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【市況】【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─物色の矛先は経済再開、国土強靱化関連に向かうか

株式ジャーナリスト 和島英樹

「物色の矛先は経済再開、国土強靭化関連に向かうか」

◆11月相場の注目ポイント、ピーク迎える企業決算

 11月中旬までの東京株式市場は、佳境を迎える国内企業の決算発表や米国株、為替、商品価格動向などの外部環境をにらみ、基本的にはもみ合い相場が想定される。米国株式市場では主要指数が最高値圏で推移しており、日本株の下支え要因となる。11月の日経平均株価は9連勝中(前月末比プラス)であり、下旬には上値を試す展開も想定される。日経平均株価は2万8000円~3万0500円程度での値動きとなりそうだ。

 スケジュール面ではまず、10月31日の衆議院議員選挙の投開票が注目される。岸田首相は勝敗ラインについて与党で過半数を挙げている。市場では自民党単独での過半数を分岐点とみている向きがある。また、海外で最も注目されるのが米国で11月2日~3日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)の動向だ。テーパリング(金融緩和の縮小)の開始時期を明言するのかがポイントとなる。中国では8~11日に共産党中央委員会第6回全体会議(6中全会)が開催される予定。習近平国家主席が史上3人目の歴史決議を行う党指導者となる見込みで、今後影響力が一段と強まることが予想される。

 需給面では引き続き外国人投資家の動向がポイントだ。日経平均株価の9月高値から10月安値まで現物・先物合計で2兆円以上の売り越しとなっていたが、直近では売り一巡となっている。ただ、明確に買い越しには転じておらず、上値を積極的に買う投資家は限定的となる公算が大きい。

 最大の注目は11月中旬にピークを迎える決算発表だ。日経平均株価の1株利益は決算発表前では2050円前後で推移し、PERは14倍程度となっている。29日付の日本経済新聞ベースでは2060円。第1四半期では7社に1社が上方修正となっている。日経平均株価の1株利益が上昇し、バリュエーション面から買い余地が大きくなるかに市場の関心が高い。

◆銘柄選別のカギは選挙後の政策、経済対策に

 日本では円安による輸出企業のメリットが出そうな一方で、原油など資源価格の上昇がコストアップ要因として警戒されている。資源を輸入に頼る日本は、資源高と円安がダブルパンチになる可能性もある。ただ、株価的には2008年のリーマン・ショック後や16年のチャイナ・ショックの後の原油高局面は株高となっている。経済回復による資源需要の増加を前向きに捉えたことが要因だ。新型コロナ後の資源需要の増加は、企業業績にはプラスに働く可能性がある。

 決算では序盤で 半導体関連企業の好調が確認されている。ウエハー洗浄装置で世界首位のSCREENホールディングス <7735>や半導体パッケージの新光電気工業 <6967>などが通期業績を上方修正したほか、シリコンウエハートップの信越化学工業 <4063>の第2四半期決算は大幅な営業増益となっている。東京エレクトロン <8035>、アドバンテスト <6857>、東京応化工業 <4186>、東京精密 <7729>などにも妙味がありそうだ。

 また、新型コロナ感染症のピークアウトによる世界経済の再開を受けて、コマツ <6301>、日立建機 <6305>は多くの国や地域で油圧ショベル需要などが回復し、業績も増額に進んでいる。一方、ファナック <6954>、日立製作所 <6501>など半導体不足が業績を圧迫するケースもあり、選別が必要になりそうだ。

 物色は選挙後の政策や経済対策をにらみ、新型コロナ後の経済再開や、 国土強靱化などに関心が向かう可能性が高い。10月25日から飲食店の酒類提供や営業時間拡大が既に始まっている。今後はワクチン接種証明提示での国内旅行や出張再開、さらには「Go To」キャンペーンの導入なども進む可能性がある。岸田首相は数十兆円規模の経済対策の実施を自民党総裁選で公約し、特に国土強靱化には予算上積みにも言及している。経済再開ではエイチ・アイ・エス <9603>、オリエンタルランド <4661>、コロワイド <7616>、国土強靱化では技研製作所 <6289>、ピーエス三菱 <1871>、ショーボンドホールディングス <1414>などに関心が向かう公算がある。

(2021年10月29日 記/次回は11月28日配信予定)

■和島英樹(Hideki Wajima)

株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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