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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─海運株高は何を示唆する?!

株式評論家 植木靖男

「海運株高は何を示唆する?!」

●2万6000円大台を巡る3度目の攻防戦

 日経平均株価は底値もみ合いにあるとみられる。場合によっては下げの中段のもみ合いにあり、もう一段の下落も覚悟せざるを得ないかもしれないが、そうであっても底値圏内の値動きとみてよさそうだ。

 それにしても、ロシアのウクライナ侵略は何なのか。政治的な天才とも評されたプーチン大統領のここへきての常軌を逸した“侵略”という行為は、彼らしくない。まさに狂気の沙汰というほかない。ふと思い起こすのは、かつて豊臣秀吉が大国・明を制覇せんとして朝鮮国に攻め込んだ「文禄・慶長の役」である。歴史的にみて秀吉も天才政治家である。なぜ、その秀吉が合理性に欠ける暴挙を起こすなど豹変したのか。一説には自らの“老い”と精神的な苦悩が重なった結果だという。遅く生まれたわが子、鶴松が幼くして亡くなるという悲劇的な状況下で自暴自棄になり、まったく合理性のない行動に走ったとされる。

 同じようにプーチン氏も自らの老いを自覚し、肉体的衰えに加え、なにか精神的な苦悩、それが人知らずの“病(やまい)”なのか定かでないが、こうしたことが暴挙につながったとも考えられる。絶対的な権力者のみが知る、何かが彼の心を突き動かしたのであろうか。

 さて、ここへきての日経平均株価の値動きを検証してみたい。3月4日の週末には再び2万6000円大台を巡る攻防戦が繰り広げられた。今年に入って3回目の大台攻防戦だ。1回目は1月27日、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め策強化を懸念しての下げ、2回目は2月24日のロシアによるウクライナ侵攻を受けた下げであった。そして、3回目は、ウクライナの原発に対するロシア軍の攻撃を警戒した下げである。今回の不安材料は3回の中で最も恐怖をもたらす、放射能汚染のリスクであった。プーチン氏の狂気もここに極まれりといった感がある。

 この暴走を止めるべく仲裁に入れるのは中国しかない。さて、習近平国家主席はどう動くか?

 株価はこの3回の2万6000円攻防戦で一応の決着がつくのか。全ては3月7日、8日の株価次第である。過去2回は下げの後、翌日から4日ないし3日連続で上昇している。

●悪材料が増えるほど底入れに近づく

 ここで材料的には当面、ロシアへの経済制裁により跳ね返ってくるマイナスの影響である。日米欧の金融機関のロシア債権残高は約18兆円とされる。次の材料は、インフレ退治を狙う米国のQT(量的引き締め)、すなわちFRBのバランスシートの縮小がいつ始まるのかである。悪材料は増えれば増えるほど底入れに近づく、との格言もある。仮に2万6000円を下回っても回復は早いのではないか。

 なお、底入れはいつものように材料で判断するのではなく、あくまでもチャート、つまり株価自体が示唆するものである。注意したい。

 ところで、株価が下げ基調の中、逆行して物色される業種、銘柄は何か。それはやはり素材、商品市況関連だ。その筆頭が 海運株だ。本格的に動意をみせたのは21年から。いまはまだ2年目だ。逆にハイテクの東京エレクトロン <8035> は、19年から3年間上げてここへきて大天井を打っている。海運株は歴史的に見てその後の全般株価の牽引役を演じてきていることに注目したい。筆頭はやはり「NYK」の旗を世界の海になびかせる日本郵船 <9101> だ。

 次は防衛関連だ。ウクライナ問題で世界各国の国防予算が急拡大している。ドイツがGDP比2%超へと大幅増額し、歴史的な大転換に踏み込む。わが国も追随しよう。三菱重工業 <7011> に注目したい。本格的に動意づいたのは今年1月からだ。

 このほか、 石油非鉄、穀物関連なども要注目といえる。ただ、国際商品高を牽引する原油市況は、高値波乱の兆候もみられそうであり、慎重な対応も必要であろう。かつて仕手色の濃かった帝国石油、現在のINPEX <1605> に注目したい。

2022年3月4日 記

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