループ <2168> [東証P]、発行済株式数の42.9%を保有している。足元の業績は好調だ。23年3月期は増収増益を見込む。

2022年8月5日 記

株探ニュース

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