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【市況】【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─経済再開関連が物色の柱に、新たな旅行支援策も始動

株式ジャーナリスト 和島英樹

「経済再開関連が物色の柱に、新たな旅行支援策も始動」

●要注目の7月FOMCに向け、CPI次第では警戒感強まるか

7月中旬までの東京株式市場は、引き続き米国のインフレへの警戒感と、景気先行き見通しの動向に左右される展開となりそうだ。

 最大の注目点は、7月13日に発表される米国の消費者物価指数(CPI)となる。一方、日本では日銀が金融緩和策を維持する方針を決め、景気の下支えが期待される。また、国内旅行の後押しなど、経済再開の動きが本格化している。また、7月10日の参院選投開票を控え、国内では悪材料が出にくい期間となる。7月中旬までの日経平均株価の予想レンジは2万5000円~2万7500円。外部環境をにらんで上値は重いが、3月安値2万4717円(終値ベース)が強力なサポート価格となる。

 米国の主要スケジュールでは、7月1日のISM製造業景気指数、8日の雇用統計、13日のCPI、15日の小売売上高、26日~27日の米連邦公開市場員会(FOMC)と続く。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は6月のFOMC後の会見で次回も0.5%ないし0.75%の利上げを示唆している。前回は当初0.5%利上げを明言しながら、CPIの想定外の伸びで0.75%の利上げに踏み切った経緯がある。13日のCPIの内容次第では再度警戒感が高まる可能性がある。FOMCは次回が9月20日~21日開催で、8月はない。その分、7月のFOMCへの関心は高まらざるを得ない状況といえる。また、7月21日には欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される。

 日本では7月1日に日銀短観(全国企業短期経済観測調査)が発表される。短観の調査は5月までの企業へのアンケート形式であり、世界的なインフレ懸念が台頭する中で、経営者が企業業績や設備投資の先行きをどう見ているかに注目が集まる。10日に参議院選挙の投開票が行われ、21日に日銀金融政策決定会合の結果発表と「経済・物価情勢の展望」も公表される。さらに、月末には3月期本決算企業の第1四半期(4-6月)決算発表が本格化してくる。

●インバウンド需要も徐々に復活へ

 物色面では、経済再開関連が有望といえる。政府は7月中旬より、新たな旅行支援策を実施すると発表している。全国が対象で、割引率は旅行者1人1泊当たり40%。公共交通機関を使った場合、割引額は最大で1万1000円(平日クーポン3000円を含む)となる。対象期間はお盆期間を除き、22年8月末まで。ゴールデンウイークから動き始めた人流は、夏休みにかけて一層活発になることが予想される。また、政府は海外からの入国者数の上限を6月1日から従来の2倍の1日当たり2万人に引き上げた。6月10日からは観光目的の入国も認めている。さらに緩和する方向であり、 インバウンド需要も徐々に復活する見込みだ。

 ロイヤルホールディングス <8179> [東証P]は 外食 ホテル、機内食、さらには空港や高速道路のサービスエリアなどでのコントラクト(業務委託)サービスにも展開している。全国に直営展開する「ロイヤルホスト」を軸とした、外食業界のパイオニア的な存在。2006年に天丼「てんや」の運営会社を買収。一連のサービスは、国内での旅行や出張の回復や、インバウンドの再開でメリットを幅広く受けることが期待される。

 共立メンテナンス <9616> [東証P]は寮事業とホテル事業が主力。祖業である寮事業では学生寮、社員寮を中心に国際交流寮や各種コンセプト寮などを全国で500棟以上運営している。ホテル事業はビジネスホテル「ドーミーイン」を軸にリゾートホテルなどを全国展開。外国人留学生について、政府が新規入国希望者のすべてを受け入れる体制を整えた。留学生の来日延期で苦戦していた寮事業の回復も期待される。

 ゼンショーホールディングス <7550> [東証P]は牛丼「すき家」のほか、「はま寿司」、レストラン「ココス」などを運営。コロワイド <7616> [東証P]は居酒屋では「甘太郎」、「北海道」、「土間土間」ブランドなどを展開。焼き肉「牛角」、「しゃぶしゃぶ温野菜」、さらには「かっぱ寿司」、「大戸屋」運営会社を傘下に擁している。

 JR東日本 <9020> [東証P]、JR東海 <9022> [東証P]、東急 <9005> [東証P]、JR九州 <9142> [東証P]なども有望といえる。

 為替の円安は、自動車株に追い風。なかでも受注が好調なSUBARU <7270> [東証P]、新型軽EV(電気自動車)の販売に期待がかかる三菱自動車工業 <7211> [東証P]、北米向けに伸びが見込まれるマツダ <7261> [東証P]の株価の値動きが軽快だ。

 金利の落ち着きが見られない中で、PERの高いグロース株への逆風が続きそうだが、値ごろ感は台頭しつつある。ソニーグループ <6758> [東証P]、東京エレクトロン <8035> [東証P]、村田製作所 <6981> [東証P]などは戻りを試す場面も想定しておきたい。

(6月24日 記/次回は7月31日配信予定)

■和島英樹(Hideki Wajima)

株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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