【市況】【植木靖男の相場展望】 ─目先波動、短期波動を峻別せよ!
株式評論家 植木靖男
「目先波動、短期波動を峻別せよ!」
●日経平均反発への道標となる2銘柄を注視
東京市場は6月中旬以降、振幅の大きい下げ相場に突入した。その後、日経平均株価はわずか1カ月強でおよそ7%下げて止まった。こうした急激な下げの背景として、市場関係者は以下の理由を挙げている。
まず、中国リスクだ。中国政府が大手テックを中心に中国企業に対する規制を強化している。これを警戒した香港、上海市場が急落した。中国はわが国にとって今や米国を抜いて最も貿易量が多い相手国、しかもお隣だけにその影響は無視できない。
次に新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大だ。8月中旬には東京都の1日当たりの新規感染者数は1万人に達するとの見方も出てきた。いま市場はこれを織り込みつつあるところ。景気への影響も無視できなくなってきている。
このほか、需給の悪化もある。個人の信用買い残は思ったほど減少していない。加えて、海外筋の売りも続いている。なぜ売るのか、いろいろ噂もあるが定かではない。
ともかく、8月に入って下げ止まりからもみ合いに入っている。ここで悩ましいのは、このもみ合いをどうみるのかである。
目先波動としては、下げ相場の中での中段のもみ合いであろう。とすれば、7月30日の2万7283円(終値ベース)を下限とし、8月2日の2万7781円を上限とする、ごく小さいレンジをまず上抜くのか、下抜くのかである。仮に上抜くにしても1日だけでは駄目。明確に上抜けば当面戻り歩調か。でなければ、下値模索は不可避であろう。としても、下値はそれほど深くはない。なぜなら、2月高値からの調整も半年近くを経過しており、大勢上昇相場の中では日柄的に調整期間としてはもう十分だからだ。20年の春のような売り思惑による破壊的な下げにはならないとみる。ましてワクチン接種率もさらに上昇すれば、いずれ欧米が歩んだコロナ禍からの経済再開が期待できるとの見方がある。であれば、深押しはないだろう。
もっとも、今年の8月は八白土星月であり、荒れるとされる二日新甫(しんぽ)だ。十分な警戒は必要だろう。できれば、いま健闘している米国株が8月は上昇継続となることを祈りたい。
もう一つ、日経平均株価への寄与度が高いソフトバンクグループ <9984> とファーストリテイリング <9983> の2銘柄だが、その調整も半年目に入り、いつ自律反発してもよいはず。日経平均反発への道標として見守りたい。
●投資手法を臨機応変に見直しも
さて、こうした展開の中、物色はどのような方向をみせているのか。8月に入ってのもみ合いでは明らかなグロース株、バリュー株といった特徴はみられない。さらに、4-6月期決算の発表が本格化する中、好決算銘柄が集中的に買われることもなく、まったくまちまちの動きである。いわば理屈が通用しにくい相場なのだ。だとすれば、負けが込む投資家は従来の考えに固執せずに手法を修正すべきであろう。
かつての相場師達は、負けが込むといち早く手を替えるすべを心得ていた。時代性、材料性、罫線(チャート)の三原則のうち、どこに重点を置くかを替えるのはその一例である。
視界不明瞭な局面だが、次の銘柄に注目してみたい。
まずミスミグループ本社 <9962> だ。社名を聞いただけでは一般の人はどんなサービスを提供しているのか分からないだろう。そこが面白いし、出遅れている一因でもあろう。業績はよい。
ラクス <3923> も面白そうだ。クラウド事業の月次売上高は前年同月比で30~40%の伸びをみせている。手を出しにくいところがミソ。また、東京エレクトロン デバイス <2760> にも注目。5年前60円だった配当が今期は175円を予定している。
2021年8月6日 記
株探ニュース