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【市況】S&P500 月例レポート ― 困難増す市場環境、投資家に求められる手腕 (2) ―


●主なポイント

 ○5月に入っても株式市場の下落基調は続き、市場の下落率は弱気相場と定義される20%の下落に迫りました。しかし、その後、最終週に入って株価は力強く反発しました。インフレにピークアウトの兆候が見られたことから、予想以上に早く消費行動が持ち直してくることに投資家が関心を向けるようになって買いが入った結果、5月の市場の騰落率はプラスとなりました(そして、弱気相場入りを回避しました)。

  ⇒4月に8.80%下落した株式市場は、5月は0.01%上昇しました。また、7週連続で前週末比で株価が下落しました。

  ⇒5月20日までの市場の下落の根底には、物価上昇により消費者が支出ペースを鈍化させていることを示す小売業者のデータと、米連邦準備制度理事会(FRB)が予想よりも早いペースで利上げを進めるとの確信が強まったことがありました。FRBの利上げペースに関しては、それまでの0.50%、場合によっては0.75%の利上げもあり得るとの見方に代わって、0.75%の利上げ、なかには1.00%に言及する声も聞かれました。5月20日を過ぎると、市場は反発に転じました。インフレは恐らくピークアウトし、経済の基調は依然として力強く(そして豊かで)、支出(そして収益性)を十分に後押しするものだとする証左が増えてきたことが背景にあります。

  ⇒S&P500指数 の日々のボラティリティは、大幅に上昇しました。日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)の平均値は2.41%(2020年3月の5.34%以来の高水準)となりました。4月は1.81%、3月は1.70%、2月は1.87%(2021年は0.97%)でした。年初来では平均1.96%となっています。

  ⇒S&P 500指数の5月の騰落率は0.01%の上昇となりました(配当込みトータルリターンはプラス0.18%)。4月は8.80%下落(同マイナス8.72%)、3月は3.58%上昇(同プラス3.71%)、2月は3.14%下落(同マイナス2.99%)、1月は5.26%下落(同マイナス5.17%)でした。過去3ヵ月では5.53%下落(同マイナス5.16%)、年初来では13.30%下落(同マイナス12.76%)となりました。弱気相場入り(直近高値から20%下落)に近づいたものの、調整局面(10%下落)で踏みとどまりました。

  ⇒コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは22.03%上昇し(同プラス26.52%)、その期間に終値ベースで90回、最高値を更新しました。

  ⇒バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の米大統領選挙以降では、同指数は22.65%上昇(同プラス25.55%)しました(2021年1月20日のバイデン大統領就任後に69回、最高値を更新しています)。

  ⇒2020年3月23日の底値からの強気相場では84.69%上昇しています(同プラス91.09%)。

  ⇒同指数は、2022年1月3日に付けた終値での最高値である4796.56から13.31%下落して月を終えました。

 ○時価総額で97%超に相当する489社が2022年第1四半期決算を終え、377銘柄(77.1%)で営業利益が予想を上回り、97銘柄が予想を下回り、15銘柄は予想通りでした。売上高は488銘柄中352銘柄(72.1%)で予想を上回りました。2022年第1四半期のEPSは、過去最高となった2021年第4四半期から12.7%減益、2021年第1四半期からは4.4%増益が予想されています。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは、4月末の2.93%から(3.21%に上昇した後)2.85%で月末を迎えました(2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は 2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは、4月末の3.00%から3.06%に上昇して取引を終えました(同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは3月末の1ポンド=1.2576ドルから1.2602ドルに上昇し(同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは4月末の1ユーロ=1.0550ドルから1.0732ドルに上昇しました(同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は4月末の1ドル=129.85円から128.73円に上昇し(同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は4月末の1ドル=6.6085元から6.6725元に下落しました(同6.3599元、同6.5330元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○5月末時点の原油価格は1バレル=115.12ドル(今年に入ってから一時同130.50ドルまで上昇)、年初来の上昇率は52.7%(2021年末は同75.40ドル)となりました。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は年初来で40.1%上昇しました(2021年末の1ガロン=3.375ドルから2022年5月末には同4.727ドルに上昇)。2020年末から原油価格は138%上昇し(2020年末は同48.42ドル)、ガソリン価格は103%上昇しました(2020年末は同2.330ドル)。EIAは2021年のガソリン価格の内訳について、53.6%が原油、16.4%が連邦税および州税、15.6%が販売・マーケティング費、そして14.4%が精製コストと利益だと説明しています。

 ○金価格は4月末の1トロイオンス=1896.40ドルから下落して1840.60ドルで月の取引を終えました(同1829.80ドル、同1901.60ドル、同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は4月末の33.40から26.19に下落して月を終えました。月中の最高は36.64、最低は24.94でした(同17.22、同22.75、同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

●ウクライナ情勢と市場

 ○200年近く、軍事的中立の立場を取ってきたフィンランドとスウェーデンが、ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月24日)を理由に、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請する意向を示しました。

 ○ロシアはフィンランドへの天然ガスの供給を停止しました。

 ○EU各国首脳は、ウクライナ侵攻に対する制裁措置の一環として、ロシア産原油の輸入を一部禁止することで合意しました。禁輸は、加盟27ヵ国の承認を経て6ヵ月後に発効し、海上輸送による輸入が対象とされ、パイプライン経由の原油は暫定的に禁輸の対象外となります。

※「困難増す市場環境、投資家に求められる手腕 (3)」へ続く

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