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【特集】ジェイ・エス・ビー Research Memo(8):長期ビジョン達成を目指し、中期経営計画は順調なスタート(2)

JSB <日足> 「株探」多機能チャートより

■ジェイ・エス・ビー<3480>の中長期の成長戦略

(2) 高齢者住宅事業
高齢者住宅事業のコンセプトは「高齢者住宅をコアに多世代共生型のまちづくりを目指す」で、具体的には高齢者住宅入居者の不動産利活用によって空き家問題を解決し、地域の公民館化、在宅生活支援、オンライン公民館化などを通じて地域課題を解決する事業展開を図ることである。

こうした高齢者住宅事業のコンセプトに基づいて、中期経営計画では以下の施策を計画する。

第1に、高齢者住宅の地域公民館化の推進を図る。実現に向けた施策として、1)リアルとオンラインのハイブリッド型による公民館化の推進、2)地域イベントの開催サポート、3)高齢者住宅間の相互訪問による交流などを計画する。コロナ禍により地域住民リアル参加の公民館化は実施を見合わせ、オンライン開催を試験実施し、また高齢者住宅間の競技大会開催に向け各住宅において競技体験会を開催しており、進捗評価はBで予定通りに進捗している。

第2に、高齢者所有不動産の利活用促進を目指す。そのための施策として、1)高齢者住宅への入居時等に所有不動産の利活用・売却支援、2)世代間ホームシェア、3)生前整理サポートなどを計画している。高齢者住宅への入居時に自宅等の所有不動産の売却を支援し地域の空き家課題解決にもつなげていることから、進捗評価はBで予定通りに進捗している。

同社では、2021年3月にハウスドゥグループとの業務提携を行い、高齢者住宅への入居者に対し自宅などの不動産の査定・売却、不動産に関する情報提供、不動産有効活用等に関する提案を開始しており、高齢者住宅周辺に極力空き家を発生させずに地域の活力維持につなげていく方針だ。

第3に、在宅生活支援の拡充を図る。実現のための施策として、1)福祉用具貸与及び介護リフォームの提供エリア拡大、2)見守り事業の開始、3)看護体制強化、ヘルステックの利活用などを計画する。既に大阪北摂エリア、京都市右京区において在宅高齢者向けに見守りサービスを開始し、また一部の高齢者住宅では掃除ロボットや見守り機器を導入し、DXによる生産性の向上を図っており、進捗評価はBで予定通りに進捗している。

在宅生活支援の拡充の一環として、SOMPOホールディングス<8630>グループの(株)プライムアシスタンスと提携して、大阪北摂エリア、京都市右京区に在住の100名の在宅高齢者に対して、見守りサービス先行モニター試験を開始している。またDXによる生産性向上について、一部住宅に導入した掃除ロボット「Whiz i」は、自動運転で清掃を行うことで職員は介護業務に専念できる。また24時間見守り機器「Tellus」も、見守り介護を拡充することで職員の負担軽減も実現するものである。

(3) 新規事業
中期経営計画では、従来からの事業の柱である不動産賃貸管理事業と高齢者住宅事業に加えて、新規事業の強化も計画する。グループシナジーの発揮を目指した施策として、1)新たな若者成長支援サービス開始、2)HR(人材)事業プラットフォームの提供開始、3)留学生や外国人材の活躍促進などを推進する。各事業の地力強化に努めて財務基盤の安定化を計っていること、若者向け人材紹介においてグループシナジーを発揮していること、プラットフォーム創りについてベンチマーキング中(競合他社とパフォーマンスを比較・分析している)であることなどから、進捗評価はBで予定通りに進捗している。

学生マンション事業を展開するUniLifeの入居者に対して、学生に対する就職活動、キャリアアップ、学生生活支援を行うOVO、大学生を対象にしたキャリア教育・支援を行うスタイルガーデン、AI人材のプラットフォーム事業を行うMewcket、幼児教室を運営するUniOVOこどもの森、日本語学校の日本国際語学アカデミーなど、同社グループの各社が協力・連携することでグループシナジーを発揮する計画である。そのなかから、将来の事業の柱となる新たな事業を発掘し、育成を図る戦略である。

3. ESGへの取り組み
同社では、「豊かな生活空間の創造」を経営理念として掲げており、ESG(環境・社会・ガバナンス)にも積極的に取り組んでいる。環境(Environment)では、低炭素型社会実現へ向けてDXにより生産性を向上するとともにペーパーレス化を推進し、「人と環境にやさしい」無機系塗料の採用などを行っている。また、社会(Social)では、「Little You 2021~World Shift~supported by UniLife」の公式冠スポンサーに就任し、叶えたい夢がある学?に対して自由に使える資?の支給をサポートし、「ジェイ・エス・ビー×avex art agency project ウォールアートコンペ」を開催し最優秀作品を同社運営の日本語学校内に設置するなど、学生支援を実施している。さらに、ガバナンス(Governance)では、企業価値の最大化に向けて、任意の委員会として報酬委員会を設置するとともに取締役への業績連動報酬制度や株式報酬制度を導入している。このように、同社グループは業績拡大を目指すだけでなくESGにも積極的に取り組んでおり、そうした経営姿勢は評価すべきであろう。世界的に企業の環境・社会・ガバナンスへの姿勢を重視して企業を選別する「ESG投資」が拡大しており、その意味でも同社グループの取り組みが注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

《EY》

 提供:フィスコ

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