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【特集】『四季報』は40分で速読、効率重視で10倍株を探す“裏技”
すご腕投資家に聞く「銘柄選び」の技 はっしゃんさんの場合~最終回
登場する銘柄
第1回「波乱時も焦らない、月次から理論株価で4億円までの技」を読む
第2回「テンバガーを掴み損ねた反省から『低PERの呪縛』にさよなら」を読む
第3回「『損切りはエントリー時期の見誤り』、理論株価でテンバガーを目指す技」を読む
雰囲気ではだめだ。もっと合理的にやらないと――
はっしゃんさん(ハンドルネーム)が理論株価を活用するようになったのは、投資を本格的に始めた当初に覚えた「株価と業績がちぐはぐに動くこと」への違和感が原点だった。
理論株価を活用というスタイルから、はっしゃんさんは「定量分析」至上主義の人という印象が強くなるかもしれないが、実態は異なる。
数値を活用すべきところはトコトン使うが、経営戦略やビジネスモデルの優劣など数字だけでは判断しきれない定性分析も決しておろそかにしていない。
理論株価に凝縮した定量分析は、むしろ定性分析に時間や労力を回すために、作業の効率化を図っているという面がある。
同時に定性分析でも、効率化できることは徹底して追求する。企業の決算資料や『会社四季報』(東洋経済新報社)は、読むポイントを決めて、ルーティン化して速読する。
シリーズ最終回は、定性分析の効率化&スピード化のポイントや、決算データの自動取得の概要に触れていく。決算書と四季報のチェック法は、初心者にも取り組みやすいノウハウになるだろう。
3つの「S」にこだわり10倍株を探す
ファンダメンタルズ分析をベースにする投資家は、決算書はもちろん四季報の情報を重視している人が多いだろう。長期投資でテンバガー(10倍株)になる成長株を狙うはっしゃんさんは、これらの情報源を活用して、EPS(1株当たり当期純利益)とROE(自己資本利益率)がこの先順順調に伸びていくかを見極めていく。
その作業で、自身が実践しているものに3つの「S」がある。それは、
Speed(スピード)
Select(セレクト)
Slow(スロー)
――だ。
1つ目のスピードは、限られた時間を効率よく使うことを意識したキーワードだ。「まず全体をざっと見渡して、注目銘柄を大まかに選んでから、重視する項目や興味のある部分を深堀りする」(本人)
2つ目のセレクトは、対象の絞り込み。4000前後ある上場銘柄を1つ1つ深く調べていくやり方では、時間がいくらあっても足りない。「選択と集中」を目指して時間の使い方にメリハリをつける。
3つ目のスローは、最初のスピードと「矛盾するのでは?」と疑問に思うかもしれない。が、これは初回の記事から触れている「スロートレード」の意味。せっかちに結果を求めようとバタバタせず、時間軸をゆっくり使うスタイルを目指す。
スピードとセレクトにこだわり個別銘柄に深く入っていくと、投資スタイルはおのずと長期投資でスローになるという。ではとうやるのか。
はっしゃんさんは、まず初めに視覚を利用する。四季報に掲載されている月足チャートで「株価が右肩上がりの銘柄」に対象を絞り込む。
では、スピード&セレクト&スローの具体的な技を見ていこう。
四季報は40分で有望株候補をセレクト
最初のスピードに関しては、約2000ページの四季報を約1時間で一気読みする。全体をざっと見渡してから、本来の目的である「隠れたお宝成長株」を探すのが、速読する理由だ。
はっしゃんさんの経験則では、長期投資に向くお宝成長株を探す上で、掲載情報の90%は無関係と見ている。玉石混交の情報から効率よく「玉」の有望株を探すためには、重要でない情報に時間や労力を取られないように心がけているのだ。
速読に慣れた現在では40分程度で終えているという。コツは、とにかくやるべき作業をパターン化し、機械的に進めていくことだ。
具体的には、
A. 株価チャートから選別
B. 選んだものから、業績をチェック
―― の「チャート選抜」そして「業績選抜」の2段構えで進めていく。
最初のチャート選抜では、とにかく「パッと見」で選別する。この時点では、株価チャートの上に記載されている企業名を見ないことで、先入観を持たずに選別するのがポイントという。
チャートで選ぶ条件は以下の3つ。
1. 株価が右肩上がり
2. チャートの中に陽線(始値より終値のほうが株価が高い状態)が多い
3. 半年以内に最高値を更新
この3つが揃う銘柄のチャートは、
「右肩上がりで、白っぽく、右端の上の方が一番高くなっている」
――になる。こうしたものを視覚的に見つけていくのだ。
足元では神戸物産<3038>やSHIFT<3697>が該当する。直近は相場の変調の影響もあってか、やや不安定な動きもあるが、形状としては、こうしたタイプを選んでいくのを理想とする。
■神戸物産の月足チャート(2012年~21年10月)
付箋はあらかじめ剥いで机に、貼る場所も固定
はっしゃんさんは、直近の2021年9月発売の「四季報秋号」では、チャート選抜で67銘柄にまで絞り込んで付箋を貼った。
ちなみにこの作業においては、よりスピーディに進めるために、四季報のページに貼る付箋は、あらかじめ20枚ほど剥いだうえで机に貼っておく。
冊子をめくる際に邪魔にならないよう、付箋を貼る位置も固定し整然とさせる。はっしゃんさんの場合は、冊子の右ページでは縦に掲載される企業名の下に、左ページでは「資本異動」のあたりに貼っているのだという。
チャート選抜の次は企業業績を確認し、実績を伴って株価が上がっていたかを見て行く。
ここでも、一定のパターンに従って甲乙を見分け、さらに絞り込みを進めていく。
■はっしゃんさんが『会社四季報』に付箋を貼っている様子
出所:本人制作の動画コンテンツ
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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登場する銘柄
ウエストHD<1407>、SBSHD<2384>、ベネ・ワン<2412>、東エレデバ<2760>、SREHD<2980>、神戸物産<3038>、グリムス<3150>、F&LC<3563>、TIS<3626>、コーテクHD<3635>、SHIFT<3697>、IIJ<3774>など |
編集・構成/真弓重孝(株探編集部)、文・イラスト/福島由恵(ライター)
はっしゃんさん(ハンドルネーム・50代・男性)のプロフィール:
会社員でエンジニアとして勤め、2年前に運用資産3億円達成を機に独立
起業した成長株投資家。従業員持ち株会加入をきっかけに1990年後半
から株式投資を開始し、以降、2001年の911(米同時多発テロ)による
株価暴落時に企業の「月次」情報の観察の有効性を見出す。
30代で億り人に。その後は理論株価の活用でさらにパワーアップし着実に利益を
伸ばし、現在は4億円プレーヤーに。VTuber(バーチャルユーチューバー)として、ネット動画で投資情報を発信。
またSNS(交流サイト)やブログでも理論株価の値や注目銘柄がわかる「成長株Watch」や「月次Web」、『会社四季報』速読法などを公開している。
著書に『はっしゃん式成長株集中投資で3億円』(総合法令出版)、新刊の『決算書「3分速読」からの"10倍株"の探し方』(KADOKAWA)など。
会社員でエンジニアとして勤め、2年前に運用資産3億円達成を機に独立
起業した成長株投資家。従業員持ち株会加入をきっかけに1990年後半
から株式投資を開始し、以降、2001年の911(米同時多発テロ)による
株価暴落時に企業の「月次」情報の観察の有効性を見出す。
30代で億り人に。その後は理論株価の活用でさらにパワーアップし着実に利益を
伸ばし、現在は4億円プレーヤーに。VTuber(バーチャルユーチューバー)として、ネット動画で投資情報を発信。
またSNS(交流サイト)やブログでも理論株価の値や注目銘柄がわかる「成長株Watch」や「月次Web」、『会社四季報』速読法などを公開している。
著書に『はっしゃん式成長株集中投資で3億円』(総合法令出版)、新刊の『決算書「3分速読」からの"10倍株"の探し方』(KADOKAWA)など。
第1回「波乱時も焦らない、月次から理論株価で4億円までの技」を読む
第2回「テンバガーを掴み損ねた反省から『低PERの呪縛』にさよなら」を読む
第3回「『損切りはエントリー時期の見誤り』、理論株価でテンバガーを目指す技」を読む
雰囲気ではだめだ。もっと合理的にやらないと――
はっしゃんさん(ハンドルネーム)が理論株価を活用するようになったのは、投資を本格的に始めた当初に覚えた「株価と業績がちぐはぐに動くこと」への違和感が原点だった。
理論株価を活用というスタイルから、はっしゃんさんは「定量分析」至上主義の人という印象が強くなるかもしれないが、実態は異なる。
数値を活用すべきところはトコトン使うが、経営戦略やビジネスモデルの優劣など数字だけでは判断しきれない定性分析も決しておろそかにしていない。
理論株価に凝縮した定量分析は、むしろ定性分析に時間や労力を回すために、作業の効率化を図っているという面がある。
同時に定性分析でも、効率化できることは徹底して追求する。企業の決算資料や『会社四季報』(東洋経済新報社)は、読むポイントを決めて、ルーティン化して速読する。
シリーズ最終回は、定性分析の効率化&スピード化のポイントや、決算データの自動取得の概要に触れていく。決算書と四季報のチェック法は、初心者にも取り組みやすいノウハウになるだろう。
3つの「S」にこだわり10倍株を探す
ファンダメンタルズ分析をベースにする投資家は、決算書はもちろん四季報の情報を重視している人が多いだろう。長期投資でテンバガー(10倍株)になる成長株を狙うはっしゃんさんは、これらの情報源を活用して、EPS(1株当たり当期純利益)とROE(自己資本利益率)がこの先順順調に伸びていくかを見極めていく。
その作業で、自身が実践しているものに3つの「S」がある。それは、
Speed(スピード)
Select(セレクト)
Slow(スロー)
――だ。
1つ目のスピードは、限られた時間を効率よく使うことを意識したキーワードだ。「まず全体をざっと見渡して、注目銘柄を大まかに選んでから、重視する項目や興味のある部分を深堀りする」(本人)
2つ目のセレクトは、対象の絞り込み。4000前後ある上場銘柄を1つ1つ深く調べていくやり方では、時間がいくらあっても足りない。「選択と集中」を目指して時間の使い方にメリハリをつける。
3つ目のスローは、最初のスピードと「矛盾するのでは?」と疑問に思うかもしれない。が、これは初回の記事から触れている「スロートレード」の意味。せっかちに結果を求めようとバタバタせず、時間軸をゆっくり使うスタイルを目指す。
スピードとセレクトにこだわり個別銘柄に深く入っていくと、投資スタイルはおのずと長期投資でスローになるという。ではとうやるのか。
はっしゃんさんは、まず初めに視覚を利用する。四季報に掲載されている月足チャートで「株価が右肩上がりの銘柄」に対象を絞り込む。
では、スピード&セレクト&スローの具体的な技を見ていこう。
四季報は40分で有望株候補をセレクト
最初のスピードに関しては、約2000ページの四季報を約1時間で一気読みする。全体をざっと見渡してから、本来の目的である「隠れたお宝成長株」を探すのが、速読する理由だ。
はっしゃんさんの経験則では、長期投資に向くお宝成長株を探す上で、掲載情報の90%は無関係と見ている。玉石混交の情報から効率よく「玉」の有望株を探すためには、重要でない情報に時間や労力を取られないように心がけているのだ。
速読に慣れた現在では40分程度で終えているという。コツは、とにかくやるべき作業をパターン化し、機械的に進めていくことだ。
具体的には、
A. 株価チャートから選別
B. 選んだものから、業績をチェック
―― の「チャート選抜」そして「業績選抜」の2段構えで進めていく。
最初のチャート選抜では、とにかく「パッと見」で選別する。この時点では、株価チャートの上に記載されている企業名を見ないことで、先入観を持たずに選別するのがポイントという。
チャートで選ぶ条件は以下の3つ。
1. 株価が右肩上がり
2. チャートの中に陽線(始値より終値のほうが株価が高い状態)が多い
3. 半年以内に最高値を更新
この3つが揃う銘柄のチャートは、
「右肩上がりで、白っぽく、右端の上の方が一番高くなっている」
――になる。こうしたものを視覚的に見つけていくのだ。
足元では神戸物産<3038>やSHIFT<3697>が該当する。直近は相場の変調の影響もあってか、やや不安定な動きもあるが、形状としては、こうしたタイプを選んでいくのを理想とする。
■神戸物産の月足チャート(2012年~21年10月)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、
マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
付箋はあらかじめ剥いで机に、貼る場所も固定
はっしゃんさんは、直近の2021年9月発売の「四季報秋号」では、チャート選抜で67銘柄にまで絞り込んで付箋を貼った。
ちなみにこの作業においては、よりスピーディに進めるために、四季報のページに貼る付箋は、あらかじめ20枚ほど剥いだうえで机に貼っておく。
冊子をめくる際に邪魔にならないよう、付箋を貼る位置も固定し整然とさせる。はっしゃんさんの場合は、冊子の右ページでは縦に掲載される企業名の下に、左ページでは「資本異動」のあたりに貼っているのだという。
チャート選抜の次は企業業績を確認し、実績を伴って株価が上がっていたかを見て行く。
ここでも、一定のパターンに従って甲乙を見分け、さらに絞り込みを進めていく。
■はっしゃんさんが『会社四季報』に付箋を貼っている様子
出所:本人制作の動画コンテンツ
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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