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【特集】ギグワークス Research Memo(4):個人向け新プラットフォーム「GiG Works Basic」が本格稼働

ギグワークス <日足> 「株探」多機能チャートより

■ビジネスモデル

1. ヒト・スキルのシェアリングを行うオンデマンドエコノミー事業
ギグワークス<2375>のビジネスモデルは、“IT関連の仕事を中心としたマッチングプラットフォーム”に特徴がある。依頼を受ける仕事は多岐にわたり、毎月1,000社以上から仕事を受ける。同社は“パソコン家庭教師”から出発した経緯もありIT関連(設置、トラブル対応、システム開発など)を得意とするが、現在ではIT関連以外(販売、コールセンター、調査など)も増えた。IT関連での事例としては、パソコンやタブレットのキッティング、アンテナ基地局設置、バス停工事(IoT対応)などがある。大手通信会社や大手SI会社、外資系PC会社など大企業からの依頼が多く、継続的なパイプを持つのが同社の強みである。IT関連以外の事例では、フードデリバリーサービス企業に対しての店舗営業、店頭でのPCや家電の販売、多言語コールセンター、ミステリーショッパー、製品リコール、補助金・助成金の事務処理などがある。特に全国規模での短期集中の依頼は同社でなければ受け手がいない場合が多い。これまで依頼主は比較的大きな法人が主だったが、今後は中小企業や個人向けでも伸ばしていく方針だ。

創業以来、同社は、累計で695万件を超えるマッチングを行い、多様な働き方を支援してきた。仕事を行うのは、同社の従業員とともに10万人を超える登録ギグワーカー(登録スタッフ)である。ギグワーカーには、スキルの高いフリーランスが多く、常時雇用ではないため、同社の固定費負担は極力抑えられる。ギグワーカーにとっては、同社が営業して企業から様々な仕事を取ってきてくれ、自分に合ったライフスタイルで働くことができ、スキルのアップデートも図れるというメリットがある。

同社のプラットフォーマーとしての役割として重要となるのが、「登録ギグワーカーのスキル・実績・評価の管理」と「マッチング」である。「登録ギグワーカーのスキル・実績・評価の管理」に関しては、教育の支援をすることによりスキルアップを促進する、覆面調査により実態に即した評価を行うなど、様々な工夫をしている。「マッチング」に関しては、システムによる自動的なマッチングも行うが、同社スタッフによるきめ細かな調整作業も強みである。同社の社員がプロジェクト管理をしっかり行う業務委託もあれば、依頼主の要望で派遣契約にも対応するなど、多様な形態を提案できる。

2020年には、ギグワーカー(働き手)とクライアント企業(発注者)の間で、仕事の受発注を直接成立可能とするプラットフォーム「GiG Works Basic」の提供を開始した。クライアント企業は、仕事の募集から、契約の締結、委託報酬料の支払いまでを一括して「GiG Works Basic」サイト内で行うことができる。また、利用料金に関しては、「仕事成立の際に支払報酬額の10%」となっており業界標準よりも廉価に利用できる。ギグワーカーは「GiG Works Basic」サイトを通じて、経歴、保持するスキルの一覧、これまでの受託実績内容の履歴、企業からの評価を表示することで、自己アピールができ、利用料金は無料である。これまでは、同社が働き手と発注者の間に入り、企画・調整業務などを行ってきたが、新プラットフォーム「GiG Works Basic」では、サイト内で働き手と発注者が直接コンタクトし、受発注を行えるようリニューアルした。同様のサイトサービスは、クラウドワークス、ランサーズなども展開しており、利用者数を増やしている。2021年10月期は、本格的に広告宣伝やシステム改善に積極投資を行う予定である。

2. オンデマンドエコノミー事業のKPI
同社は、KPI(重要業績評価指標)として「ユニークワーカー数※」と「お仕事斡旋数」を四半期ごとに公表している。「ユニークワーカー数」は、その四半期に稼働した人数であり、何種類の仕事を何回しても1人とカウントする。2021年10月期は第2四半期までの累計で6,428名(前年同期比40.6%増)が稼働した。「お仕事斡旋数」は創業以来の累積件数であり、2021年10月期第2四半期末に695万件に達した。四半期ごとの件数推移をみても、着実にマッチングが行われていることがわかる。

※その年度の積み上げ(累積)の数値であり、第1四半期の数値は正味の稼働人数だが、第2四半期以降の数値はその年度に稼働した人数の累計


2021年10月期第2四半期のオンデマンドエコノミー事業の売上高は、前年同期比32.9%増の10,407百万円、セグメント利益は同76.8%増の1,497百万円と好調に推移した。四半期ごとの推移では、2020年10月期第4四半期(8月-10月)以降、大型スポット案件の受注やコロナ禍からのV字回復が数字に表れている。

3. 成長続けるシェアリングエコノミー事業
同社は、スペースのシェアリングも行っている点に特長がある。2015年から参入したシェアリングエコノミー事業ではオフィススペースの共有を行っており、利用するワーカー(個人事業主)にノウハウ共有やスキルアップ支援するという価値も提供している。

同社のシェアリングエコノミー事業は連結子会社のアセットデザインが展開しているシェアオフィスサービスが主体であり、「THE HUB」のブランドを中心に東京・神奈川・愛知・大阪で65拠点を構える。半数以上の店舗は直営店、残りは運営受託店である。2020年10月期には、藤田観光<9722>と業務提携し、新宿ワシントンホテル、東京ベイ有明ワシントンホテル内にシェアワークプレイス「THE HUB」を出店したのに加え、北大阪エリアで最大規模となるシェアオフィス&コワーキングスペース「THE BASE 北大阪」を出店。2021年10月期はサテライトオフィスの需要を獲得すべく、新サービス「スマートオフィス」を開始し、小規模店舗を前期末から6店増やし、提携店舗を約660店に伸ばし日本最大級のスマートオフィス網を展開。2021年10月期第2四半期時点のKPIの推移は順調である。登録会員数は5,075社(2021年4月末)とコロナ禍という逆風にも関わらず増え続けている。ドロップイン会員(一時利用のための会員登録者)も1,181社(同)と順調に増えており、今後の定期利用拡大の先行指標となる。シェアオフィスの稼働率も期中を通して86.7%と高い稼働率を維持した。アフターコロナ時代には、働き方の多様化が定着し、サテライトオフィス需要が拡大することが想定されており、大企業の従業員の利用なども追加されることが期待されている。

2021年10月期第2四半期のシェアリングエコノミー事業の売上高は前年同期比0.1%減の1,350百万円、セグメント損失88百万円となった。前年同期(2020年10月期第2四半期)に北大阪の大型店の出店における内装工事売上を計上したため売上高が微減となったが、過去のトレンドから右肩上がりの成長が見て取れる。小規模店舗を6店舗増やしたため、第2四半期段階で営業損失となったが、先行投資を除く既存店は黒字であり計画通りと言えよう。今後も成長を志向し、近い将来にテレワーク主体の中小規模店舗を拡大し合計100店舗(直営)を達成したい考えだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《ST》

 提供:フィスコ

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