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【特集】馬渕治好氏【新春特別編 2022年株式市場大展望 上昇相場は続くか?】(1) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―「コロナ変異株」と「金融緩和終了」2つの逆風材料と処方箋―

 2022年相場がスタートした。昨年は世界的な金融緩和による過剰流動性が相場の押し上げ要因となったが、年間を通してみれば、日経平均2万7000円から3万円トビ台のボックス圏での往来となった。秋口以降は波乱含みに上下動を繰り返したが、強弱観が対立するなか大納会での3万円大台乗せは果たせなかった。寅年となる今年はどういう相場展開が待っているのだろうか。新型コロナウイルス変異株の感染拡大やFRBによる金融政策の転換など不安要素は数多いが、これらをこなして株価は上昇トレンドを維持できるのか。市場第一線で活躍するエコノミスト2人に話を聞いた。

●「年央まで下落基調も、後半上昇し3万2000円へ」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 22年の東京株式市場は、年央までは基本的に軟調な展開で日経平均株価は下落基調を余儀なくされそうだ。ただし年後半は上昇基調に復すると見込んでいる。

 21年の11月下旬になって、世界株市場は波乱に見舞われた。リスク回避的な動きは、為替市場や国際商品市況にも表れた。この背景には南アフリカで発見された新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株に対する警戒感があったが、もともと22年に生じると想定していた世界市場の波乱が、前倒しで始まった可能性が高いと考える。つまり、大きな流れとして、国内外の株価は波乱模様から下落基調に入っていくのだろう。したがって東京市場においても、日経平均が短期的に上昇しても、上昇幅は限定的なものにとどまる公算が大きい。かえって、下値を切り下げる展開が年央辺りまで続くことが懸念される。

 株価下落を見込む大きな要因として、まず米国でのテーパリングの影響が挙げられる。インフレ圧力を背景にFRBがテーパリング加速を決定し、22年は利上げ回数も3回が見込まれる。そうした緩和縮小そのものが問題というより、これまで「緩和漬け」となっていた米企業や投資家の行動を逆回転させることが予想される。具体的には急増した信用買いの失速や、米企業の借り入れによる自社株買いの衰えなどだ。

 また、中国の過剰債務問題や政策当局の突然の産業規制強化の動きなど、中国リスクも顕在化する可能性がある。米中対立も深刻化しており、経済安全保障の観点から米国政府が、中国企業の米国での活動や米投資家の中国企業への投資について、規制強化を進めている。

 他の不安要因としては、米テーパリングが新興諸国から米国への資金回帰を招き、新興国政府や企業の資金繰りを圧迫する、新興国通貨相場を押し下げる、などが懸念される。加えて、日米欧など主要国の景気が回復基調にありながらも勢いが鈍化している、4月のフランス大統領選が欧州政治の不透明要因となる、ロシアがウクライナへの侵攻をうかがっているなど、世界に不安の種は多い。

 ただし、こうした世界市場の波乱が22年半ばで一巡すれば、その後は経済の回復に沿った、世界的な株価の反転上昇が予想される。日経平均も年後半は上昇へと向かうだろう。以上より、22年の日経平均は、年初は大発会の水準からあまり上に行くことが難しく、年央辺りには2万5000円辺りへの下押しが懸念される。年後半は、21年の高値である3万670円(終値ベース)を通過点に3万2000円まで切り上がる展開があり得る。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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