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【特集】「奨学金を返せない」ときの救済策、全額肩代わりしてくれることも

清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方-第32回
清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
清水香1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。

前回記事「年間100万円ほどが4年間も、大学時代の奨学金と教育ローンを知る」を読む

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、学生の約4割に当たる127万人に利用されています。

JASSOの奨学金で利用者が多い貸与型奨学金は、返還(=返済)の義務があり、3月に卒業して社会人になった場合は10月から返還が開始となります。

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3カ月以上の滞納者が約16万人も

一方で、奨学金の返還を3カ月以上延滞している人は、2019年度末(20年3月末)時点で約16万人にものぼります。

滞納となるのは、本人の所得が低いことが主な要因で、19年度については20年になってから深刻さを増したコロナ禍の影響も少なからずあるのでしょう。

とはいえ、滞納は避けることに越したことはありません。奨学金とはいえ、ローンを延滞したときと同様のデメリットを受けることになるからです。

20年3月末以降の延滞利息は3%

まず、延滞金が付加されます。貸与利率が掛かる第二種奨学金の場合、延滞している割賦金(利息を除く)の額に対し、返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じ、延滞利息が掛かります

具体的には
2014年3月27日までは年10%、
2020年3月27日までは年5%、
2020年3月28日以降は年3%となります(1998年3月以降に貸与が終了する場合)。

さらに、延滞が続けば個人信用情報機関(いわゆるブラックリスト)の登録対象になり、住宅ローンが借りられない、クレジットカードが作れない、携帯電話の割賦払いができなくなるなどの不利益が生じます。

家族などが連帯保証人あるいは保証人になっていれば、本人のみならず、そちらにも督促が行われることに。関わった人すべてのその後のライフプランに、深刻な影響を及ぼすことになりかねません。

返還額の減額や猶予、自治体の支援も

こうなる前の救済策もあります。JASSOの貸与型奨学金が返せなくなったときは、返還額の減額や猶予を受けられます。しかも、住宅ローンなどと異なり、救済制度を利用しても総返済額は増えません

あるいは、返還が困難かにかかわらず、自治体や企業から支援を受けられるケースがあるのをご存じでしょうか。

「地方創生」の取り組みの1つで、居住や就労の要件を満たすと、最大で奨学金全額について返還を肩代わりしてもらえます。多くの府県及び市町村で実施され、企業が従業員に行う返還支援を自治体が補助する取り組みもあります。

今秋の総選挙を前に、自治体や企業による奨学金返還支援の充実を選挙公約として掲げる政党もあり、制度への注目度は高まっている模様です。

10年、20年など長期にわたる奨学金返還。その間には、現在のコロナ禍のように、あるいは災害や失業などで家計が急変することも十分考えられます。

そんな時に慌てず対処できるよう、平時にこそ様々な選択肢を知っておきたいもの。"転ばぬ先"の救済策と返還支援について、具体的に見ていきましょう。

救済策(1)~月々の返還金額が最大3分の1「減額返還制度」

JASSOの奨学金が返還困難になったときの救済制度は2つあります。

1つ目は「減額返還制度」と呼ぶもので、最長15年間にわたり、月々の返還金額を2分の1、あるいは3分の1に減らせる制度です。

返還総額は減額されませんが、返還期間を当初より長くすることによって、負担を軽減できます。なお返還額は、16年目以降に当初の額に戻ります

■減額返還制度のしくみ
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たとえば、有利子の第二種奨学金を350万円借りたとすると、通常は月額約1万5000円を、卒業後20年にわたり返還することになります。22歳から返還を開始すると、42歳で返還完了となり、返還総額は約360万円です(毎月同額を返還する場合。貸与利率0.26%、機関保証を利用したケース)。

これを、返還開始当初から15年にわたり、もとの返還額の2分の1の7500円に減額するとします。16年目以降の37歳からは、返還金額が月1万5000円に戻り、12年6カ月にわたり返還が続きます。完済時の年齢は49歳6カ月と当初より7年6カ月延びますが、総返済額は360万円のままです。

利用にあたり審査があります。延滞すると審査を受けられないので、やはり延滞は要注意。減額を受けるには毎年手続きが必要です。

救済策(2)~返還を最大10年延ばせる「返還期限猶予制度」

JASSOの救済制度の2つ目は「返還期限猶予制度」と呼ばれ、最長10年まで返還を待って(=猶予)もらえます。前述の減額返還制度とも併用もできます。

猶予を受けている間の返還は不要ですが、返還総額や利子が免除されるのではありません。返還を先延ばしするため返還完了が予定よりも延びますが、利息を含む返還総額は制度を利用する前と変わりません。

■返還猶予制度のしくみ
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先ほどと同額の奨学金を借り入れたケースで見てみます。

卒業後、返還開始当初から10年間の猶予を受けると、返還開始は32歳からになります。そこから月1万5000円を20年間返還するため、10年遅れの52歳で返還完了になります。

猶予期間の制限を受けずに猶予を受けられるケースもあります。災害や傷病、生活保護受給中のほか、産前産後の休業、育休中なら、手続きをすれば期間の制限がない猶予を受けられます。

また、奨学金を申し込む時の世帯年収が300万円以下で、無利子の第一種奨学金を借り入れた人は、期間の制限がなく猶予を受けられる特例があります。

これらの制度を利用して家計事情が好転したら、申し出ればいつでも元に戻せます。まとまったお金があるなら繰り上げ返還も選択できます。繰り上げる期間の利息は掛かりません

死亡や身体障害では返還免除も

いずれの制度も、利用にあたり収入等の基準を満たす必要があります。

手続きは直接JASSOで。ウエブサイトに必要書類がアップされていますので、指定書類を揃えて願い出ましょう。

本人が死亡または精神や身体の障害で就労不能になったときは、返還は免除されます。ただし、保証人や相続人による申請が必要です。

■減額や猶予の対象となる収入等の基準
 所得形態 減額返還 返還期限猶予
給与所得 年間収入金額
325万円以下
年間収入金額
300万円以下
自営業者等 年間所得金額
225万円以下
年間所得金額
200万円以下
出所:日本学生支援機構資料

奨学金の返還を地方公共団体が"肩代わり"

人口急減・超高齢化という課題があるなか、各地域が特徴を活かし、自律的かつ持続的な社会を作り出す「地方創生」が推進されています。

2014年に閣議決定されたその中身、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」には、奨学金を活用して大学生等の地元定着を図る、地方公共団体と大学等が連携し、雇用創出・若者定着への取り組む、などが盛り込まれています。



 

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