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【特集】好業績相次ぐ自動車セクター、トヨタ株は東京市場を牽引するか <株探トップ特集>

大手自動車メーカーには好業績の発表が相次ぐ。4日に第1四半期決算を発表するトヨタの業績内容は、自動車株はもとより東京市場全体の動向を左右する可能性がある。

―4日の決算発表に市場の関心集中、自動車販売伸び業績拡大期待膨らむ―

 東京株式市場は、日経平均株価が2万7000円台後半での上値の重い展開が続く。感染力の強い新型コロナウイルスの変異種(デルタ株)の感染拡大が警戒されて、上値は抑えられている。その一方で、足もとで本格化する決算発表では、業績の増額修正に踏み切る企業も少なくない。そんななか、大手自動車メーカーには好業績発表が続き、市場にはポジティブサプライズも広がる。とりわけ4日に発表されるトヨタ自動車 <7203> の決算への関心は高く、東京市場全体のセンチメント(心理)を左右する可能性がある。

●大手自動車に好業績発表が相次ぐ

 東京市場は、第1四半期(4-6月)決算シーズンの真っ最中であり、今週末の6日には500社を超す企業が決算発表を迎える。そんななか製造業を中心に、早くも第1四半期時点で業績の増額修正に踏み切る企業も少なくない。ワクチン接種が進んだ米国での販売が伸びたり、為替の円安が進んだりしたことが追い風となっている。そのポジティブサプライズを演出したセクターに自動車業界がある。例えば、三菱自動車工業 <7211> や日産自動車 <7201> は22年3月期の通期業績予想の増額修正を発表したほか、マツダ <7261> の第1四半期業績は大幅な黒字となった。また、自動車部品メーカーではデンソー <6902> が業績の増額修正を公表している。

●日産自はポジティブサプライズで株価急伸

 「予想を上回る好決算」と市場で前向きに評価されたのが日産自だ。同社は先月28日取引終了後、決算発表を行い第1四半期の連結営業損益は756億8200万円の黒字(前年同期は1539億2600万円の赤字)となったことを発表。これを受け、22年3月期の同損益予想をゼロから1500億円の黒字(前期は1506億5100万円の赤字)に上方修正した。米国や中国での新車販売が好調なことが寄与した。また、今期の想定為替レートを1ドル=108円に修正したことも業績を押し上げた。この決算発表を経て、同社の株価は一時650円に急上昇し、2月の年初来高値664円50銭に迫った。

 また、三菱自は27日に22年3月期の連結営業損益を300億円の黒字から400億円の黒字(前期は953億2100万円の赤字)への上方修正を発表。北米やオセアニア、中南米での販売が好調だ。加えて、マツダは30日の決算発表で第1四半期の営業損益が261億600万円の黒字(前年同期は452億7200万円の赤字)と急回復したことを発表した。ただ、22年3月期業績予想を据え置いたことから、同社の株価は翌営業日に失望売りで急落した。

●トヨタの増額修正はあるか、株価の反応に注目

 そして、4日には自動車最大手のトヨタが決算発表を行う。後場の場中の発表ということもあり、市場へのインパクトは強く、その結果は東京市場全体の値動きを左右する可能性がある。5月の決算発表では、22年3月期業績予想は連結営業利益が2兆5000億円(前期比13.8%増)の見通しを示し、9月末を基準に1対5の株式分割を行うことも発表したことが好感され、株価は初の1万円台乗せを達成するキッカケとなった実績がある。

 続く、第1四半期決算に対する期待も強く、市場には三菱自や日産自に続く増額修正を期待する声は少なくない。市場コンセンサスでは22年3月期の同利益は2兆9100億円前後との予想も出ている。アナリストからは「新型コロナウイルスの影響に加え半導体不足などで、今後の状況をどうみているかがポイント。もし、トヨタが年後半に向け楽観的な見通しを示せば、自動車株全般に買いが波及することも期待できる」と予想する声もある。その一方、「業績見通しを据え置いたり、慎重姿勢がうかがえたりした場合は失望売りが膨らむこともあり得る」(同)ともみられている。

 SBI証券の鈴木英之投資情報部長は「自動車セクターへの期待値は膨らんでいる。その内容次第だが、たとえトヨタが増額修正を発表しても、夏休みを控えた投資家はいったん利益確定売りを出すことも考えられる」と指摘する。ただ、その場合は「好買い場になることも」という。5月決算時も株価が本格上昇したのは6月に入ってからだった。トヨタ株は、これから9月末の株式分割の権利取りも期待できる。同業の自動車株への影響も予想されるなか、トヨタは今回の決算発表シーズンのハイライトとなる。同じく明日決算発表が予定されているホンダ <7267> の結果も注目されている。

●愛三工や太平洋工など自部品株にも注目

 更に大手自動車メーカーの好決算を契機に自動車部品株への見直し機運も高まっている。前出のデンソーの今3月期営業利益は前期比2.8倍となり、最高益を更新する見込み。市場には、同じくトヨタ系で電気自動車(EV)ハイブリッド車(HV)関連でも注目の愛三工業 <7283> や最高益水準予想の豊田自動織機 <6201> 、トヨタ紡織 <3116> などへの上昇期待がある。加えて、タイヤバルブなどで高実績を持つ太平洋工業 <7250> 、自動車部品工作機械が伸びるジェイテクト <6473> 、好業績を発表したフコク <5185> などにも注目したい。

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