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【特集】東京五輪通過、次は万博+カジノで「関西銘柄」に復権の風 <株探トップ特集>

東京五輪通過で、2025年の大阪万博が焦点に。IR事業も一歩前進、大阪に吹く風は次第に熱さを増すことになりそうだ。

―頼みの綱は55年ぶり大阪万博、日本経済のカンフル剤に期待感―

 熱戦が続いた東京五輪が幕を閉じた。コロナ禍での開催に反対論も出るなど、歓迎ムード一色とは程遠いものとなったが、とにもかくにも1年延期のすえ開催された世界的大イベントは通過した。五輪閉幕で、次の焦点は「2025年大阪・関西万博(以下、大阪万博)」に移ることになる。また、7月20日には米MGMリゾーツ・インターナショナル<MGM>とオリックス <8591> 連合が大阪府及び大阪市に対し、カジノ を含む統合型リゾート(IR)事業に提案審査書類を提出し唯一の応募者となった。いったんはMGMの業績不振などにより暗礁に乗り上げかけたIR事業計画が一歩前進した格好だ。万博そしてIR、いずれも舞台はドリームアイランド「大阪・夢洲(ゆめしま)」。万博+カジノで再注目の「関西銘柄」を点検した。

●「投資テーマとしての魅力は十分」

 パンデミック下での五輪開催に、訪日客を当て込んだビジネスは苦汁を飲んだ。株式市場でも、あれほどもてはやされたインバウンド関連株に往時の面影はない。ただ、25年には、1970年以来55年ぶりとなる大阪万博が控えている。会場建設費1850億円、会期184日間(25年4月13日~10月13日)、想定来場者数は約2820万人を見込むだけに、その経済的な波及効果は大きく、新型コロナウイルスの感染拡大で低迷する日本経済のカンフル剤になることが期待される。コロナ禍での開催準備なだけに、参加国の招致については苦戦していると伝わるが、それでもアフターコロナを見据えれば、徐々に状況は好転するとみられる。

 国内中堅証券のストラテジストに大阪万博について意見を求めた。「万博は25年の開催で、準備期間も含めれば遠いようで近いといえる。東京五輪同様に2回目の開催となるわけだが、五輪は新型コロナの影響で経済効果は希薄となってしまったものの、少なくとも万博が開催される頃には新型コロナは克服されているはずだ。それを前提とすれば、それなりの経済効果に加え、株式市場においても投資テーマとしての魅力は十分にある」と話す。

●“夢洲”でシンクロする土地持ち銘柄

 万博関連とIR整備が計画されるビッグプロジェクトの舞台は同じ大阪湾の人工島・夢洲。当然銘柄もシンクロするだけに、なかでも同島の用地に絡む銘柄への投資家の関心は高い。実際に土地を所有しているものから思惑までさまざまだが、いわゆる“土地持ち企業”と称される銘柄は折に触れて動意してきた。

 特に、夢洲に物流用地を取得している山九 <9065> 、上組 <9364> などに投資家の視線は熱い。上組が10日に発表した22年3月期第1四半期の連結営業利益は、前年同期比34.0%増の77億5400万円に拡大。上期計画の115億円に対する進捗率は67%に達している。また、夢洲関連としてはヨコレイ <2874> 、杉村倉庫 <9307> [東証2]、櫻島埠頭 <9353> [東証2]の常連3銘柄も思惑買いを誘いそう。このなか杉村倉は、前週末13日に急動意。引けは伸び悩んだとはいえ一時73円高の618円まで買われる人気となった。海運株人気の波及で倉庫株に物色の矛先が向かったとの見方もあるが、いずれにしても「夢洲関連」に再び関心が高まるなか注目は怠れない。

●建設で大林組、五洋建など

 大阪万博まで4年を切るなか、建設関連にもスポットライトが当たりそうだ。地元関西地盤では大林組 <1802> をはじめ南海辰村建設 <1850> [東証2]、住友電設 <1949> 、加えて海上土木の五洋建設 <1893> にも注目。新型コロナ感染拡大の影響が業績に影を落とす企業も少なくなく、いずれも株価は冴えない展開が続く。ただ、大阪万博に加えカジノの誘致が成功すれば、関西経済復権の追い風を背景に中長期の視点で妙味が出てくる。

●警備で東洋テック、シップHD

 更に、大阪万博は開催期間が半年にも及ぶうえ、来場者数は2800万人超を想定するだけに、警備保障関連の出番到来となる。こうしたなか、セコム <9735> グループで関西を地盤とする東洋テック <9686> [東証2]は、大阪万博のオフィシャルパートナーに名を連ねており、現在のところ商いは薄いものの、いずれ活躍場面もありそうだ。また、医療・保健・福祉・介護・サービスの5分野で展開するシップヘルスケアホールディングス <3360> は、警備などを手掛ける大阪地盤の日本パナユーズを傘下に擁しており面白い存在といえる。

●忘れちゃいけない三精テクノ

 大阪万博関連で忘れてはいけないのが三精テクノロジーズ <6357> [東証2]だ。同社は、1970年の大阪万博で、エレベーターやオートロード(動く歩道)をはじめ、舞台機構や各種遊戯機械を提供。更に、モントリオール万博や、つくば博、愛・地球博における実績も豊富なうえ、地元大阪企業という点で期待感と思惑が先行する。ただ、国内外の遊園地・テーマパーク、劇場などエンターテインメント業界において、新型コロナの感染拡大防止策の継続が余儀なくされ事業環境は厳しい状況が続いている。株価は長期のスパンでみれば、底値圏で方向感の定まらない展開が続くものの、大阪万博へ焦点が移るなか、投資家の関心が特に高い銘柄なだけに目は配っておきたい。

●MGM・オリックス連合、大阪IRに1兆円投資

 一方のIR事業だが、MGM・オリックス連合が提案審査書類の提出前後に、複数のメディアで「総額1兆円規模の投資」と伝わったことで、急速に注目が集まった。今後、大阪府市IR事業者選定委員会の審査を経て、9月ごろに設置運営事業予定者を選定することになる。これについて、オリックスに取材すると「総額1兆円規模の投資を行い、(提案審査が通れば)20年代後半に開業を予定している」(広報)と話し、一部報道で出ている「28年開業」については否定した。また、同社では大阪を選択した理由として、「発祥の地であり、不動産のネットワークもある」(同)ことなどを挙げた。

 この大阪IR事業については、いまだ先行き不透明感も強いが、「いわゆる“大阪カジノ”については、なかなかすんなりとはいかない事情もあるようだ。しかし、米国のカジノ運営会社でホテルなども展開するMGMと協業する形でオリックスが投資額1兆円の提案書を提出したことは、実現に向けた強力な布石となるとみている」(前出のストラテジスト)と前向きに評価する声も出ている。

●カジノで日金銭、オーイズミ

 カジノ関連では、大阪に本社を置き貨幣処理、硬貨計数機大手で紙幣鑑別機を手掛ける日本金銭機械 <6418> 、パチスロなどメダル計数機最大手のオーイズミ <6428> などに注目。ただ、両社ともに新型コロナの感染拡大により厳しい事業環境が続いている。こうしたなか、日金銭が4日発表した22年3月期第1四半期の連結営業損益で5100万円の黒字(前年同期は4億4700万円の赤字)に浮上した。同社は、世界でゲーミング関連機器の販売、サービスを手掛けており、実績とノウハウが豊富なことからカジノ関連の中核として再び輝きを取り戻す日も近いかもしれない。また、オーイズミが12日発表した同第1四半期営業利益は、前年同期比2.5倍の5億7400万円で着地している。

●セガサミーは横浜で攻勢

 セガサミーホールディングス <6460> は6月11日、世界有数のリゾート施設運営企業ゲンティン・シンガポール・リミテッド(GENS)と協業し、横浜市におけるIR事業への参画を目指すことを発表。横浜市の実施する特定複合観光施設設置運営予定者に応募、同市に提案書を提出し受理されたとしている。ALSOK <2331> 、鹿島建設 <1812> 、大林組、竹中工務店(大阪市中央区)とコンソーシアムを組成し応募しており、大阪のIR事業とともに目が離せない状況が続きそうだ。

●MICEでナイスな翻訳センター

 IR事業はカジノだけではなく、国際会議場などMICE(マイス)施設の設置も目指す。現在、新型コロナの感染拡大で国際会議はストップしているが、アフターコロナの世界では、再び増加することが予想される。国際会議の増加は、同時通訳、翻訳などの需要が拡大することになり、大阪に本社を置き幅広い専門分野で翻訳事業を手掛ける翻訳センター <2483> [JQ]にもビジネスチャンスが広がることになる。22年3月期通期業績見通しは、営業利益で前期比79.3%増の7億5000万円を計画。新型コロナの影響による需要低迷からの回復を背景に、コアビジネスである翻訳事業が順調に推移している。

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