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【特集】デジタル時代の健康づくり、「PHR」関連・成長加速の銘柄リスト総チェック <株探トップ特集>

個人の健康・医療データを意味するPHRへの関心が高まっている。医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)実現の観点からも必要となるシステムで、関連銘柄をマークしておきたい。

―データ活用でより高い医療サービスを実現、健康寿命の延伸に向け政府も後押し―

 内閣府は今月14日、2022年版の高齢社会白書を公表した。それによると、21年10月1日時点の総人口1億2550万人のうち65歳以上は3621万人で、高齢化率は28.9%(前年は28.6%)となっており、65年には38.4%まで高まると推計されている。こうした社会の変化を背景に、国民皆保険を中心とする医療保険制度などの持続性を維持しながら、一人ひとりの健康寿命をどう延ばすかが大きな課題となっており、そこで注目を集めているのが個人の健康・医療データを意味するPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)だ。

●データ活用の新組織を設立へ

 PHRとは、生涯にわたる個人の保健医療情報(健診・検診情報、予防接種歴、薬剤情報、検査結果など診療関連情報、個人が自ら日々測定するバイタルなど)のこと。「生涯型電子カルテ」ともいわれ、健康増進や生活習慣の改善を実現するための活用が進められている。政府が今月7日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、平均寿命が年々延びるなかで個人が望むライフスタイルを継続させるためには、診断・治療に加えて疾病の予防が重要となるため、個人が自身の健康や医療に関する情報を簡易に記録・管理し、自身の健康管理や診断・治療に関わる医療機関などに必要に応じて共有できるようにすることが重要だと指摘している。

 こうしたなか、16日にはPHRの活用を官民一体となって推進することを目的とした「PHRサービス事業協会(仮称)」の設立宣言発表会が開催された。同協会では3つの分科会を設置して、健康・医療に関するさまざまな主体が持つデータを効果的に利活用するための標準化や、PHRサービスの品質向上を促進するためのルール整備などについて検討するとしており、23年度早期の設立を目指している。経済産業省は連携して、利用者の利便性向上と新しい産業創出に向けて環境整備を加速させる構えで、関連企業のビジネスチャンスが広がりそうだ。

●垣根を越えて民間企業が集結

 同協会には、製薬・医療機器をはじめ、健康アプリや保険など多くの業種が参加しており、そのうちの1社がシミックホールディングス <2309> [東証P]だ。同社は05年から「Personal Health Value Creator」を目指し、個々人の生きがいを向上させる取り組みを推進。19年には電子お薬手帳システム「harmo(ハルモ)」を事業承継し、個人情報と収集したデータを分離して保存可能なコミュニケーションチャネルのプラットフォームとして本格的にPHR事業を展開している。なお、同協会ではPHR標準化を検討する「分科会2」の幹事を担当するという。

 TIS <3626> [東証P]は事業を通じて解決を目指す社会課題のひとつとして「健康問題」を掲げ、医療機関を中心に管理されている医療健康データを、健康増進に活用できるようにPHRとして整備するヘルスケアプラットフォームを提供している。同社は同プラットフォームなどで培ったノウハウとデジタル技術を生かし、データ利活用のためのガイドライン整備に貢献するとともに、PHRサービス事業者として標準化を促進する役割を担うことでPHRサービス産業の発展につなげたい考えだ。

 Welby <4438> [東証G]は11年からPHRサービスを提供するリーディングカンパニーとして、さまざまな疾患領域の患者を対象とする治療支援デジタルサービスの企画・開発・運用を手掛けている。提供するサービスのひとつ「Welbyマイカルテ」は、糖尿病、高血圧などの生活習慣病患者を対象に、血糖値や血圧などの自己管理を支援するスマートフォン向けアプリで、このほかにもオンコロジー(腫瘍・がん)、中枢神経系、自己免疫疾患、希少疾患など幅広い領域でPHRサービスを提供している。

 エムティーアイ <9438> [東証P]は、アプリの累計ダウンロード数1800万以上(22年2月時点)を誇る女性の健康情報サービス「ルナルナ」、企業・薬局・健診機関などと連携して健康課題の解決や健康寿命の延伸、健康維持・増進などを支援する「CARADA」シリーズ、母子手帳アプリ「母子モ」などを展開している。同協会での役割としては、事業者各社とPHRを利活用するサービス開発をスピーディーかつ容易に実現し、安全にPHRデータの受け渡しを行える仕組みの構築が期待されている。

 また、協会設立に向けたメンバーには、塩野義製薬 <4507> [東証P]、エーザイ <4523> [東証P]、テルモ <4543> [東証P]、オムロン <6645> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、SOMPOホールディングス <8630> [東証P]、NTT <9432> [東証P]、KDDI <9433> [東証P]なども名を連ねている。

●MDV、JMDCなどにも注目

 今月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)でもPHRの推進が明記されており、その他の関連銘柄にも注目しておきたい。

 メディカル・データ・ビジョン <3902> [東証P]は、国内最大級の量と質を誇る診療データベースを保有し、「データネットワークサービス」と「データ利活用サービス」が事業の2本柱となっている。同社が提供する「カルテコ」は、医療機関を受診した際の診療記録や健診結果をスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどでいつでも見ることができるPHRのWebサービス。5月末にはグループの健診システムを既に導入している施設向けに健診版PHRサービス「カルテコ」の先行販売を開始すると発表した。

 JMDC <4483> [東証P]は3億3000万件以上のレセプトデータと1700万件以上の健診データの分析に基づいた多様なオンラインサービスを提供しており、医療機関での診療記録や検査結果、健康診断結果、処方薬の情報など健康に関わる情報を集約できるPHRサービスなどを手掛けている。そのひとつが健康情報プラットフォーム「PepUp(ペップアップ)」で、蓄積した膨大な医療データの分析をもとに、ユーザーにあわせた個別アドバイスや疾病リスク表示を行うことが可能だ。

 バリューHR <6078> [東証P]は、自社開発の健康管理システム「バリューカフェテリアシステム」を利用して各種健康管理サービスをワンストップで提供するオンリーワン企業。「健診予約」「健診結果管理」「保健指導サービス」のほか、健康コンテンツなども提供しており、個人の属性情報、健康情報、健康行動の一元管理・蓄積・見える化を実現していることが強みとなっている。

 これ以外では、グループ会社がヘルスケアサポート事業を手掛ける総医研ホールディングス <2385> [東証G]、グループ会社がPHR管理アプリを運営するサワイグループホールディングス <4887> [東証P]、クラウド型健康管理サービスを展開するメドピア <6095> [東証P]、メンタリティマネジメント事業が主力のアドバンテッジリスクマネジメント <8769> [東証P]などにも目を配っておきたい。

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