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【特集】コモディティの上昇局面は終了か、米利上げ見通しで投資資金の流れが反転<GW特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 エネルギーや貴金属、農産物などのコモディティの指標となるロイター/ジェフリーズCRB指数は今年に入り、インフレ懸念の高まりなどを受けて堅調に推移している。ロシアのウクライナ侵攻による西側諸国の制裁措置をきっかけに急騰し、4月に入ると315.95を付け2012年9月以来の高さとなった。2020年4月に中国武漢市における新型コロナウイルス発生とパンデミック(世界的流行)によるロックダウン(都市封鎖)を受けて106.29まで下落したが、当時の水準から3倍近くまで上昇した。ロシアとウクライナの戦闘が長期化しており、供給不安の高まりはコモディティの支援要因になる。欧州連合(EU)がロシア産原油の段階的禁輸を協議しており、原油の反応を確認したい。

 一方、インフレ高進に加え、各国の中央銀行が利上げを開始しており、世界経済の減速懸念が高まっている。国際通貨基金(IMF)は、ロシアのウクライナ侵攻を背景とするインフレ圧力の高まりなどを受けて2022年の世界経済見通しを大幅に下方修正しており、需要減少に対する懸念が強まると、利食い売りが出て反転する可能性も出てきた。また、ゼロコロナを目指す中国では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて上海市に続き、北京市でロックダウン(都市封鎖)が再導入される可能性が浮上している。株価の行方も焦点であり、リスク回避の動きを受けて急落すると、コモディティにも現金化の動きが出るとみられる。

●金はインフレ懸念あるも、米FRBの大幅利上げ見通しが圧迫

 米連邦準備理事会(FRB)は、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準を25ベーシスポイント(bp)引き上げ、3年3カ月ぶりの利上げを決定した。年内の残り6回の会合でそれぞれ25bpの追加利上げを実施し、年末までに1.75~2.00%の金利を見込むとしたが、インフレ高進を受けて5月の米FOMCで50bpの大幅利上げが予想されており、6月以降も大幅利上げが続くとの見通しが強まった。金ETF(上場投信)がインフレヘッジで買われたが、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げが続くと、利食い売りが警戒される。

 金の現物相場は、3月に2020年8月以来となる2068ドルの高値を付けたのち、上げ一服となった。テクニカル面では同月の高値と3月の高値でダブルヘッドを形成しており、ネックラインとなる2021年3月の安値1677ドルを割り込むと、売り圧力が強まる。はロシアとウクライナの戦闘が長期化していることが下支え要因となる。ロシアは次世代の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」の発射実験が成功したと発表し、核使用をちらつかせている。バイデン米大統領は「第3次世界大戦は何としても避けなければならない」と述べたが、ウクライナへの軍事支援を強化しており、不測の事態に対する懸念も残る。

●原油は欧州の禁輸協議と中国の景気見通しを確認

 ニューヨーク原油はロシアのウクライナ侵攻をきっかけに急騰し、2008年7月以来の高値130.50ドルを付けた後、上げ一服となり、100ドル割れを何度か試している。米英がロシア産原油の禁輸措置を決定し、欧州連合(EU)も段階的な禁輸措置を協議している。ただ、天然ガスなどのエネルギーをロシアに依存している国も多く、米国など代替となる調達先の獲得を進める必要がある。このほか、西側諸国が備蓄在庫を放出する計画であり、ロシア産の減少分をどれくらいカバーできるかも焦点である。

 一方、国際通貨基金(IMF)が世界経済の成長率見通しを大幅に引き下げたことなどを受けて、需要減少に対する懸念が出た。中国上海市のロックダウン再導入も原油の下落要因である。中国では不動産バブルが弾け、景気減速の懸念が高まっている。ゼロコロナ政策にこだわると、他の都市でもロックダウンの再導入が進み、景気見通しは大幅に悪化するとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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