【市況】来週の相場で注目すべき3つのポイント:ソフトバンクGなど決算終盤戦、7月米CPI、7月工作機械受注など
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■株式相場見通し
予想レンジ:上限28500-下限27500円
来週の日経平均は堅調か。企業決算が終盤に入る。国内は祝日の関係で立会が4営業日と限られるが、それでも企業決算の数は前の週と同水準の1100社以上となる。外部環境の不透明要因(新型コロナ感染動向、菅政権の求心力低下など)がくすぶる限り、海外投資家による本格的な買いは期待できそうになく、指数は引き続き方向感が乏しくなりそうだが、個人投資家を中心に決算を受けた個別株物色は活発となりそうだ。これまでは製造業を中心に好決算が多く、第1四半期時点から通期計画を上方修正する企業も相次いでいる。来週は米国での物価関連の指標などには注意が必要だが、好調な企業決算を背景に堅調な展開が期待できそうだ。
月曜日が祝日のため東京市場は休場となるが、連休明けは雇用統計発表後の2営業日分の米株市場の動向を反映することになる。7月の非農業部門雇用者数は94万人増と市場予想の87万増を大きく上回った。景気回復期待の高まりから低下基調にあった米10年国債利回りも大きく反発し、米株市場では景気敏感株が広く買われた。世界の景気敏感株と位置付けられる日本株と米長期金利の連動性は高いため、週明けの日本株への追い風にもなりそうだ。日経平均は2月半ばを、米長期金利は3月末をそれぞれピークに低下基調を長らく辿ってきただけに、米長期金利が本格的な反発基調を辿れるとなれば、コロナ感染収束後には日経平均の調整局面脱出も期待される。
また、10日にはソフトバンクグループ<9984>が決算発表する。前回の本決算発表時には過去最高となる最終利益を叩き出したが、株価はむしろそこから本格的な下落トレンドが始まり、日経平均の軟調さにもつながってきた。相場全体のムードも左右しかねないため、決算と株価反応に注目だ。
そのほか、来週は米国で消費者物価指数(CPI)が発表される。前回6月分のCPIでは前月比で伸びが鈍化するとの市場予想を大幅に上回り、前月比での伸びは2倍ほど加速した。今回、市場予想では前月比で伸びが半分ほどに鈍化する見込みだが、仮に今回も市場予想を大きく上回るとなると、これまで米連邦準備理事会(FRB)が繰り返し強調し、投資家の間でも浸透してきた「インフレは一過性」との前提が揺らぐ恐れがある。可能性としては低いが、その場合、雇用統計を受けて反発してきている米長期金利が上昇傾向を強める可能性がある。市場では“インフレ加速・長期金利上昇”を前提としたリフレトレードが再来する可能性もありそうだ。
■為替市場見通し
来週のドル・円は、下げ渋りか。7月27-28日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、雇用情勢の改善とインフレ高進で金融緩和を弱めるタイミングが近づいているとの見解が表明された。また、7月雇用統計の改善を受けて金融緩和策の縮小時期は多少早まる可能性がある。8月11日発表の7月消費者物価指数(CPI)とコア指数の上昇率は引き続き高水準と予想されており、市場予想と一致、または上回った場合、金融緩和縮小への思惑が一段と強まり、リスク回避的なドル売りはさらに縮小する可能性がある。
また、欧州中央銀行(ECB)はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を維持していること、英中央銀行による金融緩和策は長期化するとの見方が増えていることも意識されそうだ。NZ、カナダを除く主要中央銀行は現行の金融緩和策を長期間維持する方針を堅持しており、金利要因でドル安が進行する可能性は低いとみられる。
■来週の注目スケジュール
8月9日(月):株式市場は祝日のため休場(山の日の振替休日)、中・消費者物価指数(7月)、中・生産者物価指数(7月)、米・JOLT求人件数(6月)、米・アトランタ連銀総裁が講演、など
8月10日(火):景気ウオッチャー調査(7月)、決算発表:ソフトバンクG、独・ZEW期待指数(8月)、米・クリーブランド連銀総裁が講演など
8月11日(水):工作機械受注(7月)、米・消費者物価コア指数(7月)、米・カンザスシティー連銀総裁が講演、サムスン電子が新製品発表会、など
8月12日(木):国内企業物価指数(7月)、東京オフィス空室率(7月)、欧・ユーロ圏鉱工業生産(6月)、米・生産者物価コア指数(7月)、国際エネルギー機関(IEA)月報、石油輸出国機構(OPEC)月報、など
8月13日(金):米・ミシガン大学消費者信頼感指数速報(8月)、など
《YN》
提供:フィスコ