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【市況】S&P500 月例レポート ― 困難増す市場環境、投資家に求められる手腕 (3) ―


●石油

 ○英国の石油大手BP<BP>は、ロシア事業からの撤退に関連して、税引前ベースで255億ドルの損失を計上したことを明らかにしました。ただし、キャッシュフローへの影響は限定的とみられます。

 ○米国のガソリン(小売り)価格(EIAによる全等級)は7週連続で下落していましたが、その後急騰し、過去最高となる1ガロン=4.694ドルを付けました。

 ○EU各国首脳は、ウクライナ侵攻に対する制裁措置の一環として、ロシア産原油の輸入を一部禁止することで合意しました。禁輸は、加盟27ヵ国の承認を経て6ヵ月後に発効し、海上輸送による輸入が対象とされ、パイプライン経由の原油は暫定的に禁輸の対象外となります。

 ○石油輸出国機構(OPEC)が、ロシアでの減産と欧州による一部禁輸措置を理由に、生産協定からのロシアの一時除外を検討しているとの報道がありました。ロシアが除外されると、他のOPEC加盟国は増産が可能になります。

 ○5月末時点の原油価格は1バレル=115.12ドル(今年に入ってから一時同130.50ドルまで上昇)、年初来の上昇率は52.7%(2021年末は同75.40ドル)となりました。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は年初来で40.1%上昇して1ガロン=4.727ドルとなりました(2021年末は同3.375ドル)。2020年末からは、原油価格は138%上昇し(2020年末は同48.42ドル)、ガソリン価格は103%上昇しています(2020年末は同2.330ドル)。

  ⇒EIAは2021年のガソリン価格の内訳について、53.6%が原油、16.4%が連邦税および州税、15.6%が販売・マーケティング費、そして14.4%が精製コストと利益だと説明しています。

●新型コロナウイルス関連

 ○新型コロナウイルスの感染者数は5月に増加し、一部の地域では警戒レベルが引き上げられましたが、行動規制を新たに導入した地域はほとんどありませんでした。世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに関連するこれまでの死者数が世界全体で1500万人近くに上るとの推計を明らかにしました。

 ○ロックダウン(都市封鎖)が続けられていた中国の上海市では、新規感染者数が大幅に減少し、一部の制限が緩和されました。完全な活動再開は6月中旬から下旬になる見通しであり(執筆時点)、出荷前の大量の受注残が一気に動き始める可能性があります。

 ○北朝鮮では、新型コロナウイルスの(公式の報告では)最初の感染者が確認され、全国レベルでロックダウンが命じられました。ファイザー<PFE>製新型コロナウイルスワクチンの、5~11歳の児童に対するブースター接種が承認されました。

 ○新型コロナウイルス関連データ:

  ⇒世界全体のワクチン接種回数は119億回となりました(2022年4月末は116億回)。

   米国は現時点で:

   →ワクチン接種回数が5億8700万回(同5億7400万回)となりました(ブースター接種を含む)。

   →人口の77.1%(同76.8%)が少なくとも1回はワクチンを接種したことになり、人口の66.0%(同65.5%)が2回の接種を終えました。人口の30.7%(同29.9%)がブースター接種を受けました。

   →新規感染者数の7日間平均は5月末時点で10万9997人となり、4月末時点の5万3432人、3月末時点の2万7621人から増加しました。1日当たりの新規感染者数は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点は8万3120人)。また、死者数の7日間平均は374人でした(4月末時点は355人)。

   →米国の新型コロナウイルスによる累計死者数は100万5000人となりました(4月末時点の累計死者数は99万3000人)。

●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

 ○イングランド銀行(英中央銀行)は政策金利を0.25%引き上げて1.00%としました。採決の結果は賛成6、反対3で、反対派は0.50%の利上げを求めていました。利上げを受けて、英ポンドは2020年7月以来の低水準に下落しました。

 ○米上院は、パウエルFRB議長の再任(任期4年)を承認しました。

 ○パウエル議長は取材に対し、米国のインフレ抑制に対するFRBの決意を「疑わないでほしい」と積極的姿勢を示し、「明確かつ確実にインフレが低下するのが確認されるまで、取り組みを継続していく」と述べました。

 ○5月3-4日に開催されたFOMCの議事録では、参加者が0.50%の利上げに前向きで、インフレに対抗するためには中立金利を超える必要もあると考えていることが明らかになりました。

●企業業績

 ○これまでに、S&P500指数構成銘柄の97%以上に当たる489銘柄が2022年第1四半期の決算発表を終え、このうち377銘柄(77.1%)で営業利益が予想を上回り、97銘柄で予想を下回り、15銘柄で予想通りとなりました。また、売上高では486銘柄中350銘柄(72.0%)で予想を上回りました。

 ○2022年第1四半期は過去最高を記録した2021年第4四半期から12.7%の減益が見込まれますが、前年同期比では4.4%の増益となる見通しです。

 ○2022年通年の利益は前年比7.5%増と、過去最高を再度更新する見通しで、2022年の予想PERは18.5倍となっています。

 ○2023年の利益は同10.5%増が見込まれ、予想PERは16.7倍となっています。

 ○2022年第1四半期中に株式数の減少によって1株当たり利益(EPS)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は17.6%でした(2021年第4四半期は14.9%、2021年第1四半期は5.8%、2019年第1四半期は24.9%)。

 ○2021年第1四半期の営業利益率は11.97%で、第4四半期の13.41%から低下しましたが、依然として高水準を維持しています(1993年以降の平均は8.21%、最高は2021年第2四半期の13.54%)。

●個別銘柄

 ○コーヒーメーカー兼小売業者のスターバックス<SBUX>は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシアでの15年間の営業を終了すると発表しました(130店舗、今年これまでに操業を停止していました)。マクドナルド<MCD>は先週、ロシアでの事業(847店舗)を売却することを明らかにしました。

●注目点

 ○米国10年国債利回りは2018年12月以降で初めて3%を上回り(3.21%、終値でも3%を超えました)、2.85%で5月の取引を終了しました。

 ○ビットコインは、2021年11月に付けた最高値の6万8790ドルから2万6350ドルまで下落し、3万1748ドルで月を終えました。

 ○サル痘の感染者が少なくとも世界23ヵ国で確認されており、感染件数は(アフリカ以外では)依然として少ないものの、懸念が高まりました。これを受けて、デンマークのワクチンメーカーであるババリアン・ノルディック(Bavarian Nordic)は、サル痘に関連する(天然痘)ワクチンの増産を開始しました。

※「困難増す市場環境、投資家に求められる手腕 (4)」へ続く

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