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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─困ったときの薬株、いまは海運株か

株式評論家 植木靖男

「困ったときの薬株、いまは海運株か」

●米国市場に異変のときマネーの行き先は?

 東京市場はここへきて消化不良の様相をみせている。すなわち、先行きの見通しがはっきりせず、上げるでもなく、下げるでもない不快感だけが募る局面にある。投資家からみれば早くなんとかしてほしいとの思いであろう。

 いうまでもなく、わが国の株式市場は次の要因によって左右される。まず、市場が活況をみせるにはそれなりの資金、つまりカネ余りの状況が存在しなくてはならない。この点については、日銀は引き続き量的金融緩和を維持する方針を決めている。

 もっとも、わが国のみならず海外、なかでも欧米がカネ余りの状態にあることが必要だ。わが国の株式市場を主導しているのは海外資金だからだ。もちろん、欧米の資金が潤沢であっても、わが国市場にそれを振り向けるか否かの選択権は海外投資家の手の内にある。

 こうした内外の状態によって東京市場の行方は決まってくる。

 いま、岸田政権の経済対策には批判もあるが、大衆迎合主義的な色彩は選挙対策用ともいえ、選挙が終われば徐々に修正されていくのではないか。また、景気の先行きについても、新型コロナ対策の行動制限解除がもたらすリベンジ消費が期待され、次第に回復に向かうとみられる。

 ともあれ、株価上昇の条件は整いつつあるが、やはり海外資金が入ってくるかが最大のカギとなる。米国は巨額の世界の投資マネーを自国市場に集め続けており、結果として米国株式市場は史上最高値を更新し、なお高値圏を維持している。このため、この資金が米国内で居座り続ける好循環の構図となっており、わが国市場への本格的な流入は期待できない。

 しかし、米国市場に異変が起こり、そこから資金が離脱すれば、じっとしているわけではなく、次のターゲットを探すことになる。巨額の資金を受け入れ可能な市場は少なく、条件としてはわが国市場が最も適しているはずだ。しかも、わが国の株式市場はいろいろな面で出遅れていることは明白である。

●この局面は短期・薄利狙いのスタンスで

 いまの日経平均株価を値動きから考えてみたい。10月6日につけた安値2万7293円以降、戻り相場に入っているが、戻り相場では絶対無視できない肝となる水準を上抜かない限り、高値に近づくことはできない。今回のケースではその水準は2万9500円処である。10月20日にその水準に近づいたものの上抜けず、いまは再挑戦すべくエネルギーを蓄積している段階にある。幸い、選挙も終わる。また、米FOMC(連邦公開市場委員会)も来週中に通過する。チャンスである。

 もっとも、米国株価に異変があれば一時的に米国株に連動するが、その後はわが国の市場は中長期的に見て一足早く底入れすることになろう。期待したい。

 では、当面の物色はどうか。米国株に引きずり回されてグロース株、バリュー株が入れ替わり、立ち替わり浮沈を繰り返している。

 このような局面では持続的上昇を期待できる銘柄は少ないことも事実である。このため、短期で薄利を狙うしかなさそうだ。とすれば、あまり人気化していない、つまり立ち位置の低い銘柄ということになろうか。人気化して連騰している銘柄に目を奪われがちであるが、そうした銘柄には十分気をつけたい。

 従来は困ったときの 薬株といわれたが、いまはそれが 海運株であり、川崎汽船 <9107> に注目したい。

 他セクターでは、Zホールディングス <4689>が安定していて下値不安は乏しい。仮に下げてもいつの間にか切り返してくる人気に魅力がある。

 また、日本航空 <9201> もおもしろそうだ。旅客需要の回復による増便に期待したい。

2021年10月29日

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