【通貨】為替週間見通し:もみ合いか、安全逃避のドル買い縮小の可能性低い
米ドル/円 <日足> 「株探」多機能チャートより
【今週の概況】
■ウクライナ情勢悪化でリスク回避の円買い強まる
今週のドル・円は弱含み。ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘が続いていること、ウクライナとロシアは停戦などについて2回協議したが、双方の隔たりが大きく、協議は難航するとの見方が多いことから、リスク回避的な円買いが観測された。原油価格の大幅な上昇によって今年前半の世界経済の減速が想定されていることも円買いにつながったようだ。
4日のニューヨーク外為市場でドル・円は、115円46銭から114円65銭まで下落した。
ロシア軍がウクライナにある欧州最大の原子力発電所を制圧との報道を受けてリスク回避の円買いが加速した。この日発表された2月の米雇用統計は失業率が予想以上に低下、非農業部門雇用者数は予想を上回ったが、平均時給の伸びは市場予想を下回ったため、米長期金利は低下し、ドル売りが優勢となった。ドル・円は114円85銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:114円65銭-115円81銭。
【来週の見通し】
■もみ合いか、安全逃避のドル買い縮小の可能性低い
来週のドル・円はもみ合いか。ウクライナとロシアの停戦協議ですみやかな合意形成は困難とみられ、地政学リスクの増大が引き続き警戒されていることから、安全逃避的なドル買いが大幅に縮小する可能性は低いとみられる。米国のインフレ進行が意識されているが、金融引き締め加速の思惑はやや弱まるとみられる。ウクライナとロシアの停戦に向けた交渉で、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大の転換を求め、対ロシア制裁を強める欧米との対決姿勢を鮮明にしている。ウクライナのNATO加盟をめぐり調整は困難とみられ、ロシアによるウクライナ攻撃は激しさを増す可能性がある。
市場参加者が期待する平和的な解決への期待は後退し、ウクライナ情勢は混迷を深めることから、リスク回避的な円買いが大幅に縮小する可能性は低いとみられる。クロス円の取引では円買いが優勢となりそうだが、ユーロ・ドルの取引でユーロ売り・米ドル買いが弱まる気配はないため、ドル買いと円買いにつながる材料は混在している。そのため、ドル・円は主に115円を挟んだ水準でもみ合う状態が続くとみられる。
【米・2月消費者物価コア指数(CPI)】(10日発表予定)
3月10日発表の米2月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+6.4%と予想されており、インフレ進行を示唆する数字になりそうだ。ただし、市場予想を下回れば金融引き締め加速の思惑は後退し、ドル売りの要因となろう。
【米・3月ミシガン大学消費者信頼感指数速報】(11日発表予定)
11日発表の3月米ミシガン大学消費者信頼感指数は62.8と、2月の62.8と同じ水準となる可能性がある。低水準ながら回復傾向を維持できれば成長持続への期待から株式相場を支える要因に。
予想レンジ:114円00銭-116円50銭
《FA》
提供:フィスコ