【市況】明日の株式相場に向けて=コロナバブル相場の終焉
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
きょうは取引時間中に香港株市場がプラス転換したことや、後場寄りに日銀のETF買い発動の思惑から日経平均が下げ渋り、目先底入れとみた投資資金の買いが流入した。ただ、目先底入れとみて買いを入れてきた投資資金というのはイコール個人投資家の資金。市場関係者によると「ここぞと買いに動いているのは個人のみ」であるという。
個人投資家の動向に詳しいネット証券のマーケットアナリストは「足もとの売買動向は、海外投資家が売り一辺倒で、これに加えて国内大手金融系機関投資家もパフォーマンス確保を優先して目先利益確定を急いでいる状況にある」と指摘する。日経平均はきょうまで7日続落で、きょうの安値まで7営業日合計で2800円近くも下げているとなれば、普通の感覚であれば買い向かって当然といえる。実際、目先はリバウンド局面に移行する可能性も十分あると思われるが、「その内実は個人の一手買いで、根拠に乏しい値惚れ買いであるということに不安を禁じ得ない」(同)という。きょう日経平均がつけた下ヒゲが目先の相場転換を示唆するとは限らない。今回の調整はまだ続きがあることを前提に慎重に構えたい。
まず、日経平均は8月末を境に9月中旬にかけて急騰したが、この背景がなんであったかを考える必要がある。菅前首相が次期総裁選に不出馬を決めたことで政権が代わることへの期待感が原動力となった。しかし、次期総裁が誰になるかは関係なく、とにかく買う、あるいは空売り玉を買い戻すというアクションは少なくとも実体が伴ったものではない。
その後、総裁選が告示された9月17日あたりから相場は崩れ出した。そして29日の投開票で岸田新総裁が選出されたわけだが、ここから日経平均の下げが一気に加速した。これは、株価急落の引き金を引いたのはあくまで米国のスタグフレーション懸念や中国の不動産バブル崩壊に対する警戒感であったが、結果的に菅氏の退陣表明で一気に買いが流入し、次期総裁が決まったところで一変、総売りに変わった形だ。
何のことはない“大山鳴動して鼠一匹”、足もとの急落は菅前首相の退陣表明前の水準に戻ってきただけである。そして、この間に海外では、中国の恒大集団問題と米国のインフレ警戒モード(長期金利上昇)が大きく顕在化して悪材料としてマーケットに覆い被さっている。菅前首相退陣前と比較して、確かに新型コロナウイルスの収束は急速に進んだ。しかし、それは本当に株式市場全体にとってプラス材料なのか微妙な部分がある。例えばリベンジ消費関連株などに投資資金を誘導する形となったが、逆にウィズコロナ下で収益が落ち込まないもしくは伸びる企業の株は軒並み売られている。見方によればコロナバブル相場の終焉を意味している。一方、米国と中国がそれぞれ爆弾を抱えているような状況に陥った。インフレ懸念と景気減速懸念が同時進行する状況はゴルディロックス相場とは真逆の環境をイメージさせ、投資家にとって非常に難儀である。
ただし、企業のファンダメンタルズは下値リスクに対する強力な車輪止めとなる。東証1部の平均PERで15.6倍、日経平均で13.8倍の水準は、企業業績がここから下振れすることがなければ、それほど割高とはいえない。足もとの原油価格やバルチック指数の動向などが、2008年リーマン・ショック直前に似ているという不気味さは確かにあるが、雰囲気だけで過剰に警戒するのではなく、状況をよく見ていくことが肝要となる。
個別では、アフターコロナ関連でアイビー化粧品<4918>や、航空機向けスポンジチタンを手掛ける東邦チタニウム<5727>、国土強靱化関連でピーエス三菱<1871>、好業績で割安感の際立つ旭化学工業<7928>、医療DX関連のMRT<6034>などに注目したい。
あすのスケジュールでは、黒田日銀総裁が日米財界人会議で講演する。海外ではニュージーランド中銀の金融政策決定会合、ポーランド中銀の金融政策決定会合、8月のユーロ圏小売売上高、9月のADP全米雇用リポートなど。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2021年10月05日 19時08分