【市況】新興市場見通し:「マザーズ復調期待」になお試練、IPO1社
マザーズ指数 <日足> 「株探」多機能チャートより
今週の新興市場では、マザーズ指数が3週ぶりに上昇したが、週前半と半ば以降で様相は異なった。週前半はウクライナ危機で「米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを見送るのでは」といった期待が高まり、特にこれまできつい調整を強いられてきた中小型グロース(成長)株が大きく買われた。しかし、パウエルFRB議長が議会証言で金融引き締めを進める姿勢を示すとグロース株買いの勢いは鈍化。週末にはウクライナの原子力発電所が攻撃されたと伝わり、リスク回避目的の売りが広がった。なお、週間の騰落率は、日経平均が-1.9%であったのに対して、マザーズ指数は+3.3%、日経ジャスダック平均は+0.4%だった。
個別では、マザーズ時価総額上位のビジョナル<4194>が週間で0.1%高、フリー<4478>が同0.8%高と小幅な上昇にとどまったが、サンバイオ<4592>は同23.8%高と大きく上昇した。売買代金上位ではFRONTEO<2158>などが買われ、サイバー攻撃に関する報道が相次いだことでサイバーセキュリティクラウド<4493>は大幅高。また、セキュア<4264>は無人化店舗に関するリリースが好材料視され、週間のマザーズ上昇率トップとなった。一方、メルカリ<4385>は同1.5%安と軟調で、前の週に上場したBeeX<4270>などが下落率上位に顔を出した。ジャスダック主力ではワークマン<7564>が同0.6%高、アンビスHD<7071>が同3.9%高。売買代金上位ではウエストHD<1407>などが堅調で、上昇率上位にはグッドライフカンパニー<2970>などが顔を出した。一方、ハーモニック・ドライブ・システムズ<6324>は同0.4%安、東映アニメーション<4816>は同3.7%安となり、下落率上位にはアミタHD<2195>などが顔を出した。IPOでは、マザーズ上場のイメージ・マジック<7793>が公開価格を60.9%上回る初値を付ける一方、東証1部上場のビーウィズ<9216>は公開価格割れスタートを強いられた。
来週の新興市場では、不安定な相場展開が続くことも視野に入れて取り組みたい。米金融引き締めの見送りとグロース株の復調に期待する声は根強く聞くが、先のパウエルFRB議長発言を受け、再び3月利上げ織り込みが0.25%を下回るような場面が到来するとは想定しにくい。原油などの商品市況はなお高騰中でインフレ懸念が拭いづらく、今週末の原発攻撃で改めて地政学リスクも意識されるだろう。マザーズ主力のメルカリを見ると株価にトレンド転換の兆しは見出しにくく、信用買い残を膨らませつつ調整局面が続いている点に不安がある。
来週は、3月7日にアスカネット<2438>、10日にステムリム<4599>、11日にサンバイオなどが決算発表を予定している。アスカネットは空中ディスプレイ、サンバイオは再生細胞薬への期待から賑わっているだけに、動向が注目されそうだ。2月に上場したエッジテクノロジー<4268>は11日に初の決算発表。サイバーセキュリがサイバー攻撃の増加を報告しており、関連銘柄も引き続き注視したい。
IPO関連では、3月11日にセレコーポレーション<5078>が東証2部へ新規上場する。首都圏でアパート経営の提案などを行い、配当利回りが比較的高い点などは目を引くが、やや地味とみる個人投資家が多いようだ。なお、今週はセカンドサイトアナリティカ<5028>(4月4日、グロース)など2社の新規上場が発表されている。
《FA》
提供:フィスコ