【市況】国内株式市場見通し:企業決算終盤、ソフトバンクG決算に注目、米国物価指標にも留意
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■大幅反発、製造業中心に好決算相次ぐ
今週の日経平均は大幅に反発した。週初8月2日は前の週末にかけて突っ込み気味に大きく下げていた反動から買い戻しが入り大幅反発、日経平均は一時27834.60円まで上昇した。しかし、週明けの米株式市場で7月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数が予想外に低下し、米10年国債利回りが再び1.2%を割り込むと、景気減速懸念が強まった。これを受けた翌3日の東京市場では売り優勢となり、日経平均は139.19円安の27641.83円と反落。
その後、4~5日かけては、中国当局による産業規制の動向や新型コロナウイルス新規感染者数の推移などを睨みながら、日経平均は27500円を挟んだ一進一退が続いた。企業決算の発表が本格化するなか、決算を受けた個別株物色が主体で、指数の方向感は出にくかった。
日経平均の27500円は小節目として意識されやすいほか、同水準割れではバリュエーション面での割安感もあるため押し目買いが入りやすかった一方、200日移動平均線がこの週に位置していた27800~27900円近辺では戻り待ちの売りに押されやすい状況が続いた。
週末は、新規失業保険申請件数の減少を背景に労働市場の改善期待が強まった米株高を追い風に、日経平均は91.92円高の27820.04円と続伸。一時は27888.87円まで上昇したが、国内3連休前に7月の米雇用統計を直前に控えていた中でもあったため、200日線が位置する27900円近辺まで上昇した後は上値が重くなった。ただ、製造業を中心に好決算や業績予想の上方修正が相次いでいたことで、好決算銘柄への買いが全体を底上げした。
主力企業の決算では、業績予想の上方修正に加え大幅な増配を発表した日本郵船<9101>が急伸し、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>なども大幅に上昇した。日本郵船などの株価は週間で3割以上も上昇した。そのほか、第1四半期大幅増益で通期予想も引き上げたダイキン<6367>が一気に昨年12月高値を突破し、上場来高値を更新。スプレッド改善などで業績予想を大幅に上方修正し、昨年は無配で今期未定としていた中間配当の実施も決めた日本製鉄<5401>など鉄鋼株も強かった。一方、神戸製鋼所<5406>は鉄鋼事業の調整後経常利益が下方修正されたことがネガティブサプライズとなり週末に急落した。
■雇用統計受け長期金利反発、景気敏感株への買いに期待
来週の日経平均は堅調か。企業決算が終盤に入る。国内は祝日の関係で立会が4営業日と限られるが、それでも企業決算の数は前の週と同水準の1,100社以上となる。外部環境の不透明要素(新型コロナウイルスの感染動向、菅政権求心力の低下など)がくすぶる限り、海外投資家による本格的な買いは期待できそうになく、指数は引き続き方向感が乏しくなりそうだが、個人投資家を中心に決算を受けた個別株物色は旺盛となりそうだ。これまでは製造業を中心に好決算が多く、第1四半期時点から通期計画を上方修正する企業も相次いでいる。来週は米国での物価関連の指標などには注意が必要だが、好調な企業決算を背景に堅調な展開が期待できそうだ。
連休明けは7月の米雇用統計の結果を受けた米株市場の動向を吸収することになる。月曜日の東京市場が祝日で休場となるため、雇用統計発表後の2営業日分の米株市場の動向を映すことになる。7月分の非農業部門雇用者数は94万人増と市場予想の87万増を大きく上回った。景気回復期待の高まりから低下基調にあった米10年国債利回りも反発し、週末の米株市場では景気敏感株が広く買われた。世界の景気敏感株と位置付けられる日本株と米長期金利の連動性は高いため、週明けの日本株への追い風にもなりそうだ。日経平均は2月半ばを、米長期金利は3月末をそれぞれピークに低下基調を長らく辿ってきただけに、米長期金利が本格的な反発基調を辿れるとなれば、コロナ感染収束後には日経平均の調整局面脱出も期待される。
また、10日にはソフトバンクG<9984>が決算を発表する。日経平均への指数寄与度も大きいだけに注目される。前回の本決算発表時には過去最高となる最終利益を叩き出したが、株価はむしろそこから本格的な下落トレンドが始まり、日経平均の軟調さにもつながってきた。相場全体のムードも左右しかねないため、決算と株価反応に注目だ。
■リフレトレード再開は近いか
来週は米国で消費者物価指数(CPI)や企業物価指数(PPI)が発表される。前回6月分のCPIでは前月比で伸びが鈍化するとの市場予想を大幅に上回り、前月比での伸びは2倍程加速した。今回、市場予想では前月比で伸びが半分程に鈍化する見込みとなっているが、仮に今回も市場予想を上回り前月比で伸びが加速するとなると、これまでFRBが繰り返し強調し、投資家の間でも浸透してきた「インフレは一過性」との前提が揺らぐ恐れがある。可能性としては低いが、その場合、雇用統計を受けて反発してきている米長期金利が上昇傾向を強める可能性がある。市場では“インフレ加速・長期金利上昇”を前提としたリフレトレードが再来する可能性もありそうだ。
■景気ウォッチャー調査、7月工作機械受注、米7月CPIなど
来週は9日に中国7月消費者物価指数、中国7月生産者物価指数、国内市場は山の日振替休日で休場、10日に7月景気ウォッチャー調査、独8月ZEW景況感指数、11日に7月工作機械受注、米7月消費者物価指数(CPI)、米7月財政収支、12日に7月都心オフィス空室率、米7月生産者物価指数(PPI)、13日に8月限オプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)などが予定されている。
《FA》
提供:フィスコ