【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─この局面での物色テーマ&銘柄は?
経済評論家 杉村富生
「この局面での物色テーマ&銘柄は?」
●水素活用がメーンテーマに浮上!
アメリカ議会上院は1兆ドル(約110兆円)規模の超党派インフラ投資法案を可決、道路、橋梁、高速インターネットなどの整備が進むことになる。さらに、民主党は子育て・教育支援、気候変動対応などに10年間で3.5兆ドル(約385兆円)の財政支出を計画している。バイデン米大統領の選挙公約を踏まえた内容である。
こうした動きを受け、アメリカ市場ではEV(電気自動車)充電、5G(次世代通信システム)、エンジニアリング、建設資材、ゼネコン、再生可能エネルギーなどの関連セクターが人気を集めている。日本市場では脱炭素(カーボンニュートラル)の切り札として 水素の活用が脚光を浴びるだろう。
トヨタ自動車 <7203> は住友商事 <8053> 、千代田化工建設 <6366> [東証2]などと組み、水素サプライチェーンの構築を目指している。産業容器メーカーでドラム缶シェア首位級のJFEコンテイナー <5907> [東証2]は豊田市にある水素ステーションに水素貯蔵タンクを納入した実績がある。
イーレックス <9517> は山梨県においてベンチャー企業と組み、岩石由来の高効率水素製造システム、および水素専焼発電の実験を行っている。水と岩石由来の触媒を用いて水素を生産する。コストが安いのが強みだ。話題の戸田工業 <4100> 、エア・ウォーター <4088> の水素製造はメタンを原料とする。
●アメリカ向けに強い企業に狙いを!
一方、アメリカ経済はコロナ禍をものともせず、絶好調である。今年のGDP成長率は7%を超える見通しだ。企業業績(S&P500指数ベース)は1-3月期の52.5%増益に続いて、4-6月期(約8割の企業が発表済み)は9割の大幅増益となっている。こうした状況下でも、バイデン政権は景気対策の手を緩めようとしない。すごい話じゃないか。
30兆円の景気対策を「やるの、やらないの」と迷走気味の菅政権とは大きな違いがある。やはり、ここはアメリカだろう。アメリカ向け売上高構成比率の高いインフラ投資関連企業の日本製鉄 <5401> 、ダイフク <6383> 、アマダ <6113> 、THK <6481> 、ファナック <6954> 、NTN <6472> などはジリ高が期待できる。
このほか、注目のセクターとしては産業廃棄物処理、リサイクル業がある。非鉄、鉄、貴金属市況の高騰に加え、仕事量の増加を背景に揃って好業績だ。エンビプロ・ホールディングス <5698> 、松田産業 <7456> 、フルヤ金属 <7826> [JQ]、ミダック <6564> 、イボキン <5699> [JQ]などの堅調ぶりが際立っている。
テセック <6337> [JQ]、テラプローブ <6627> [東証2]、シキノハイテック <6614> [JQ]など 半導体関連セクターは好業績にもかかわらず、株価はさえない。利食い売り優勢といった感じである。しかし、半導体企業の巨額の設備投資は継続中だ。「半導体不足は2023年央まで続くだろう」と予測する向きが多い。
ただ、急騰してきただけに、押し目買いのタイミングは難しい。外資系証券は「このセクターは“冬の時代”を迎えようとしている」と。まあ、株価が言わせている面もあろうが、少なくとも東京エレクトロン <8035> など主軸株に対する機関投資家の買いは引っ込む。当面、このセクターは下値模索の展開となろう。
2021年8月13日 記
株探ニュース