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【特集】嶌峰義清氏【新春特別編 2022年株式市場大展望 上昇相場は続くか?】(2) <相場観特集>

嶌峰義清氏(第一生命経済研究所 常務取締役・首席エコノミスト)

―「コロナ変異株」と「金融緩和終了」2つの逆風材料と処方箋―

 2022年相場がスタートした。昨年は世界的な金融緩和による過剰流動性が相場の押し上げ要因となったが、年間を通してみれば、日経平均2万7000円から3万円トビ台のボックス圏での往来となった。秋口以降は波乱含みに上下動を繰り返したが、強弱観が対立するなか大納会での3万円大台乗せは果たせなかった。寅年となる今年はどういう相場展開が待っているのだろうか。新型コロナウイルス変異株の感染拡大やFRBによる金融政策の転換など不安要素は数多いが、これらをこなして株価は上昇トレンドを維持できるのか。市場第一線で活躍するエコノミスト2人に話を聞いた。

●「新型コロナ次第は変わらず、業績相場への移行がカギ」

嶌峰義清氏(第一生命経済研究所 常務取締役・首席エコノミスト)

 新年も株式市場を取り巻く環境は大きくは変わらないだろう。引き続き、新型コロナウイルスの感染動向次第の面が大きい。特に、新年に新たな変異株が登場しないかだ。オミクロン株は、感染力は強いが多少弱毒化したとみられている。しかし、その次は想像がつかない。感染力が強く、毒性も強い変異株が出てきて、ワクチンも十分に効かないとなった場合、経済への影響が懸念される。

 一方、もし新型コロナをそれほど深刻に考えなくてもよい状況となれば、市場に垂れ込めた暗雲は晴れてくる。しかしその場合、今度は米国の金融引き締めを警戒しなければならない。米国は春にもテーパリング(金融緩和縮小)を終え、年央以降、利上げに踏み切ることが想定されている。米国では今年は3回ほどの利上げが見込まれているが、これは株価にはネガティブ要因となる。

 特に、米国は労働者不足の状態で人を雇うため賃金上昇の動きが出ている。賃金と物価のスパイラル的な上昇が警戒されるなか、新型コロナの懸念が薄れていれば、米金融当局は金利を中立水準に当たるFFレートでの1.5~2%程度に早く戻そうとすることも考えられる。その場合、3ヵ月に1回もしくはもっと速いペースの利上げもあり得る。そうなると、割高な株価を保つことは難しくなる。利上げが始まると相場は不安定となり、上値余地も限定的となるだろう。

 米国の金利上昇は円安要因だが、円安で稼げる日本企業は多くない。デメリットもあり日本株は円安の恩恵をさほど受けない。新年が良いシナリオで進んだ場合、業績相場にいつ移行できるかが焦点となる。11月に米中間選挙があり、それまでは動きづらい。業績相場に移行するとしても年末近くが予想され、それまで強弱材料のせめぎ合いが続くだろう。リスク要因は、新型コロナを除けば米中関係の悪化や想定を超える物価上昇ぐらいだ。しかし、米国の金利上昇圧力が大きく下がるような楽観シナリオも描きづらい。

 そんななか、新年の日経平均株価のレンジは下値が2万8000円、上値が3万1000円前後を見込んでいる。新年も昨年と同様の横ばい相場が予想される。NYダウがどの程度まで高値を更新するかは分からないが、テーパリングを経て利上げとなると調整もあるだろう。21年はNYダウと日経平均株価のパフォーマンスに差が出たが、これは両国の国内消費の力の違いを反映したものだと思う。

 グロース(成長)株とバリュー(割安)株では、金利上昇局面では高PERの割高株は物色しにくくなり、割安株が優位になることが予想される。ただ、デジタル関連株やエネルギー関連株は長期的に買いたい向きも多く、長い目では上昇局面の調整となると思う。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(しまみね・よしきよ)
1990年3月青山学院大学経済学部卒。1990年4月岡三証券入社。岡三経済研究所を経て、1992年日本総合研究所入社。日本経済研究センターへ1年間の出向を経た後、1998年5月第一生命経済研究所入社。米国経済担当、日本経済担当などを経て、金融市場全般を担当。2011年4月首席エコノミスト、2018年6月取締役・首席エコノミストを経て、2021年4月より現職。

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