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【特集】「損切りはエントリー時期の見誤り」、理論株価でテンバガーを目指す技

すご腕投資家に聞く「銘柄選び」の技 はっしゃんさんの場合~第3回

登場する銘柄
ベイカレント・コンサルティング<6532>、SBSホールディングス<2384>、KeePer技研<6036>、バイク王&カンパニー<3377>

編集・構成/真弓重孝(株探編集部)、文・イラスト/福島由恵(ライター)

【タイトル】はっしゃんさん(ハンドルネーム・50代・男性)のプロフィール:
会社員でエンジニアとして勤め、2年前に運用資産3億円達成を機に独立
起業した成長株投資家。従業員持ち株会加入をきっかけに1990年後半
から株式投資を開始し、以降、2001年の911(米同時多発テロ)による
株価暴落時に企業の「月次」情報の観察の有効性を見出す。
30代で億り人に。その後は理論株価の活用でさらにパワーアップし着実に利益を
伸ばし、現在は4億円プレーヤーに。VTuber(バーチャルユーチューバー)として、ネット動画で投資情報を発信。
またSNS(交流サイト)やブログでも理論株価の値や注目銘柄がわかる「成長株Watch」や「月次Web」、『会社四季報』速読法などを公開している。
著書に『はっしゃん式成長株集中投資で3億円』(総合法令出版)、新刊の『決算書「3分速読」からの"10倍株"の探し方』(KADOKAWA)など。

第1回「波乱時も焦らない、月次から理論株価で4億円までの技」を読む
第2回「テンバガーを掴み損ねた反省から『低PERの呪縛』にさよなら」を読む

今回登場中のはっしゃんさん(ハンドルネーム)は、「長期投資」「集中投資」の方法で、投資に時間をかけずに利益を最大化させる「スロートレード」を実践し、資産を4億円以上に拡大させたすご腕さんだ。

足元のように乱高下する相場ではなおさらのことだが、株価の動きにドギマギしたり、いつ買えば(売れば)のいいのかと頭を悩ませたりしてしまう。

だが業績成長する企業に長期投資してリターンを狙ううえでは、短期の変動にあれこれ対策を取るのは「時間の無駄」というのがはっしゃんさんの考えだ。

理論株価を活用し、利益の拡大を目指す中で損失を最小に留める「利大損小」のルールを貫けば、ほったらかし投資ができるという。

今回は、「はっしゃん式理論株価」の中身と、それを投資にどう生かすのかを銘柄選びや売買のコツで見ていく。

目指すのは、リターンは大きく、損失は最小

最初に理論株価について触れる。そもそもの話と、はっしゃん式の理論株価の計算法を紹介するが、ご自身の知識や興味に応じて、次のページから始まる理論株価を使った取引のコツまで読み飛ばしてもらって構わない。

まず理論株価とは、理論的な観点から会社の将来の価値をはじき出して、現時点の「あるべき株価」を割り出したものだ。

その計算法は、「配当」をベースにしたり、会社が稼いだ資金から事業活動に必要な設備投資などを除いた後に残った「フリーキャッシュフロー」を基に計算したりと、様々な方法がある。

これに対して実際の株価は、業績などファンダメンタルズ要因のほかに、投資家の期待や思惑、そして機関投資家のポートフォリ調整、また昨今の日銀の金融緩和など、心理面や需給面の影響を受けて形成されている。

理論株価は、こうした"ノイズ"を排除した値になる。では、はっしゃんさんは、どのように理論株価を計算しているのか。

その柱は、企業の「事業価値」と「資産価値」の2つある。両者は企業の財務諸表から割り出し、事業価値は主に損益計算書から、資産価値は貸借対照表(バランスシート)から計算する。

具体的な計算法は以下の通り。

A.事業価値= EPS×ROA(総資産利益率)×150×財務レバレッジ補正
B.資産価値= BPS(1株当たり純資産)×割引率
理論株価= (事業価値+ 資産価値) × リスク評価率

――となる。

Aの事業価値は、利益の成長から理論値を割り出すもので、成長株投資を主眼とするはっしゃんさんにとって中核になる部分だ。

もう1つのBの資産価値は、どちらかといえば「下値のメド」を見極める役割となる。下値メドは一般に、企業の解散価値に相当するPBR(株価純資産倍率)1倍ともいわれているが、これに近い考え方で設定した値だ。

赤字企業の事業価値はゼロにしており、資産価値のみの評価となる。

ROEは「ROA×財務レバレッジ」の式を応用

Aの事業価値の算出に使うEPSは、経常利益 × 70% ÷ (発行済み株式数 - 自己株式数)で計算している。最終利益ではなく経常利益から計算するのは、法人実効税率や特別損益を勘案したものだ。

カギとなるのはこのEPSが今後成長するかどうか。それを見込むのに使うのが「ROA×150×財務レバレッジ補正」の部分だ。

ここで疑問に思う読者もいるだろう。はっしゃんさんはROE重視に切り替えたのに、上に示した計算式にはROEが見当たらないからだ。

鋭い読者はお気づきと思うが、ROEの代わりとして使っているのが、「ROA×財務レバレッジ補正」だ。前回記事で示したように、「ROE=ROA×財務レバレッジ」になる。

■ROAとROEの計算式
・ROA=(当期利益÷売上高)×(売上高÷総資産)
     【売上高利益率】   【総資産回転率】


・ROE=(当期利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資本÷自己資本)
     【売上高利益率】   【総資産回転率】   【財務レバレッジ】


ということは、事業価値を計算する中で、150と財務レバレッジの「補正」に、はっしゃんさんの独特の思いを込めていることになる。その中身は?

日本株の平均PER15倍を考慮

まず150を掛けるのは、上場企業の平均的なPER(株価収益率)やROAの水準を考慮しているからだ。

そのためにまず150を15 × 10に分解し、 (EPS × 15)×(ROA × 10)と計算している。

式の前半にあるEPSに15を掛けるのは、PER15倍を意味する。日本株の平均的なPERの水準であり、事業価値の計算はPER15倍が起点になっているのだ。

このPER15倍に、ROAを10倍したものを掛けて適性PERを算出する。ROAを10倍にするのは、資産効率による重み付けをして適正PERをはじき出すためだ。

上の計算式をROA20%の企業に当てはめると、(PER15倍)×(ROA20%×10)となり、この企業の適正PERは15×2=30倍になる。

これに「財務レバレッジ補正」を掛けて事業価値を出す。ROAに財務レバレッジを掛けるのはROEにするためだが、ポイントは「補正」した財務レバレッジを掛けていることだ。では、補正とは? 

自己資本が小さいなどの場合は財務レバレッジ補正で調整

その目的は、ROEの弱点ともいえる、過小資本の企業や利益は伸びてなくても自己資本の減少で、ROEが高くなる影響を少なくすることだ。

利益÷自己資本で計算するROEの場合、値が良くなるのは、

分子の利益が大きくなる場合と、
分母の自己資本が小さくなる場合

――の2通りある。

成長株は、前者のケースでROEが高くなるのが基本だ。利益が膨らむと、その一部が内部留保されて自己資本も大きくなる中で、利益の伸びが自己資本の伸びを上回ってROEが向上するのが理想形だ。

その反対に、利益が伸び悩んだ中で、自己資本の縮小でROEが改善することもある。この点を考慮したのが、「財務レバレッジ補正」になる。

この補正を施すことで、自己資本が過小で安定ないし安全性に欠ける企業の場合にROEが向上しても、その影響が出ない効果を出す。

自己資本が減ってROEが向上するケースは過大に評価しない

具体的には、財務レバレッジの逆数にあたる自己資本比率の値を使って、自己資本比率が低い企業では、事業価値が大きくならない配慮をする工夫をしている。

自己資本比率が低いということは、その分、借り入れを大きくしてレバレッジを高くした経営をしていることを意味する。

例えば、自己資本比率が80%であれば財務レバレッジは1.25倍、50%なら2倍、25%なら4倍となる。

はっしゃんさんは、自己資本比率が低い企業の事業価値が高くなり過ぎるのを避けている。その手段として、ROAは30%を上限とし、財務レバレッジを1~1.5倍の範囲で補正した。

これを事業価値の計算で使う「(EPS×15)×(ROA×10)×財務レバレッジ補正」の上限を当てはめると、

PER15倍 × ROA30% × 10 × 1.5 = 適正PER 67.5倍までを、事業価値として評価することになる。

一方、日本企業の平均ROAは5%程度。平均PER15倍にROA5%×10を掛け、これに財務レバレッジ補正の1を掛けると平均的な適正PERは7.5倍ということになる。

資産価値は、解散時に全額残らない事態を想定し調整

次にBの資産価値の計算においては、経営危機に陥った会社が、負債をすべて返済して保有資産を売却した場合に、決算書に記載された純資産がそのまま残るケースはまれであることを考慮する。

上の計算式で割引率とあるのは、純資産が残ることはまれである状況を反映して調整したもの。自己資本比率が低いほど減額幅が大きくなるようにして、BPS(1株当たり純資産)に掛ける値を50%~80%の範囲で設定している。なので、割引率とは、現在価値に引き直す作業ではない。

理論株価は先の事業価値と資産価値を加算して、リスクを加味して計算している。

時価総額の理論値と実勢値を検証すると、相関係数は0.8~0.9

こうした計算によってはじき出された理論株価が機能するかどうか検証するため、はっしゃんさんは、「理論株価に基づいて計算された理論時価総額」と、「実際の株価から算出した時価総額」との回帰分析を全銘柄について定期的に実施している。

回帰分析とは、2つの事柄にどれだけの相関性があるかを示す統計学の分析手法のこと。わかりやすい例は、身長と体重の関係だ。両者の相関関係が高ければ、「身長が170センチなら、体重は70キロくらい」という想定は概ね正しいことになる。

これを理論時価総額と実際の株価に基づく時価総額の関係にあてはめると、両者の相関性が高ければ、「理論時価総額から想定できる時価総額、ひいてはそこから算出できる株価」の見積りの確度が高まるわけだ。

分析の結果、理論値と実勢値の相関係数は0.8~0.9という。相関係数は相関の強さを0~1で表し、1に近いほど相関性が高い。

本人曰く、紹介した理論株価の計算式は、統計上の相関が高くになるよう逆算して考案したため、「相関係数が0.8~0.9になってしかるべき」とのことだ。

では、この理論株価を使ってどのようにキャピタルゲインを狙うのか。銘柄選び、そして買いと売りのタイミングの3つの場面で見ていこう。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



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