【特集】桂畑誠治氏【いよいよ9月、上昇相場へのシフトチェンジはいつ?】(2) <相場観特集>
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
―パウエル氏のジャクソンホール講演通過で相場は変わるか―
週明け30日の東京株式市場は日経平均が反発に転じた。米国株市場は相変わらず強調展開にあり、前週末は主要3指数が揃って反発し、ナスダック総合指数とS&P500指数は過去最高値を更新した。出遅れ感の強い東京市場だが、果たして9月相場では米国市場にキャッチアップを目指す形で巻き返しが期待できるのかどうか。第一線で活躍する市場関係者2人に今後の株式市場見通しと物色の方向性について意見を聞いた。
●「日経平均のボックス離脱には時間要す」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
東京市場は前週からリバウンド局面に移行しているが、これは米国をはじめとする世界株高の流れに後押しされたものだ。ただ、日本国内に買い材料が乏しく、結論から言えば9月中も日経平均はボックス圏の往来にとどまり、下値が2万6500円近辺、上値が2万8500円近辺と2000円幅のレンジでの上げ下げが続くとみている。
米国株式市場は好調が続いており、直近マーケット関係者の関心が高かったジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演も想定範囲内の内容であったことで、全体相場は買いが優勢となった。テーパリングの年内開始を示唆したが、これについて市場は織り込み済みだったと思われ、一方でパウエル氏の利上げに慎重なスタンスはこれまでと変わらず、株式市場に安心感をもたらした。
差し当たっては今週末3日に発表が予定される8月の米雇用統計の注目度が高いが、市場コンセンサスの75万人増を大幅に上回るようなことがなければ、テーパリングの前倒しや緩和縮小ペースなどへの思惑にはつながらないとみている。一方、失業率についても5.2%のコンセンサスを大きく下回ることは考えにくく、金融政策への警戒感は限定的なものにとどまりそうだ。
ただ、日本株はひと頃のように米株市場との連動性が乏しくなっている。新型コロナ感染拡大の影響が経済に影響を及ぼすなか、緊急事態宣言が計画通り9月12日に解除できない可能性も高そうで、国内外機関投資家は積極的な買いを入れにくい。国内での明確な買い主体が不在のなか、今のところ上値余地は限定的と言わざるを得ない。
もっとも、世界株高の流れのなか、日本株が大きく売り込まれる要素も乏しいと考えられる。したがって、先物絡みで深押しがあれば買い向かって報われる公算は大きい。物色対象としては、中長期視野で構造的な需要拡大が見込まれる半導体や、足もとサプライチェーンの問題で生産調整を強いられている自動車も需要自体は旺盛であり、いずれも押し目形成場面は買いを入れる好機となっている可能性がある。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
株探ニュース